第709話 中間地点。2(新しい仲間。)
「はぁ・・・美味しいご飯に星空を見ながらの湯浴み。最高ね~♪」
「本当ですね、ジェシーお姉様。」
ジェシーの感嘆の声にアリスが呟く。
女性陣は大き目のシーツで焚き火がある所から見えないように区分けされた露天風呂を満喫中。
「・・・アリス様、私も入って良いのでしょうか?」
ジーナがおずおずと聞いてくる。
「良いのよ、入れる者から順にってことだしね。
まずは私達、次はボールド殿とスミスと試験小隊の男性陣。
その次が使用人達、最後にタケオさんとヴィクターでしょう?」
アリスが答える。
「あぁぁぁ♪
気持ち良いですね、ブルックさん。」
アニータがぷかぷか浮きながら楽しんでいる。
「そうね~♪」
ブルックも気にもせずに満喫している。
「はぁ・・・良いのでしょうか・・・」
ジーナはそう言いながら少し熱目のお湯に肩まで浸かるのだった。
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「主、先行しての駆除の成果はどうですか?」
風呂待ち状態の皆はのんびりとしている中でヴィクターが武雄に声をかけてくる。
「今日はオーク8体ですね。
昨日も2日前もそうですが、オークばかりです。
カトランダ帝国を越える際はオーガを駆除しましたが・・・あれと同じくらいは居ても良いのかなぁとは思いますけど。」
「あ~・・・所長、実は陛下のお忍びの際に山狩りをしまして・・・大物は粗方。
オークは肉としての地域の需要があるのであまり狩らなかったのですが。」
「・・・狩り過ぎましたかね?」
「いえ、街道沿いのみですから平気だと思います。
あの時は街道の全周囲1kmを狩りましたのでそれに比べれば狭い範囲です。」
「ふむ・・・ならウィリプ連合国へ行く時もしますか。
こちらにはいろいろ居そうですし。」
「他領ですけど平気ですかね?」
「ニール殿下に許可を貰えれば良いと思うのですけどね。
駆除なんて誰もしたがらないと思いますし、簡単に許可が出ると思っていますけど。
ダメならダメで大物だけ狩りますか。」
「・・・所長、そこまで狩りがしたいのですか?」
アーキンが呆れながら聞いてくる。
「今後も良い関係を冒険者組合と築く為です!
そしてまたこの大袋を入手する為です!
そして試験小隊は精鋭で体を動かしたいらしい。
なら趣・・・訓練と実益を求めてやるしかないのです!」
「所長!今趣味と言いかけましたよね!?」
アーキンがツッコミをしてくるが武雄は気にしない。
「・・・ほら、うちの人達王都で暇にしてそうじゃないですか。
有り余った体力を使わない手はないでしょう?」
武雄が明後日の方角を見ながら呟く。
武雄はそう言いながら「今のうちにオーク程度の命を断つことに慣れておかないと奴隷売買の現場を見たら正常な判断が出来ないだろう」と思うのだった。
「チュン。」
とスーが武雄の肩に止まり左手を上げてから両手を下に広げてクルクル回る。
「えーっと・・・魔物、来た?」
「チュン!」
スーが頷く。
「主、魔物です。」
ミアもスーの横にやって来て報告する。
「種族は?」
「んー・・・オークでもオーガでもこの間のリザードドラゴンでもないですね。
なんというか・・・ユウギリやシグレ、ハツユキに似ています。
あ!主!上です!」
ミアが言い。
武雄達火の番をしている者が上を見上げる。
そこには透き通っている鳥が旋回していた。
「ご主人様!?」
タオルで前を隠しているが裸のジーナがお風呂から飛び出してくる。
「ん?・・・ジーナ・・・風邪をひいたらどうするのですか?
早くお風呂に戻りなさい!」
ジーナは武雄に怒られる。
「いや・・・ご主人様、魔物・・・」
「あれは平気です。
とりあえずアリスお嬢様達とお風呂に居なさい。
何かあれば言います。」
「はい・・・」
ジーナが「私の対応は間違いないよね?あれ?」と思いながらトボトボ戻っていく。
「こら!ジーナちゃん!裸で出て行く物ではありません!
せめて下着姿で出なさい!」
「いや、ジェシーお姉様?それも違うと思いますけど?
ほらジーナちゃん、こっち。
あ!体が冷えてる!体を温めなさい!」
ジーナはジェシーとアリスにさらに怒られるのだった。
「さて、あれが街の南の・・・ですか。」
「ん?主は知っているのですか?」
「ええ。屋敷の出立前日に夕霧達と話しましてね。
その際に時雨から報告されています。
『街の南側の森でエルダームーンスライムと思われる透き通っている鳥を見つけた』と。
あれの事でしょうね。」
と旋回していた透き通っている鳥が武雄の近くに降りて来る。
大きさは隼と同じくらいだろうか。
透き通っていても猛禽類の特徴はわかる。
「・・・」
何も言わずに武雄を見ている。
「・・・」
武雄も何も言わずに眺めている。
「・・・キタミザト殿とミア殿とお見受けするが?」
鳥が武雄に聞いてくる。
「ええ、そうですよ。
・・・で?」
「この度、シグレの誘いに乗りミア殿の部下にして頂きたく挨拶に参りました。」
「・・・鳥なのに人間の言葉が使えるのですね。」
「シグレと情報を共有して得ました。
何卒、我らも庇護下に置いて頂けますようお願いいたします。」
鳥が頭を垂れる。
「夕霧は何と言っていましたか?」
「ユウギリは伯爵殿に聞いており、キタミザト殿に任せると言われています。」
「そうですか。
お前も名前が欲しいですか?」
「はっ!」
「・・・では、彩雲としますか。」
「サイウン・・・」
「虹色に輝く雲という意味ですよ。
さてミア、彩雲をすぐに夕霧の元に行かせなさい。
私が彩雲に求めるのは上空から見た地上の情報と私と夕霧、もしくは特定の人物との手紙や伝言のやりとりです。
基本的には私の方に居て欲しいですね。
この事を夕霧に伝え夕霧が判断をしてください。
より良い運用方法があるなら提案する事。
以上です。」
「はい、主。わかりました。
サイウン、主がしたい事は聞きましたね。
あとサイウンの他に飛べる者が居ないか。
・・・他のエルダームーンスライムが居るのかも継続して調査する事をユウギリに伝えなさい。
そしてこの街道沿いに飛んでまた戻ってきなさい。
わかりましたか?」
「はい、ミア殿。」
「あ、言い忘れましたが、いくら全方位が見えていても貴方達は脆いのですから鳥達が飛んでいる高さの2倍以上の高さを飛びなさい。」
「キタミザト殿、わかりました。
では皆様、失礼します。」
彩雲が飛び去っていくのだった。
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