表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】婚約破棄された公爵令嬢は、厨房で静かに生きていくつもりだったのに  作者: 京野きょう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/41

第33話|同じです、ね?

「お初にお目に掛かります、ロゼリア・エルフォルドと申します。こうしてお目にかかれたこと、とても嬉しく思います」


 視線の先には、アーシュヴァルツ国王陛下と王妃。

 周囲のざわめきが、急に遠く感じられる。





 アーシュヴァルツ王国に着いてからの数日間は、あまりのんびりしている暇もなかった。


 ロヴァルド様は「パーティーまでゆっくりして欲しい」と仰ってくださったけれど……。

 この国に受け入れてもらうため、一分一秒も無駄には出来なかった。


 まずは王国の要人を叩き込んだ。

 とは言っても、貴族の名前は把握している。

 既にある記憶とのすり合わせだった。


 その合間にドレスの新調。

 アメリーの張り切り具合が、大変なことになっていた。

 家から持ってきたものでも、それなりの数はあったのだけれど……。


 そして今日、婚約お披露目のパーティーが催された。

 私は今、玉座に座る国王陛下と王妃の御前に立っている。


 国王陛下はロヴァルド様とよく似ていた。

 けれど、その佇まいはより厳しく、重みがあった。

 王妃の柔らかな佇まいには、揺るぎない気品がある。

 思わず見惚れてしまいそうになるほど美しかった。


「楽にしてくれ、ロゼリア・エルフォルド。君を心から歓迎しよう」

「ロヴァルドの婚約者がこんなに可愛らしい方なんて……あの子、気難しいところがあるでしょう?」


 気難しいといえば気難しい方だけど……。

 でもそれだけじゃないことは、私はもう嫌というほど知っている。


「確かに寡黙な方ではいらっしゃいます。ですがとても誠実で……本当は誰よりも優しいお方だと思っております」

「ふふ、本当にあの子のことをよく分かってもらえているのね」

「ロヴァルド。お前を理解してくれているロゼリアを、しっかりと守っていくように」

「勿論です、陛下」

「ロヴァルドのことをどうぞ末永く、よろしくお願いしますね」

「嬉しいお言葉ありがとうございます。皆様に恥じぬよう、しっかりとお支えしていきたいと思います」


 そう言うと、陛下も王妃も微笑む。

 心から祝福してくれた親の顔が見えたような気がして……公式の場なのに心が温まってしまった。


 和やかな雰囲気の中、音楽が切り替わる。

 そしてロヴァルド様が静かに手を差し出した。


「他の者にも宣言しなくてはな」

「……はい」


 私は微笑みながら、そっと手を重ねる。

 そのままロヴァルド様に導かれ、ホールの中央へと歩み出た。

 音楽に合わせて、ゆっくりとステップを踏み出す。

 ロヴァルド様と踊るのは初めてなのに……驚くほど自然に呼吸が合う。


 踊り始めた瞬間から、周囲の視線が集まっているのが分かる。

 一挙手一投足、見定められているような視線。

 それに誰かとこうして踊るのは久しぶりで……緊張を隠せない。


「緊張しているか?」

「……少しだけ」

「そうか。……私も緊張している」

「えっ」


 その言葉に、ふっと肩の力が抜ける。

 不思議と視線も気にならなくなった。

 ロヴァルド様の隣にいることが、ただただ心強いわ。


 音楽がゆっくりと終わり、ホールに静けさが戻っていく。

 二人揃って一礼すると、盛大な拍手を贈られる。


「……受け入れられたようだな」


 ロヴァルド様が小さくそう呟くと、実感と嬉しさが込み上げきた。


「……はい!」





「……私、上手く出来ていたでしょうか?」


 あの後。

 招待客への挨拶回りを済ませると、本日はお役御免。

 自室へ戻りソファへと腰を下ろすと、今更ながらに緊張してきてしまった。


 アメリーが用意してくれたお茶や茶菓子にも、手を伸ばす余裕もないほど疲弊していた。

 もちろん、疲れた顔なんてお見せしないけれど。


 それでも思わず漏れた本音に、ロヴァルド様が小さく笑う。


「拍手をしていない者など、一人もいなかった。……ありがとう」


 そう言って私を抱き寄せる手は、少しばかり震えていた。


「……もしかして、ロヴァルド様も緊張してらしたんですか?」

「……まぁ少しは」


 その一言が、妙に可愛くて。


「ふふっ、王太子殿下も緊張なさるのですね」

「……相手が君だからな」

「それってどういう意味──ン……ッ!」


 言い終える前に、唇を奪われる。

 先ほどまでの穏やかさが嘘のようで、距離が一気に詰まる。

 抗う術もない強い口づけに、意識が溶かされてしまいそう。


「──は……っ」


 唇が離れ乱れた呼吸を整えていると、力強く抱きしめられる。


「すまない……抑えが効かなかった」

「謝らないでください……その、私だって……嬉しかったんですから……」


 顔が見えないのを良いことに、私の気持ちを伝える。

 だって私の顔、絶対に真っ赤になってるもの……。


「──どこまで翻弄する気だ?」


 笑いながらそう言うと、おでこにそっとキスを落とすロヴァルド様。


 もちろん、ずっと── ですよ?

読んで頂きありがとうございます!

応援して頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ