第196話 バスタガ王国へ! 1
ユキに服を着させ、テントを片付けて旅を再開した。しかし、まだまだバスタガは遠いのでまだかなりの日数がかかるだろう。
そして俺達はかなり歩いた。
かなり歩くと小さな集落が見えて来た。しかし、小さな集落といえども警戒はして置くに限ったことは無いだろう。
「ヒロト、多分だけどここは大丈夫じゃないかしら。ここはもう既にアルケニア王国から出た場所だし、ここはどの国にも属していなかったはずよ」
「どこの国にもって……そんな町、あるのか」
でも博識なスイの言うことだ。恐らく間違いは無いんだろう。
って言うか、もうアルケニア王国を抜けていたんだな。もう少し歩くことになると思っていただけに結構早く感じる。
アルケニアでは色々なことがあった。カナタたちにも沢山お世話になった。
アルケニア王国から出たことでカナタたちに本当に会えなくなるという実感が湧いてきた。
カナタたちに会えないと再び自覚すると寂しくなって来た。みんなはどうしてるんだろうか。
この二人は俺の話を聞かないで勝手に着いてきたけど、残りのみんなは置いてきてしまった。でもあの状況なら仕方が無いと思う。何せ、でっち上げの証拠品ばかり出てきて、あの場ではああ言わないとカナタたちまで捕まってしまって……最悪の未来が訪れたかもしれない。
「とりあえずあの集落で休んでいきましょ。ずっとこのまま野宿じゃ疲れちゃうわ」
確かにスイの言うことも一理ある。じゃあ、この集落で休んでいくとするか。
そう思って集落に入ろうとしたその時、ユユくらいの年齢の女の子が魔物に襲われているのが目に入った。
他のみんなは気がついていないし、ここら辺には戦える人は居ないのか、集落の住民の中には気がついている人もいるだろうが、戦えないならそれは死にに行くようなものだ。
「仕方ないか」
敵はイノシシか。アルケニア周辺では見ることがなかったレアモンスターだ。
そのレアさ故に少しレベルが高いので生半可な力じゃ勝てない。逆に返り討ちにあってしまう。
その代わりに素材は結構美味しいらしい。コート、食材、防具、武器、結構なんでも出来てしまうのでこれをギルドに持っていったら高額取引をしてもらえる。とまぁ、こんな話を聞いただけだが、イノシシは強い。これはあの子が危ない!
「ヒロト?」
スイは俺の動向に気がついたらしい。本当に洞察力がすごいよな。でもそんなのは関係ない。今はただ、イノシシを倒すだけ。
俺は女の子のもとへ走り出したが、そこで女の子は尻もちを着いた。
イノシシは恐らくここでトドメを刺すつもりなのだろう。だが、イノシシは俺という存在に気がついていなかった。
だが、俺が来ていると言えど、少し距離があったし、ブーストで駆けても間に合わないだろう。
聖光の波動やアンチグラビティ等の詠唱が必要な魔法はダメだ。間に合わない。
ならば必然的に使う魔法はこれだけになる。
俺の全場法の中で、ブーストの次に発動が早い魔法。
「来い! 『フックアンドショット』」
手のひらを手のひらを女の子に向けてフックアンドショットを放った。
それによって女の子は俺の方へ引き寄せられてくる。その女の子を俺はお姫様抱っこの形で受け止めた。
「え?」
驚いた声を出す女の子。
「大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「なら良かった。スイ、この子を預かっててもらってもいいか?」
「もちろんよ。暴れてらっしゃい」
んじゃ、許可も降りたことだし、一暴れしますかね。と言ってもそこまで暴れられる技がある訳では無いが。
とりあえず俺は力試しをしたくなったのだ。
昨日の魔物は弱かったが故に素手で行ったが、ホントは剣の力試しをしたかったのだ。
「幸平」
「うん。私はヒロトに全てを捧げる」
なんかユキの剣化時の台詞が愛が重いみたいな感じになっている。全てを捧げるって、本気で言っていたとしたら重すぎるだろう。
そして剣になったユキは俺の手のひらに収まった。やっぱりこの戦闘スタイルが俺にあっている。
『さて、ヒロト。頑張ろう』
元気なユキの声。使って貰えて嬉しいのか、いつもより声が数オクターブ高くなっている。
じゃあ、やるか。こいつの素材は貴重らしいから取っておいて損はないだろう。
とりあえず、まずはブーストをかけて走り始める。その力に任せて相手を斬る作戦なのだが、そう簡単には行かせてはくれないだろう。
『正面から来るよ。あれに当たると確定で防げないから避けて!』
了解だ。防御不可能技は躱せばいいだけの話だ。
だから俺はブーストを真横にかけてイノシシの突進を躱した。そして、イノシシは猪突猛進だから止まれない。だから突進のルートに進行方向と逆のアンチグラビティーを設置した。
すると、当然止まれないのでアンチグラビティーにもろに直撃。背後に物凄い勢いでぶっ飛ばされたイノシシはこの世界で初めて何も無いところで止まることに成功したイノシシだ。
「よぉ、世界初のイノシシさんよぉ。今からお前でこの剣の斬れ味を試させてもらう。悪く思うなよ」
このあとの俺の行為を見て、全員一致で剣を持った俺は怖いという認識になってしまった。




