第2504話 スミスの試合前の様子。(スミスも大変なんだよ。)
御前仕合の会場の控室。
予選の時は人が多かったが、今は数名しかおらず、静かに時が過ぎていた。
隅の椅子に腰かけてスミスが目を瞑って、自分の試合に向けて集中しているように見える。
(さてと・・・マリの考えたベスト8には来れたね。)
(うむ、予選の乱戦とトーナメント初戦の1対1の両方の戦い方の経験が出来たな。
この2日で経験出来た事は大きいと言える。
あとは、この後の戦いを勝てばタケオの金貨1枚以内でのお小遣いか料理だったな。)
(そうだねぇ。
ご褒美があるのはやる気になるね。)
(うむ、スミスはあまりタケオのご褒美は嬉しくないのか?)
(嬉しいよ。
嬉しいんだけど・・・こんな感じのご褒美ってなかったからねぇ。
何と言うか・・・不思議な感じだね。)
(不思議?)
(うん、用意された勉強も剣技もするとお爺さまもお姉様方も皆、褒めてくれたんだよ。
でも、ある程度の勉強も剣技も家を継ぐために必要な事なんだと僕は思うんだよね。
だから、必要な事をしていてご褒美を貰っても何となく納得していなかったんだ。
ご褒美って求められる要求を超えた時に貰う物なんだよね?)
(うむ、場合によって違う物だとは思うが・・・まぁ、基本的には褒美とは他者が自身以外の者を評価し、褒める時に渡す物だな。)
(うん、僕が思うにね、褒められるという事は褒めて来た相手の予想を超えた結果を出したという事だと思っていたんだよ。)
(・・・うむ、続きを。)
(要求をしてきて出来ないと思っていたんだぁと。
だから褒められると納得していなかったんだ。
でもタケオ様やマリに会ってから、要求自体が過大だったから褒められると実感がわいたね。
あれは嬉しかったよ。)
(・・・スミスは少し拗らせ気味だな。)
(うん?そう?)
(今発覚してわかって良かった。
スミス、その考えは否定自体はしないが、もう少し薄めた方が良いな。)
(そう?)
(うむ。
これから甥っ子、姪っ子が生まれて来るんだ。
そんな意識で子供達に接したら下手したら刺されるかもな。)
(え!?そんなに酷いの!?)
(うむ、酷くなりかけだ。
甥っ子や姪っ子も貴族の子、スミスが受けた教育はしなくてはならない。
だが、スミスが出来たから、子供達も出来るという訳ではない。)
(それはそうだね。)
(スミス、わかっていないな。
ある一定度までは貴族として当然知ったり出来たりしないといけない。
それ自体は・・・まぁ、施政者の務めと言えるだろう。
だが、スミスは無意識にある程度までは出来て当たり前という考えがある。
だから、そのある程度まで出来ていない時点で褒められても嬉しくないのだ。
これを子供達に適用したら、スミスは今のスミスの勉強と剣技が出来なければ子供達を褒めないとなる。)
(んー・・・褒めると思うけど?)
(そうであって欲しいな。
スミス、今からでも自分の基準を他人に転嫁させてはならない事を知らないといけない。
今のスミスの基準はスミスが守って行けば良い、スミスの基準は真っ当だ。
だが、スミスはスミス、子供は子供だ。)
(それは・・・そうだね。
あ、これが大人のエゴになるんだね?
僕も大人のエゴを押し付ける所だったんだ。)
(うん?・・・うむ、そうとも言えるかもな。
スミス、スミスが受けたように要求を出す事はしても子供達自身の基準自体は子供達が設定しなくてはならない。
あくまで子供達が自分で気づき、設定をしないといけない。
その為の知識はこちらから与えてだがな。)
(マリ、それって結構難しいんじゃない?)
(難しいだろう、だから皆が皆、手探りでやっているのだ。
スミスは色んな人を見て学ばねばならない、最初から過大な要求をする者。)
(マリだね。)
(あれは過大だとは思わぬがな!
・・・まぁ、良いだろう。
要は人によって要求を徐々に厳しくする者や最初から厳しい者、最後まで甘い者などやり方がある事を知り、子供達を見て、どのような要求の仕方が子供達に合うのかを考えねばならない。)
(・・・ん~・・・僕は経験不足という事かな?)
(そうだな、全ての経験が足らないし、学び足りないという事だ。)
(そうかぁ・・・気を付けるよ。)
(うむ。
ん?・・・パラスからジーナが勝ったと連絡が来たな。)
(ジーナは順当だね。)
(うむ、今のジーナを1対1で倒せる者はアズパール王国では、そうは多くないだろう。)
(その内の何名が僕の親族や知人なんだろうね。)
(うむ、スミスはタケオのように人を誑す術を身に付けないといけないな。
それも含めて学びの時だ。)
(タケオ様のようには出来ないよ。)
(人を誑すのに真似るのは如何な物かな。
あれは個人の資質だ、スミスはスミスで誑す術を生み出さないといけない。
それには知識、体力、経験が必要だ。)
(体力必要?)
(うむ、必要だ。
さ、余計な事を考えないでスミスは試合の事を考えて心を整えないとな。)
(うん、そうするよ。)
スミスは自分の精霊と話をしながら仕合の時を待つのだった。
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