第2503話 ジーナ、仕合中。(順調に戦っています。)
御前仕合の会場の舞台上。
「・・・」
「・・・」
木剣を握る両手を顔の右に持って来ているジーナと正面に構えた対戦相手はジリジリと間合いを詰めていく。
見ている者達も歓声もなく、攻撃に動く時を待っている。
両者が近付いていくが対戦相手の間合いと思われる所でお互いに止まる。
「・・・」
普通に考えれば、ジーナの使う小太刀と同じ長さの木剣と、対戦相手が持つショートソードと同じ長さの木剣では、小太刀の木剣の方が短く、尚且つ背丈がジーナの方が低い為、腕の長さも対戦相手の方に分がある。
「・・・」
だが、ジーナの対戦相手は攻撃を仕掛けられずにいた。
この仕合は実は2回戦目、そして対戦相手が有利な状況にも関わらず動けない理由がジーナがトーナメント1回戦目で見せた剣術だった。
今回のように両者近付いてから相手が上段から振り下ろしてきたのだが、ジーナはいつもの両手を顔の右に持って来る構えからワザと振り遅れ、左足を引きながら相手の剣の左上部の刃の側面を上から叩き、ジーナの左前の地面付近まで相手の意志を無視して強制的に振らせ、叩いた反動を利用し、左足を出しながら相手の右腕に強打を当てたのだ。
これはタイ捨流の嵐勢であり、前にアリスがマリの剣術を模倣し、ジーナに向けて使ったものだが、今回ジーナが再現してみせる。
さらに、ジーナは相手が強打を受け、前屈みになると考え、木剣から右手を放し、後ろに傾きながらも左足を軸に相手の右腕の外から後ろ回し蹴りをし、予想通りにそこにある相手の顔に右踵を叩き込む。
剣技を競う仕合と思っている人達は呆気に取られるが、ジーナが綺麗に相手の顔に踵を入れた事で「これも技の1つなのか」と思ってしまっていた。
仕合後にジーナは「当たって良かった、踏み込む時間はなさそうで、しかも右手を出しても相手の腕がたたまれたら捕まりそうだったので蹴ってみた」とスミスが呆れる言葉を残す。
「各代の師範クラスは何とも言えない顔をするかもしれぬが、負けるリスクが一番低かったのが後ろ回し蹴りと考えての行動というのなら、ジーナは胸を張っていれば良い。
勝つための行動をして、実際に勝って来たのだからな。
その行動は正しかったのだ。
まぁ、後ろ回し蹴りが選択肢に上がる事は稀で、大方は膝蹴りくらいで済ますのだろうがな。」
ジーナの言葉を聞いたマリが笑いながらジーナの行動を肯定するのだった。
ちなみに、その後1回戦は、後ろ回し蹴りを受けた後、明らかに相手の動きが悪くなり、ジーナが間を置かずに袈裟斬りで一刀両断して終わった。
さて、で、今のジーナの相手を見てみると、明らかに攻撃を躊躇っていた。
「・・・」
膠着状態のようになったのも束の間、ジーナがジリジリ間合いを詰めていく。
対戦相手は驚きと自分の勝機が無くなっていくのを感じながらも動けないでいるのだった。
仕合が終わりに向かって行く。
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御前仕合の会場の観覧席。
ジーナを見守る会の6人が仲良く見ていた。
「これは・・・どういう事なの?」
コートニーが見ながら呟く。
「だよな・・・明らかに一瞬止まった所があの人の剣が届く間合いだと思うんだが・・・」
ルークが腕を組んで考えながら言う。
「このままならジーナ殿があの少し短めの木剣の間合いになった瞬間に打ち込んで来るぞ。
あの人は先のジーナ殿の戦いのように相手に振らせてからの何かがあると考えていると言う事なのだろう。」
男子生徒が言う。
「でも、間違いなく今はジーナ殿にとっては一刀両断出来ないと思われる間合いだよね。
今が攻め時だと思うんだよね。
攻めれないのは、あの人が何か隠し持っているか、ヘタレちゃっているだけと思うな。」
女子生徒が自信満々で言う。
「ねぇ・・・・それ自分に置き換えてみなよ。」
他の女子生徒がツッコむ。
「うん?・・・・・・・・・即座に降参するかな。」
女子生徒が考えてから呟く。
「「正解。」」
男子生徒と女子生徒が言う。
「おいおい、それで良いのか?」
ルークが呆れながら聞く。
「ほぉ、ルークは違うのか。
なら、ルークなら今のようなジーナ殿と相対してどうするんだ?」
男子生徒が聞く。
「ん?そりゃ、仕合なんだし、一撃ぐらい入れ・・・入れ・・・んー?・・・ジーナ殿に一撃を入れる自分の姿が想像できない。」
ルークが悩んでから男子生徒達に真顔で言う。
「おー、ルークは戦いを選んだんだねぇ。」
コートニーが感心する。
「うん?コートニーならどうするんだ?」
「私?もう降参している組かな。
どうやったってジーナ殿に一撃を入れられないだろうしね。」
コートニーが諦めながら言うのだった。
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