第201話 『HOPE』1
次の日、俺達はとりあえずこの街を見て回ることにした。
この街はパッと見、アルケニアよりも大きい。見て回るのは大変そうだが、サキとスイが楽しそうなので良しとする。
「じゃあ、二手に別れてこの街を観光しましょう?」
そう言ったのはスイだった。
各自、見たいものは違うだろうし、大勢で行動していたら見れるものも少なくなってしまうだろう。
ならば確かに別れて行動ってのは理にかなっている。俺も少し気になるところもあるしな。
「そうだな。でもどう分けるかだよな」
「はいはーい」
サキがものすごい勢いで手を上げた。
まぁ、何を言いたいかは予想は着いているが、一応聞いてみることにする。
「私は、私とスイちゃん、お兄ちゃんとユキちゃんの組み合わせがいいと思います!」
俺はその言葉に驚いた。サキは普段の言動から俺と廻りたいとか言うんじゃないかなと思ったのだが、意外や意外。俺とユキのペアにしたのだ。
確かにまだ出会って間もないから一緒に話したいこともいっぱいあるから俺的には嬉しいが、サキはそれで満足なのか?
そんなことを考えているとサキは俺の考えが読めたのか、俺の考えに答えるように言葉を紡いだ。
「まだユキちゃんはお兄ちゃんと出会って間もないです。しかし、私たちはアルケニアからの付き合いで結構話したりとかもしました。ですけどユキちゃんはお兄ちゃんとまだまだ話したいことがあるはずです。なので、二人で楽しんできてください。こっちはこっちで楽しんでますから」
「サキ……ありがとうな」
まるで俺とユキの心の中でも盗み見たんじゃないかと思うような完璧な配慮だ。サキも成長したってことだな。
ずっと俺にべったりだった頃とは大違いだ。
「サキ、ありがとう」
「ううん。その変わり、楽しんでくるんだよ。楽しんでこなきゃ許さないから」
「もちろんだ」
こうして俺とユキはサキに感謝をして観光をすることになった。
☆☆☆☆☆
俺とユキは現在、街の中心に居た。とある物を見るためだ。
街を歩いていたら看板を発見した。この街のギルドに所属している最強クランのパレードが始まるらしい。
この街ではクランはアイドル的存在らしく、パレードは毎回ランダムのクランが行うらしい。
今回のパレードは『SWORD』というクランなんだとか。
今回のパレードがもし『ブレンド』だとしたら俺たちはみんなあのクランには会いたくないので見には来ない。
言い出したのはユキだが、俺もこの街最強というのが少し気になったので見に来ることになった。
どうやらこのクランは人気も高いみたいで客の量もものすごい。人混みが苦手な俺は少し人に酔ってしまった。
ここの広さは結構あるものの、人の量によってそれも意味を生していない。
「ジャック……大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
ちなみに外では絶対にジャックと呼ぶように言ってある。ここでヒロトなんて言ったら何が起きるか分からないからだ。
この世界では珍しい名前だ。すぐバレてしまうことだろう。
「皆さん! 我らがNo.1クラン、『SWORD』の入場です」
ギルド嬢だろうか。そんな女性が声をかけるとガヤガヤしていた場が一瞬で鎮まった。
『SWORD』が来るのでみんな息を飲んでいるのだろう。そしてそんな空気に飲まれて俺らの息を飲む。
その瞬間だった。
「レディースアンドジェントルマン! 今、俺たち『SWORD』は君たちのために帰って来たぞ!」
マントを羽織った男が上空から降りてきた。ギルドから出てくるんじゃないのか……。ものすごい派手な登場だ。毎回そうなのか?
その男が降りてきた瞬間、女性客からものすごい黄色い歓声が上がった。確かに顔立ちがよく、鼻筋もくっきりしている。所謂イケメンだ。でも俺は自分に酔っているような行動をするこの人をあんまり好きになれない。
「おい、ジュン。もっと静かに登場できないのか」
「えーマイサー、そんなのはつまらないよ! お祭りだよ! 楽しまなきゃ!」
「何度も言うが、俺の名前はジェイサーだ」
資料によるとマントの男がジュン・ステイシス。金髪のお調子者。今のようなトリッキーな動きで相手を翻弄するのが得意。しかし、味方との連携は最悪。それはギルドとして大丈夫なのか?
そして次に出てきた男はジェイサー・レイモン。黒髪の騎士。ものすごいパワープレイが得意。相手の技を全て受け切り、カウンターをするという特徴を持っている。こちらも味方との連携は最悪。だからそれはギルドとして大丈夫なのか?
この『SWORD』とかいうギルド、こんなに連携が苦手な人が居て大丈夫なのか?
「ハイハイ、話してないで歩いてよ。あとがつっかえているんだから」
「おう、すまないルーシー」
今度出てきた女性はルーシー・ベストロー。赤髪のトラッパー。数多くのトラップを巧みに扱い、敵の行動を制限する。クラン戦ではチームワークが苦手な『SWORD』では勝利の鍵となることも多い。やっとまともな戦力の人が来た。
「うーん、この僕なんかがこんなのに参加しちゃて大丈夫なのかな……」
「安心しろよ。お前は俺たちの仲間なんだから胸を張っとけ」
「レイジさん」
今出て来た自信なさげの男の子はアイク・レオン。普段は自信なさげだが、戦闘になると人が変わったように戦闘狂と化す。その強さはクランメンバーみんなが認めるほど。しかし、やはり連携は苦手。またかよ……。
そしてその保護者的存在の男はレイジ・ウルガント。氷の技が得意で、水属性だが液体はほとんど使わず個体である氷を使うことの方が多い。連携は取れないってほどではないが、あまり得意ではない。ダメだこいつら……早く何とかしないと。
これでこのクランのメンバーは全員のはずだ。そのため、過半数というか9割方連携の取れないクランということがわかった。
でもなんでこのクランが最強かと言うと、このパンフレットによれば単体最強だかららしい。一人一人が強く、そうそう負けることが無いからなのだとか。
だから連携が無くとも強いのか。
お客さんはみんなこのクランのことが好きみたいなので、さっきから黄色い歓声が止まない。
その時だった。
「ちょっと待て! てめぇらが最強ってどういう事だ!」
この楽しい雰囲気に水を差す空気の読めない人物が登場した。この声は俺もよく知った声で、最も聞きたくなかった声だ。
「最強は我らが『ブレンド』に決まっているだろ! 誰の許可を得て最強を名乗ってるんだ?」
やっぱりブレンドだった。それも俺が一番嫌いなダントだ。




