第2489話 300日目 さぁ、ジェシー、頑張れ。(アリスの出産時には注意が必要。)
エルヴィス伯爵邸のジェシーの為の仮分娩室。
「ふぅぅぅぅうううう!!!ああああ!!」
ジェシーが天井からの力む為に掴む綱を自身の体が浮きそうなほど思いきり引っ張り力んでいる。
「ジェシー!頑張れ!出て来てるよ!」
「はい、頑張れ!」
「もう少しー!」
「もうちょっと!もうちょっと!」
「順調よ!」
コノハ、アル、ウカ、ダキニ、テトがジェシーのスカートに潜り込みながら言ってくる。
「ジェシー、息を止めない、そう、息を吸って、力みながらも吸って、吐いて。
子供は順調よ、ジェシー!もうひと踏ん張り。」
パンニューキスがジェシーの傍らで声をかけながら汗を拭いている。
「産湯もタオルもハサミもへその緒を縛るのも問題ないと。」
ペイトーは生まれてくるのが近いと考え、メイドがお盆に載せ持っている品々の確認をしている。
「「「「「・・・」」」」」
アリス、エリカ、エイミー、キティ、ドネリー、鈴音は部屋の端から呆気にとられながらも見つめている。
「はぁ・・・これが出産なんですね。」
ニルデが感心している。
「そうよ、どの種族も出産は大変なのよ。」
ボーナがニルデに言う。
「出産はつくづく大変なんだと思わされるね。」
エンマが呟く。
「こうやって生まれてくるから子供に反抗でもされた日には頭に来る母親も居るくらいよ。
『あの苦しみで生んだんだから言う事を聞いて』とね。」
ボーナが言う。
「ボーナは、そういう風にした事ないよね?」
「うちの子達反抗らしい反抗しなかったしね。」
エンマの問いにボーナが答える。
「そうなの?」
「そうよ。
それに村の皆で子育てするというのは、他の家の親達が子供達全体を見て、教え、叱り、宥め、相談に乗る事よ。
今だから言うけど、叱ったり、教えたりするのに村内で打ち合わせをして役割を決めていたのよ。」
「え?そうなの?」
「そ、叱り役は年配者の中から、宥めるのは3人以上産んだ女性の中から・・・とね。」
「知らなかったぁ。」
「親達の会議で決まっていたし、この事は挙式を終えた後に教える事になっていたからね。
エンマ達が知らないのは当然よ。」
ボーナが言う。
「ボーナ、ボーナが妊娠して産んだら、どうするの?」
ニルデがボーナに聞く。
「うん?ん~・・・そうねぇ・・・
ま、教育とか遊び相手とかはエンマやニルデ達に任せるわよ。
叱る役が難しいわね。
誰にするかは大人達で考えるしかないかな?
あったとしてもまだ先よ。」
「ふーん。」
ボーナ達が気軽に話をしているのだが、その並びにいるエルヴィス家、ゴドウィン家双方のメイド達は固唾をのんで見守っているのだった。
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エルヴィス伯爵邸の客間。
仮分娩室に入っていない男性陣達が集まって、お茶を飲んだりしてその時を待っていた。
「「「・・・」」」
テイラーや産まれた際に伝令に走るゴドウィン家の兵士達、エルヴィス家の執事達が時間を持て余しながらも何も言わずにソファや椅子に座りながら待っている。
「・・・ふむ・・・」
フレデリックが懐中時計を懐から取り出し、確認してまた懐に戻す。
「ははは、フレデリックよ、そなた程の者でも緊張するか。」
机の上に居るチビニオが笑いながらフレデリックに言う。
「はは、ニオ様、お恥ずかしい所をお見せしてしまいました。
自分の子が生まれる時程ではないですが、やはり出産というのは緊張します。」
フレデリックがにこやかに言う。
「うむ、男はこの時は何も出来ないからな。
古今東西、種族を問わず、何処でも男性陣は待つ事しか出来ぬ。
なぁに、心配は無用だ、コノハとアルが傍に居て問題が起こる訳もない。」
チビニオが言う。
「ほぉ、それほどですか。」
「うむ、あの2人は女性を対象にしている精霊だ。
母子ともに元気に乗り越えてくるだろう。
今がその様子だとアリスの時はもっと緊張しそうだな、ははは。」
チビニオが言う。
「そうですね。
アリス様の時はこの比ではなく、街全体が緊張していそうです。」
「ふむ・・・ま、アリスの時はコノハとパナが居るからな。
今よりももっと安全に出産が出来るだろう。」
「ほぉ、パナ様が居ると違いますか?」
「うむ、コノハはどちらかと言えば、助産師という役になるな。
これは妊娠から出産、育児までを一貫して補助する立場を取っている。
対するパナは医師という、万が一があれば母子の命を救う行動を取る立場に居る。
2人が居て、アリスが出産に臨めば、ほぼ確実に何も起きんよ。」
チビニオが言う。
「ふむ・・・少し安心しました。」
「むしろ、アリスの出産での気がかりは産まれてくる子よな。」
「え?不安があるのですか?」
フレデリックが珍しく驚き顔をさせる。
「うむ、魔眼を継承する可能性があるからな。
これはジーナにも言える事だが・・・子供が魔眼を持って産まれて、すぐに目を開けた際に何かしら効果が出てしまうかもしれん。
アリスの出産時の手伝いには、魔眼に対抗する為に精霊魔法師か魔眼持ちが相応しいだろう。」
「ふむ・・・両方当てはまるジーナには一時戻って貰う必要がありますね。
それにスズネ様、エンマ様、ニルデ様にご助力頂かないといけないですね。」
フレデリックが考えながら言うのだった。
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