第3910話 戦争は勝たねばなりません。(負けたら全てを失います。)
外交局と軍務局の打ち合わせは、まだまだ続いている。
「8月にウィリプ連合国のドローレス国まで行ってきますが、奴隷の価格も上がっていますね。」
武雄が再び、外交局の資料を見ながら言う。
「現地に入っている者達からの報告では品揃えが変わったそうです。」
外交局長が言う。
「まぁ、魔王国がデムーロ国の力を削いで、海路を狭めましたしね。
それに今度はブリアーニ王国が陸路を狭める気でいますからね。
変わりもするでしょう。」
「我が国としてはありがたくもあります。
結果として、下位の奴隷が出て来てくれれば楽ですね。」
軍務局長が言う。
「下位ね・・・オーガやオークが大量に来たら大変です。
オーガ数十体が向かって来るのは精神上良くありませんよ?」
武雄が言う。
「対処方法の1つはキタミザト殿が示しましたが、あれは再現出来ませんしね。
さて、どうしたものか。」
軍務局長が腕を組む。
「前に陛下に提出したデムーロ国から輸送された奴隷リストの検討は、どうなっていますか?」
「確認と検討中ですね。
リストだけでなく、潜入している者達からの報告も加味して現状を仮定します。
さて、高額な戦力を投入するのか、質よりも量を投入するのか・・・侵攻日に向けて想定が目まぐるしく変わるでしょうね。」
軍務局長が言う。
「・・・困った事に、やるからには勝たねばならず、勝つ為に努力せよ・・・どう努力すれば良いかは指示もされずと。」
武雄が言う。
「まぁ、誰もが勝利を望むものです。」
「それは相手もそうなんですよね。
キタミザト殿の言い方ではありませんが、互いに努力しあっても最後に勝った者が勝者、負けた者は敗者となります。
実に恐ろしきは負けた側は、ほとんど全てを失うという所でしょうか。」
軍務局長と外交局長が言う。
「であるのなら・・・・アドラム子爵領1つで手を打つことも可能でしょうか?」
「「うん?」」
「兵力も失わない、国民の犠牲もない、国内は少々の疲弊で終わらせられる。
国土切り売りという所でしょうか。」
武雄が言う。
「それは・・・何もしないで国土を渡すのですか?」
「国としてありえないかと。」
外交局長と軍務局長が言う。
「ですが、国民が血を流す事はないです。
国民の犠牲がないのであれば、空いている土地に住まわせ、開墾すれば村が出来、他の町と商隊が行き来するようになれば町が出来る。
負ければ、荒れ果てた土地、兵力低下での治安悪化、物資はなく明日の生活もままならない。
そうなる前に1つの領地を差し出す事で、今の生活を維持する。
これも1つの回答では?」
武雄が言う。
「うーむ・・・戦争が始まれば、そういうことを言う者が現れるでしょうね。
キタミザト殿としては、どう思われますか?」
「私達は残念ながら施政者です。
国土を渡すという選択は出来ないと思います。
それに生きて他国に吸収されても、死刑が確定しているようなものです。
とくにウィリプ連合国はね。
向こうは中流階級以下は奴隷のようなもの。
他国の者を自国の者のように扱わないといけない訳でなく、どうせなら親族や知り合いを新しい国土の領主に付かせたいでしょう。
その為には現状で施政者側に居る者は邪魔でしかありませんよ。
死刑にする理由なんていくらでも作れるでしょうし。
残念な事に施政者側に居る者達は戦争で勝つしか、今の生活を維持出来ません。
ちなみにエルヴィス家で同様の事があれば、領民は王都方面に逃がします。
しかし、領主家、騎士団、兵士は残って戦う事が責務でしょう。」
武雄が言う。
「まぁ・・・そうでしょうね。
先のキタミザト殿の提言は局内で提言された場合の対処文言を用意しておきます。
どの貴族が言うのでしょうかね?」
外交局長が聞いてくる。
「さて・・・少なくとも魔王国側の貴族領では言いませんよ。
ある意味、勝てない相手に対峙しているのですから。
それに・・・国土を渡して、今回の侵攻を手打ちにしても、また数年後に要求をしてくるでしょう。
その時は奪われた領地で育成された奴隷も参加し、今よりも数を増やしてね。
今はウィリプ連合国にギリギリ勝てる可能性が高いですが、領地を奪われて兵力を整えられたら、こっちの兵力は下がっているのに、ウィリプ連合国は増やすという事になるでしょう。」
武雄が言う。
「となると、キタミザト殿は戦争に反対ではないと?」
軍務局長が聞いてくる。
「基本的に戦争はするべきではないとは思います。
ですが、私達がいくら、『やりたくない』と言っても、相手が『やります』と言えば、戦争は始まります。
そして先ほども言った通りに負ければ、私達は奴隷に身を落とすでしょう。
そうはなりたくない為、戦争で勝つように動くだけです。」
武雄が言うのだった。
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