第25話|私の答えは。
「──ロヴァルド様……?」
え? アメリーは?
ロヴァルド様がお茶を持ってる?
「……──ッ!!」
声にならない叫びを上げる私をよそに、ロヴァルド様はテーブルへ向かいトレイを置いた。
「……飲むか?」
「……! え……っと、わた、わたしが、やりま……ッ」
そこでハッと気付く。
寝巻きのまま……!? 羽織るものも手元にない……!
どうしよう──
そもそも、こんな姿で王太子殿下をもてなすなんて……無理!
それに……会うのは正直まだ怖い……。
そんな想いが頭の中をぐるぐるして──
思わず、手元にある布団を被ってしまった。
「ロヴァルド様……せっかく来ていただいたのですが……こんな格好ですし……」
「構わん」
「……あと少し体調も……」
「それなら尚更、帰るわけにはいかないな」
「……!」
お茶を注ぐ音がする。
結局、ロヴァルド様にさせてしまったわ……。
カチャリ……と音がして、足音がこちらへ向かってくる。
「ロゼ、そのままでいい」
「……!」
名前を呼ばれただけなのに、身体が熱くなる。
「……座っても?」
「…………はい……」
私に断りを入れてから、ベッドに腰を下ろす。
「ロゼ、顔を見せてくれ」
そんなこと言われても、こんな泣きはらした顔なんて見せられない……!
それに……合わせる顔をもない。
布団を被ったまま、首を横に振ることしか出来ない。
「……では、そのままでいい」
そう言うと、布団ごと私を抱きしめる。
「アメリーから全て聞いた」
「──……!」
血の気が引いて、全身から力が抜けていく。
──知られてしまった
……もう、駄目ね。
枯れていたはずの涙が流れ始める。
「……守ってやれなくてすまない」
「……!」
「ロゼ……顔を見せて」
「……う……っ」
布団から頭だけを出して、緊張しながら顔を上げる。
そこには、辛そうな顔をしたロヴァルド様がいた。
「……ロヴァ、ルド……様……っ、ごめ、なさ……っ」
「何も言うな」
啄むようなキスで涙を拭われ──
優しく唇が重なる。
「……ん…………ふぁ……っ」
……安心する。
唇が離れると、遅れて恥ずかしさが押し寄せてくる。
だってあんなに長くて優しいキス、初めてなんだもの……。
ちらりと盗み見るようにロヴァルド様を見ると、穏やかな表情で見つめられていた。
そんな優しい顔で見られたら──……!
恥ずかしさに耐えかねて、布団に潜り込んでしまう。
顔が熱い。
ロヴァルド様の顔を見れない。
ドキドキが止まらない。
「……ロゼ?」
「す、すみません……!」
「謝るなと言っただろう?」
「すみ…………あの、少しお待ちいただけますか……?」
「ああ、分かった」
……とにかくこのままでは失礼極まりないわ。
むくりと起き、布団を肩から掛ける。
これなら寝巻きも分からない!
「お待たせしました!」
「……なんだそれは」
「え? いえ、羽織物の代わりにと思いまして!」
「……」
ため息をつかれてしまった。
……いいアイデアだと思ったのに。
「それならこっちを羽織ってくれ」
布団を剥ぎ取られ、そのままロヴァルド様の上着をそっと掛けられる。
「ろ、ロヴァルド様!? お風邪を引いてしまいます……!」
「室内だぞ? 引くわけがないだろう」
それはそうなのだけれど……。
ロヴァルド様の匂いが近すぎる……!
「あ、ありがとうございます……」
「……ああ」
そして流れる沈黙。
恥ずかしさから何も喋れなくて、でもせっかく来ていただいたのに……。
「あの、ロヴァルド様はなぜこちらに……?」
「パンを貰いにきた」
「……ええ!?」
そんなに気に入っていただけていたの!?
「……冗談だ」
「あ、はい……」
ロヴァルド様でも冗談とか言うのね。
意外な一面を見てしまったわ……。
「お前に会いに来たに決まっているだろう」
そう言いながら頭を撫でられる。
……嬉しい。
でも──……。
私が何も言えずにいると、ロヴァルド様は言葉を続ける。
「……ロゼは、どうしたいんだろうか」
「え……?」
「お前のことだ、きっと「自分は相応しくない」などと考えているのではないかと思ってな」
「え、ええと……」
その通りだった。
でも。
私がそう考えているだろう、と分かっているのに「どうしたいか」と聞いてくれたの?
それなら……私の答えなんて決まっている。
「ロヴァルド様の……隣に居たい、です……っ」
「……そうか」
それだけ言うと、そっぽを向いてしまった。
「……ロヴァルド様」
「……なんだ」
「お顔が見たいです」
「……ダメだ」
「もう! いいじゃないですか!」
「ダメと言ったらダメだ」
耳まで真っ赤なロヴァルド様。
可愛い。
この人の隣に居られる。
そう思うだけで、こんなにも穏やかな気持ちになれるなんて。
「……ロヴァルド様」
「……なんだ」
「……大好きです」
ロヴァルド様の肩にそっと頭を乗せると、ようやくこちらを見てくれた。
少しびっくりしたような、気まずそうな顔。
でも、すぐに嬉しそうな表情に変わる。
「私もだ」
そして優しく口付けをされて。
「ロゼ……愛している──」
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