第197話 バスタガ王国へ! 2
「あの、助けていただいてありがとうございます」
先から隣でお礼を言いながら着いてくる女の子。その女の子を連れながら集落内を歩いているので当然注目を集める結果となってしまう。
俺に向けられる視線は妬み嫉みの類いだろう。しかし、俺は一切この状況が羨ましいなどとは思わない。何せ、今のように視線を集めてしまうからだ。
確かに女の子を4人も連れて歩くのは羨ましいことに入るのかもしれないが、俺は元々注目されるのが苦手だ。だからこそ勇者となって魔王を倒すぞとか言うのには巻き込まれたくないし、更に言うと謝って魔王を討伐してしまった暁には勇者として崇め奉りあげられる。それだけは勘弁だ。
俺は歴史上の人物として紹介されるような器じゃないし、そもそも載りたくない。
後、面倒くさい。
これらが理由で断ったのに、多分今現在アルケニア王国で一番目立っているのは俺だろう。
それを思うとため息が出てくる。そして今、この場所でも多分、一番目立っている。
いや、俺より目立っている人を発見した。
その男は村の中央に居た。
「俺達が来たからにはもう大丈夫だ。俺達がこの村の周囲の魔物を借り尽くしてやる」
男が言うと周囲でその演説を聞いていた村民が湧き上がった。「これでこの村は救われる」だの「救世主様よ!!」だのやたらとこの村が危機的状況にあるような台詞が耳に入ってくる。
「あ?」
すると、壇上で演説をしていた男がこっちを見て不愉快そうな表情になった。
いきなり人を見て不愉快そうな表情をするのは失礼じゃないのか?
しかも、他の人とは全然違う視線だ。どうやら俺の後ろを見ているようで、俺の真後ろに居るのは先程助けた女の子だ。
でも関係ないかと通り過ぎようとしたその時だった。
男が壇上から降りてこっちにやってきた。面倒なことになりそうな予感がする。
「よぉ、マイ。生きていたのか? 初心者のお前がイノシシに絡まれているのを見て、もう死んだと思っていたぜ」
少しイラッとした。こいつ、さっきの話を聞く限り、戦える人のはずだ。なのにこいつと来たら見捨てたのか?
「冒険者の風上にも置けないわね」
「冒険者?」
「ええ、冒険者があのような仕事をしているのはアルケニアだけで他の国では普通に冒険者をやっているのよ。で、あの男が胸に着けているあのバッチ。あれが冒険者の証よ」
こいつ、冒険者だったのか?
話を聞いたところ何やらこの子と男は知り合いっぽいな。もしかして仲間なのか? だとしたら俺はこの男を許せない。
「ダント、私はこの人たちに助けられたの」
「ほぅ? こんなポンコツの集まりみたいなやつらにか?」
ぽ、ポンコツの集まりって……。
少し……いや、かなりイラッとする。この男は俺だけじゃなく、みんなの事も愚弄したからな。
(お兄ちゃんの事をバカにした。この男、どうしてくれよう)
(さっきーとヒロトを馬鹿にするのは許せないわね)
(私のパートナーを侮辱してタダで済むとは思わない事ね)
他の3人から黒いオーラがたち始めた。みんなもこの男に対していらいらしているのだろう。
でも面白い表現をする人だな。ポンコツの集まりって……本当に人を怒らせるのが得意な人だ。
「おい、ポンコツ。一応礼を言っとくぜ。ありがとな!」
「がっ!」
こいつ、礼を言いながら俺に腹パンをくらわしてきやがった。
油断していたせいか、全く防御も出来なかったので痛い。
すると周りから3~4人の男たちが出てきて大笑いし始めた。人を殴って笑うなんていい趣味していやがるな。
ここでやり返してやってもいいが。そんなことしても何もいいことは無いだろう。
サキ、スイ、ユキが心配して寄ってきて、殴られてフラフラの俺を支えてくれた。
「あなた、うちのリーダーを殴ってタダで済むとは思わない事ね」
だから、リーダーになった覚えはない。
スイは慣れない威圧を放ちながら言うと男は腹を抱えて大爆笑をしだした。
「おいおい、なんだ? そのちっぽけな威圧はよぉ。それにそのひょろひょろな男がリーダーかよ。可哀想な奴らだなおい。俺らの方がお前らを有効活用できる。俺らのクランに入らないか?」
男の目は完全に欲望の塊だった。そんな奴にこいつらを渡す訳にはいかない。
そう思って反論をしようとした時だった。
「ふざけないでダント。この人たちは関係ない」
「お前、いつから俺に口を聞けるようになったんだ? あぁ?」
女の子は俺らを庇った。それによって物凄い威圧を男から向けられている。
その威圧は目の前でくらっている女の子にはかなりきついもので、冷や汗をかいて足をふるわせ、今にも倒れそうだった。
サキ、スイ、ユキも多少なりとも食らっているが何とか耐えれているようだ。特にスイは精神力が元々高いせいか、この程度の威圧は対して意味を生していないようだ。
でも正直可哀想だ。こんな男が仲間だと考えると俺は死にたくなってくる。
「おい、そこら辺にしたらどうだ?」
「あぁ? お、お前は!」
そこに一人の青年がやってきた。
優しそうな物腰で、目を閉じている。だが、俺はあの男から強烈な力を感じた。
逆らえなさそうな雰囲気だ。
「うちのメンバーがご迷惑をおかけしました。これ、お詫びです」
そう言って男が渡してきたのはお菓子だった。
「うちで作っているお菓子です。遠慮せずに貰ってください」
なんだ。物凄い力を感じるから何かやばい人なのかと思ったが、意外といい人じゃないか。
いい人も仲間にいたのか。さっきまで女の子をいびっていた男もあの男には逆らえない様子だ。
「私はイナイ・ショウトと申します。そしてこいつがダント・レイガン。この子はマイ・クラタガと申します。私たちはクラン『ブレンド』に所属している冒険者です」
ん? 今何か気になる名前があったような気が……。




