全て終わって
あれだけ技の名を叫んだおれだったが・・・結論から言うと、負けた。
拳が不老者の体にぶつかる直前、男の体から目に見えない強い圧力が解放され、男にコンマ数秒ほどの猶予ができてしまった。
そして俺の懐の入り込み柔道の背負い投げのように腕をつかんで地面にたたきつけるとそのまま俺は意識を失う。
俺が動かなくなり、終了の鐘がなると男もその場でそのまま気絶するように倒れる。
そこで、観客席に届く映像はそこで終わる。
『ただいま、選手全ての転送をお行っております。しばらくお待ちください』
そんなアナウンスが流れ、レンジと不老者の男の戦いに熱中し静寂に包まれていた会場は我に返り、周りの人々と今の戦いの感想を言い合う。
その熱はすさまじく、ここ久しくなかった運動会への期待があった。
みな一同に感じたのだ。
『あの男とミレイ様ならもしかして、勝てるのではないか』と。
レンジの戦いは多くの人に夢と勇気、そして期待を抱かせた。
それはまだ見ぬ若き力たちにも震えを与え、そして敵をも震わせた。
「拳王様、あの者・・・」
「いやー、いいね。兄弟!ますます楽しみだぜ」
「トール、彼はお知り合いで?」
「妹が惚れた相手だ」
「なっ!?」
「それは、それは・・・ココッ、あの方のお眼鏡担うとは、憎いですね」
その集団は浅い緑ローブを着ていた。
その中でもひときわ背の高い男はレンジを見て「いいね、兄弟」とうれしそうに口を三日月にする。そう、ミオの兄トールであった。
ミオの兄であるトールに連れられて見に来ていた藍色の髪に紅眼メイドとモノクルをつけた執事。二人はレンジの強さに驚き、そして彼らの崇拝する魔王の思い人と聞いてやる気が出てきていた。
「このことはブレイファーで共有しても?」
「いや、参加者だけにしておけ。出ないとミオに殺されるぞ、アルフォール?」
「・・・ッチ。我らがお姉さまであるミオ様を独占?許せませんね」
「ココッ、アルフォール?落ち着きなさい?」
「・・・ああ、もう集中してる。マータ、連れて帰ってくれ 」
「こうなった彼女は面倒ですからね・・・。行きますよ、アルフォール」
そういってブツブツと一人語を言うメイドを質疑が抱え歩く。
ライファ―の観客
アルフォールと呼ばれたメイドをマータと呼ばれた執事を持ち上げるとそのまま会場の外へと姿を消すのであった。
※※※
―――パシャ
何らかの液体を掛けられレンジは体に活力があふれ出し、無理やりたたき起こされる。
周囲を見渡すとあの不老者と戦っていた場所のようでメニュースキルの使用道具ログが視界の端に写り〈気付け回復薬(特大)〉というのを確認した。
先ほどの活力はすぐに沈下し、少しけだるさは残るもののHP見ると全快になっていた。
この場にいるということは先ほどまで戦っていたあの男が道具を使ってくれた・・・と思ったのだが、見渡すとそこには今まで見てきた老人の姿はなかった。
一方で段差に座り、空中で半透明の何かを操作する16,17くらいの若さの青年と同い年くらいのあたりの掃除をする黒髪とレンジの隣に座り前世の携帯に似た端末をいじる金髪少女が二人いたのだった。
「おや、あなた様。レンジが起きたようですよ」
「あ、ほんとだね。ありがとう、ルー。〈そういって青年は黒髪の女の子にキスをした〉」
「やはり、あなたの遠い縁者だけあってモテそうね」
「コマ、僕はそんなに持てないよ?」
・・・え、だれ?
「フフッ、困った顔あなたに似てますね」
「そうかい?」
「エイト君~、そろそろ話し始めよう。ルーちゃんもそこまで」
「あら、すみません」
「ああ、ごめんね。・・・さて、レンジ君私が誰だかわかるかい?」
・・・
「無反応・・・。少し悲しいね。警戒してるのかな?でもあれだけ全力で戦った仲なんだ、そう警戒しないでくれ」
青年は少し困ったようにそう言った。
「・・・まさか、不老者?」
レンジが驚いたようにそう言うと、青年は嬉しそうに笑う。
「そうだよ、私が不老者と呼ばれるものだ。本名は高坂 エイト。おそらく君の遠縁にあたると思うよ?」




