第198話 バスタガ王国へ! 3
4年に1度の閏年。その2月29日。
だからといって特別な話とかはありませんがね。
何かが引っかかる。
今の自己紹介のどこかになにか俺にとって重要なところがあった気がする。
「それでは私たちは失礼致します。またどこかで――」
「待ってください」
俺は反射的にイナイたちを止めてしまった。
俺はこの引っ掛かるようなことを解明したかった。そうしないと気持ち悪いのだ。
この人たちの話を聞けば何かわかるかもしれない。
「なんでしょうか?」
「あなた方は何故ここに?」
「それは依頼で来たのです」
依頼か。そう言えばこのムカつくダントとか言うやつも、それっぽいことを匂わせていたな。
ダントの話を聞く限り、恐らくこの村の周囲に居る魔物の殲滅だろう。
クランで受けに来たのだとしたら、仲間だと思われる人達は約20人程度。殲滅を図るのだとしたらもっと人は居た方が良い。
「俺達も手伝っていいか?」
「「ヒロト」」」「お兄ちゃん!?」
俺がそんな提案をしたらサキたちは驚いた声を出した。
イナイも「こいつ、何言ってるんだ?」という表情をしている。
「少し気になることがあるんだ。少しの間、同行させてくれ」
「あぁ? お前みたいなひょろひょろが居たら足でまといだろうが!」
そう言ってダントは俺に向けて威圧を放ってくる。しかし、全くもって俺には通用しない。
俺とスイは精神力が高いのでこの程度の威圧ならビクともしない。
「ほう、ダントの威圧を諸共しないか……面白い。じゃあ、好きにするがいい」
イナイの許可が降りた。
じゃあ、好きにさせてもらおうか。とりあえずこの集落の周囲にいる魔物を倒せばいいんだろ。
「よし、じゃあ倒しに行くか」
俺が先導したことでみんなは少し納得いかないようだったが、着いてきてくれた。
手伝うとは言ったが、俺もあまり長くあの集団には関わりたくはなかった。特にあのダントとかいう奴は正直言って無理だ。みんなの事をバカにしだしたあたりから俺は結構怒りを我慢するのに必死だった。
だから俺はなるべく早くその場から離れたくて足早にその場を去った。
☆☆☆☆☆
周囲には結構な数の魔物が居た。その中には結構強い魔物も居たが、デスワイバーンに勝った俺たちにとっては雑魚同然だった。
戦闘はあまり得意じゃないユキは抜きとして、俺たちは一人一人がこの場に出てくる一番強い魔物を超えていた。
そのため、俺は安心して手分けして探すことが出来た。
ユキは俺の剣となって、今は俺の手の中にいる。
『後方からイノシシの突進を確認したわ。避けて』
「いや、その必要は無い」
俺はイノシシのスピード感に慣れたのでイノシシの通るであろう道にアンチグラビティーを予測設置。その予測はあっていたようでイノシシを高くまで弾き飛ばした。
そしてそのまま落ちてくるとイノシシは地面に激突。落下の衝撃で倒したようだ。
『なんかヒロトの魔法構成、強くない?』
「そんなことは無いはずだ。俺より強い相手には全く歯が立たない。アンチグラビティーなんてそんな相手には全く効果を示さないからな」
そんな調子でどんどんと魔物を狩っていく。その時だった。
少し遠くでダントとマイが魔物と戦っているのが見えた。近づいたら面倒なことになりそうだ。そう思って近づかないようにする。
だが、俺はその直後にそうも言ってられない光景を目にした。それはダントが魔物の方向にマイを蹴り飛ばした光景だった。マイを囮にして魔物を倒す。人間のやることとは思えない。
多分、マイはいつもダントにいびられ、酷いことをされているのだろう。
昔の俺なら見て見ぬふりをしていたのだが、仲間の温もりを知った今、俺はそんなことは出来なかった。
「おい、それはさすがに酷いんじゃねぇか?」
「あぁ? こいつをどう使おうが俺の勝手だろ」
マイの頭を鷲掴みにしながらダントはそんな最低な事を言ってきた。やっぱり俺はこいつの事がダメでダメでしょうがない。
人それぞれ感性が違うって問題じゃない。明らかに人として外れた、非人道的な行為だ。
「あ? なんだその目はよぉ」
俺はもう怒りの限界だった。
だけど、怒りに任せて行動するのは非合理的だ。そのため、俺は我慢する。怒るのは疲れる、エネルギー消費が激しい。何とか話し合いで解決しねぇかな。
「え、と……私は大丈夫ですから」
「でも」
「では聞きます。なんでここであなたが出てくる必要があるんですか? 関係ない部外者ですよね」
マイがそう言うとダントは腹を抱えて笑いだした。
「フラれたなぁ! 情けないヒーローさんよぉ。お前はお呼びじゃないんだってよ!」
そう言ってダントはまたまた俺を殴ろうとしてきた。だけど、さっきとは違うのは俺はものすごくキレていたってことだ。
さぁ、殴ってみやがれ。その瞬間、お前はここに立っていられなくなる。
拳がやけにスローに見えた。恐らく怒りによって動体視力がいつもの何倍にもなっているのだろう。
もう少しで俺の顔を殴り付けてくる。そう思ったその瞬間だった。
周囲の木々がなぎ倒され、足下の地面は抉られた。それだけじゃなかった。
今にも殴ろうとしていたダントが直前で気を失ったのだ。
見るとマイも気絶寸前といった感じだ。
俺の周囲から衝撃波のようなものが放たれ、それは広範囲にわたって放たれた。
『こ、これは威圧なんて生ぬるいものじゃない。明確な殺気』
ユキの解説で漸く俺は正気を取り戻した。俺はどうやら怒りのあまり正気を失っていたようだ。
多分、俺は怒りで無意識のうちに威圧を放っていたんだろう。周囲が大変なことになってしまった。
「どうしたの!?」
遠くから声が近づいてきた。スイの声だ。
恐らく俺の威圧を感じて何事かとこっちに来たのだろう。かなり驚かせてしまったようだ。
俺からかなり離れていたようで被害は少ないようだが、近くにだけじゃなく広範囲に威圧の衝撃波が届いたことに俺は驚いていた。
俺の怒りが限界を越えてその力を生み出したのだろう。やっぱり俺は仲間に酷いことをするやつだけは許せない。
それに、仲間に非人道的な行為をする人には、あの憎きオーライの姿が重なってしまうのだ。そのせいで怒りがもっとふくれあがる。絶対にあいつに今度会ったら殺す気で居る。この状況を作り出した元凶だからな。
「悪い。取り乱した」
『もう……まさか私にまで届く威圧を放つとは思わなかった』
確かユキは剣の状態になると外からの干渉を受け付けないんじゃなかったっけ? もしかしてなんか結界みたいなものがあるけど、俺の威圧が貫通してしまったみたいな感じか?
「こいつね……私も色々こいつにはムカついてるし今のうちに痛めつけておこうかしら」
「やめといた方がいい。後で面倒なことになるからな」
「はぁ……わかったわよ」
そしてまた魔物狩りを再会しようとすると、マイが立ち上がって俺たちに向かって「ありがとうございました」とお礼を言ってきた。
だが俺はダントが気に入らなくてやった事だから、その礼には答えない。その代わりに手を高くまで上げて振った。
「あの子、少し気になるんだよな」
「どういう事?」
「顔立ちとかさ、どこかで見たような気がするんだよ」
「どこかでねぇ……誰かの娘さんとか?」
分からないけど、あの子の事が少し気になるからもう少し探ってみることにするか。




