第2524話 御前仕合、決勝戦。(予定が狂う。)
御前仕合の会場の舞台上。
「これより決勝を行います。
まず、王立学院 ジーナ!」
アナウンスされるとジーナがアズパール王の居る方に向かって礼をする。
「昨年優勝フロッド・トーテ!」
トーテがアズパール王に礼をしてから観客席に腕を上げて皆に手を振る。
「では、お互いに最善を尽くすように。」
審判に言われジーナは頷くとトーテに礼をしてから2人に背を向け距離を取る。
「・・・」
ジーナがある程度離れて、こちらに背を向けながらストレッチをしているのを確認して、トーテも少し距離を取るように離れるのだった。
「ふぅぅ・・・・」
ジーナは自身の前に木刀の先を舞台の床に付け、柄の端部分を両手で押さえながら垂直に立たせた状態で目を閉じて深呼吸をして、意識を集中させている。
華奢な体つきで見慣れない緑の服を着こんだ美少女なのだが、その姿に言い知れぬ威厳が醸し出されていた。
「・・・」
トーテは何も言わずに軽く木剣を振りながら開始の合図を待っている。
お互いが開始までの少しの間、それぞれのやり方で戦いのイメージをするのだった。
・・
・
「両者構え!・・・開始!」
審判がそう宣言すると会場が沸く。
「・・・」
ジーナは左足を前にし、正面に構える。
「・・・」
トーテは上段に構える。
両者ともいきなり今までの予選の仕合とは違う構えをするのだった。
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御前仕合の会場の観覧席では。
「「「え?」」」
グレース達がジーナが今までしていた構えと違う事に驚いていた。
「「んー・・・」」
スミスは肩に乗るチビマリと共に出だしから唸っていた。
「スミス!ジーナはどうしたのよ!?」
グレースが思わず聞いてくる。
「・・・対トーテさん用に昨日戦い方を考えたんですけど・・・トーテさんも対ジーナ用に考えたんですかね。
僕達がトーテさんが上がってくると予想したようにトーテさんはジーナが出てくると考えていたのか。
最初から決勝はこうする予定だったのか・・・はわかりませんけど。」
スミスが言う。
「そんな・・・相手もわざわざ決勝で違う事をするっていうの!?」
グレースが驚く。
「僕の時やさっきの準決勝では正面に構えて、様子を見ながら開始と同時に足早に詰めて来て連撃をしてきたのですけど・・・
上段に構えて動かないですね・・・
マリ・・・これ一撃かなぁ?」
「ふむ・・・ジーナに対して正面に立ち、両足を開き、上段に構える。
構えだけ見るのなら薪割の際のやり方に似ている、普通に考えるのなら一刀両断だな。
今までの連撃では打ち込む際は必ず左足が前だった、動かない所を見るとあれで決着を付けようというのだろう。
くくく、互いに裏をかこうと思ったらお互いに予期しない事が起きてしまったな。」
スミスの問いにチビマリが笑いながら言う。
「「「・・・」」」
グレース達はスミスとチビマリの話を注意深く聞いている。
「・・・でも・・・相手がこちらの戦い方でしてくれるというのなら楽になりますよね。」
スミスが言う。
「どうだろうな・・・トーテにとってもこちらの方がやりやすいのかもしれないな。」
チビマリが言うのだった。
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御前仕合の会場の舞台上。
両者、構えて少し睨み合ったのち。
「・・・」
ジーナが一歩、右足を出し、木刀を左脇に移動、右手は木刀の柄を握り、構えを変える。
そして、ジーナがトーテににじり寄り始める。
トーテは最初の構えのまま動かないでジーナの接近を観察している。
ジーナは自身の呼吸が相手に分からないよう呼吸を浅くしながらにじり寄る。
見ている者からしたらゆっくりとだが、しているジーナにとっては最大の速度で相手の間合いに近付いて行く。
「・・・」
あと1歩入るとトーテの剣が振られるであろう所まで来る。
観覧席も静かに見守っている。
例年であれば歓声や拍手が仕合中、ひっきりなしにされているのだが、今回は静かに見ている。
「・・・」
ジーナは止まらず、トーテの間合いに入る。
しっかりと脇に木刀を構えたまま。
「ふっ!!」
「せいっ!」
トーテとジーナが同時に動く、一方は上段から振り下ろしを、もう一方は左足を出しながら上方に向けての突きを。
ガっ!
トーテの木剣の手元部分にジーナの木刀の切っ先が当たり、トーテの木剣の軌道がジーナの木刀の右側に沿ってジーナの手元に向かって行く。
そこでトーテは見えてしまう。
ジーナが木刀を当てた瞬間、右手を離した事を。
マズいと思いながらも一撃の為の体勢から動けない。
トーテは時間がゆっくりと動いていると感じる。
ジーナが右手を離した後、左手で木刀を押し支えながら体を捻っているのがわかる、だが、わかるだけで体が動かない。
認識する事しか出来ず、ジーナが何をしようとしているか見守る事しか出来ない。
そして、次の瞬間、自身のこめかみに衝撃が走るのだった。
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