表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】婚約破棄された公爵令嬢は、厨房で静かに生きていくつもりだったのに  作者: 京野きょう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/41

第35話|テンション爆上がりです

 しばらくして、ようやく涙も落ち着いた頃。


 冷静になった今、あれほど取り乱してしまったことが恥ずかしい。

 そっと息を吐いて、気持ちを整える。


「ロヴァルド様……すみません、もう大丈夫です」


 私が落ち着くまで、抱きしめたままでいてくれたのは嬉しい。

 けれどアメリー達の前でこの状況は、さすがに気恥ずかしくて。

 それにロヴァルド様は、これから公務があるというのに。


「大丈夫か?」

「はい、その……お見苦しいところを……」

「気にするな。……それと、この厨房はロゼの好きにしていい」

「はい、本当にありがとうございます……!」


 改めて見渡せば、本当に素敵なキッチン。

 ご飯もお菓子も作りたいわ。

 でもここは自宅ではないのだからご飯系は……。

 あっ。

 ロヴァルド様の公務の合間に、さっと食べられるようなものがいいかしら!?


「早速使わせて頂いても良いですか……!?」

「ああ、勿論だ」

「ありがとうございます! 何かお食べになりたいものはありますか?」

「ああ、そのことなんだが──」


 ロヴァルド様がそう言うと、クラウドが一枚の紙を差し出す。

 そこにはシュークリームのざっくりとした工程が書かれていた。


「覚えているか分からないが……シュークリームを銘菓にする話だ」

「あ……」


 忘れるわけない。

 あの夜は色々衝撃的なことが多すぎて、今でもはっきりと思い出せる。

 どちらかというと、銘菓よりも婚約者宣言の方が印象が大きいけれど……。


「料理人にもせっつかれていてな。早い段階で試作に取り掛かりたいそうだ」

「なるほど……では料理人に手解きをする形でよろしいですか?」

「ああ、頼めるか?」

「もちろんです!」


 このキッチンを使うのも、私のお菓子が銘菓になるのも……。

 なんて、なんて楽しみなの……!

 責任は重いけれど、それ以上にやりがいがある。

 それに……ロヴァルド様のためにもなるんだもの。

 頑張らなくっちゃ!


「では早速今から──」

「お楽しみのところ申し訳ありません、ロゼリア様」

「アメリー? どうしたの?」


 これまで黙っていたアメリーが口を開く。


「まだ身だしなみのお支度も終わっておりませんよ?」

「あ。」

「それに調理がしやすいドレスに着替えませんと!」

「ご、ごめんなさい……」


 朝食を食べ終えたばかりだったのを、すっかり忘れてたわ……。

 ……あ、ロヴァルド様が笑いを堪えてる。


「もう! 笑わなくてもいいではないですか!」

「では後を頼む、アメリー。クラウド、案内を」

「お任せください」


 そう言いながら、ロヴァルド様が私の頭をぽんっと叩く。

 もう、ずるいんだから。






 身支度を整え直して、改めて王城の厨房へ向かう。

 わくわくする気持ちと、受け入れてもらえるかという不安が入り混じり、扉の前で思わず足を止めた。


 うぅ、ドキドキしてきたわ……。


 私の表情を見てか、二人が心配そうな顔をする。


「ロゼリア様、具合でも……?」

「ええ、大丈夫。何だか緊張してしまって……」

「今日中に、ということでもないですし、どうぞ気楽に」


 そういうことではないのだけれど……。

 でもそうね、気負っても仕方がないわ。


「では」と言い、クラウドが扉を開ける。


 わ……っ。

 さすが王城の厨房。

 設備も凄いけれど、人の多さにも圧倒されてしまう。


「ロゼリア様をお連れしました」


 クラウドが口を開いたその途端、視線が一気に集まる。

 今まで挨拶なんてお手のものだったはずなのに……婚約者と名乗るのがくすぐったい。

 キリギルス殿下の時は、何も思わなかったのに……。

 でもロヴァルド様に恥ずかしくないよう、振る舞わなければ。


「これはこれはロゼリア様! お待ちしておりました!」

「突然お邪魔してごめんなさい。ロヴァルド殿下の婚約者、ロゼリア・エルフォルドと申します。どうぞよろしくお願い致します」

「これはご丁寧に……。私は調理場責任者のカイルと申します。こちらはパティシエ部門のシェフ、サニーです」

「サニーと申します。よろしくお願いします!」


 良かった……みんな良い人そう。

 それにサニーはこんなに若いのにシェフだなんて。

 ……なんかどこかで見たことあるような。

 でもアーシュヴァルツ王国に知り合いなんていないし……気のせいよね。


 ひと通りの挨拶を終えると、すぐに本題へと話が進む。


「早速ですが、レシピの確認からさせて頂いてもよろしいですか?」

「ええ、もちろんです。ここは──」


 詳細を書き起こし、必要な材料を揃える。

 さすがは現役の料理人ね。

 慣れた手つきで、計量も次々と進めていく。


 いよいよ、試作が始まる。

 ……上手くいくといいのだけれど。

読んで頂きありがとうございます!

応援して頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ