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【第2章完結】光一くんのピアスはプライスレス【第3章執筆中】  作者: 御乙季美津
第1章 光一くんの初体験はプライスレス
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刑事一課長との対面(と対決) 前編

内容をしっかりしたものにしようと頑張り過ぎた結果+諸事情により投稿まで10日程がかかってしまいました(^^;)

時間があればプロローグから読んで頂ければ幸いです。

よろしくお願いします。

「まずは自己紹介をしないとな」


 そう言うと課長らしき男性は取り出した身分証を提示しながら、

「大川中央署刑事一課長の吉田孝介だ。よろしく」

 自己紹介をすると軽く頭を下げた。山中から聞いていた「人を利用する」という雰囲気は全く感じられず、寧ろ拍子抜けしてしまうほどの好印象を光一は抱いた。


「僕は九州管区警察局の防犯部から派遣された古賀と言います。この2人は僕の部下になる朝倉と星野です。よろしくお願いします」

 身分証を見せながら普段どおりの挨拶をする貴格。

「よろしくお願いします」

 夏奈にとっての「防波堤」となることを心に決めた光一は、少し表情に焦りが出ていたものの堂々とした挨拶をして見せた。

「よろしくお願ぃ……」

 光一の後ろから半身だけを覗かせた夏奈の挨拶は、途中から見事にフェードアウトしてしまった。

「ははは。そんなに緊張しないで良い。君たちは被疑者では無いのだから」

 吉田はそんな夏奈に、にこやかな表情をして見せた。


「ところで、今回は君たちのおかげで死体遺棄事件を認知することができた。詳細はこれから調べることになるが、本当にありがとう」

「とんでもないです! あの船着き場を訪れた時に遠藤巡査部長から色々なことを教えていただきましたし、山中巡査部長や後藤巡査部長、それに鑑識の方々が協力してくれたのが大きかったと思います」


 貴格が言葉にする謝辞の中に「山野」の名前は無かった。


(態度は非協力的だったし山中さんの話だと吉田さんと険悪らしいし)


 古賀が「山野」の名前を出さなかった理由は光一にとっては知る由も無いことだけれど、そこに何かしらの配慮があるような気がしてならなかった。


「そうか。そう言ってもらえると、みんな遣り甲斐を感じると思う。な? 山中部長?」

「はい! 未解決どころか未認知事件を作らずに済んで本当に良かったです」


 振り返った吉田に、山中は笑顔で答えた。


「しかし、君たちは一体どういう立場なんだ?」


 再び防犯部の3人へ視線を戻した吉田の顔は、さっきまでの笑顔から何かを探るような表情へと移り変わっていた。刑事一課長が本領を発揮し始めた。そう思った光一は、咄嗟に身構えていた。


「1日に2回も本部長から電話が来たのは今日が初めてだった。1回目は管区警察局から人が来るから相手をしてくれという話で、2回目は船着き場の現場検証をすることになったから山中部長と後藤部長を派遣してくれという話だった。本部長が掛けてきた電話の両方に君たちが関わっているのは何かがあるとしか考えられない。君たちは本当に一体何者なんだ?」


 右手を顎に当てながら、吉田は防犯部3人を訝しむような表情で見据えた。


「僕たちは九州管区警察局の防犯部に勤務している何の変哲もない警察職員ですよ」


 貴格はそう言って吉田の質問を軽く流そうとしたけれど、それは無駄なことだった。


「そんなわけがない。君たちの部署の名前がほとんど聞いたことが無い『防犯部』であるということと、あの船着き場に来た理由が福岡県警の依頼した防犯に関する研究活動の一環であるということは、既に遠藤部長からの報告で聞いている」


 船着き場で貴格が誤魔化しながら山野や遠藤たちに伝えた自己紹介の内容はしっかりと報告されているようで、吉田はそれを信じているようだった。


「しかしだ! さっきも言ったが、本部長が掛けてきた電話に君たちが漏れなく関わっているのは間違い無い事実なんだ。何か隠し事があるに決まっている!」


 その上で、防犯部の3人に尋ねる吉田の視線は鋭く、それが原因だからか夏奈は光一の後ろへ逃げるように姿を隠し、光一も貴格へ不安げな視線を送った。


「参りましたね。さすがは刑事一課長です。僕たちに秘密があるということはお見通しというわけですね」


 そんな威圧感のある環境の中でも普段どおりのスタイルを貫く貴格は、「大丈夫」と言っているような笑顔を光一と夏奈に見せた後、両手を上げた「お手上げ」というジェスチャーをしながら吉田の言葉をあっさりと肯定した。


「ここには山中巡査部長もいらっしゃいますし、あまり話すべきではないかもしれませんが、知らないうちに秘密が漏れてしまうよりかは、言ってしまった方が良いかもしれません」

「やはり秘密があるんだな?」

「そんな秘密を話しても大丈夫なんですか!?」

「今回は僕の判断で話そうと思いますので、守秘義務をよろしくお願いします」


 ニヤリと笑いながら、やっぱりな、と言いたそうな吉田と、急に焦りだした山中に笑顔を向けながら、1つだけ咳払いをした貴格は神妙な面持ちで話し始めた。


(ちょっと、古賀さん! 何を言い出すの!?)


 光一が内心焦りだしたことなど、貴格は知る由も無かった。


「僕たちの秘密ですが、防犯に関する研究活動の裏で、例の殺人未遂事件の被疑者が無罪を勝ち取れる手掛かりが船着き場にあるかどうか、本部長から調査をするように依頼されているのです」

「無罪を勝ち取れる手掛かりだと!?」

「それはどういうことですか!?」


(ん? あれ? 古賀さん、もしかしてまた誤魔化してるのかな?)


 再び貴格は誤魔化そうとしているのではないか。そう察した光一の焦りのレベルは急速に下がり、その表情には少しだけ余裕が現れた。


「例の殺人未遂事件では、被疑者は現行犯で逮捕されているにもかかわらず、全面的に否認をしていると吉田課長は警察本部に報告していますよね?」

「あぁ。被疑者2人は完全否認しているけど嘘を吐いているようには全く見えない、と山中部長と後藤部長がかなり強い口調で言ってきたからな。山中部長、そうだったよな?」

「はい。あの目は嘘を吐いているような目ではありません!」


 吉田に尋ねられた山中は、被疑者の言葉を代弁しているかのように、強い口調で自分の考えを主張した。肩入れし過ぎではないか、と光一は一瞬考えたけれど口には出さなかった。


「山中巡査部長は被疑者と対面しているので、そのように主張されるのは分かります。ですが、本部長は報告書のみでしか把握できないので、そうは考えていないようなのです」

「ほ、本部長がですか?」


 視線を泳がせながら山中が尋ねた。


「はい。被疑者2人は現行犯で逮捕されていて、その犯行の様子も防犯カメラで撮影されているようですから、これだけでも公判で有罪になる可能性は極めて高いと思います。しかし本部長は、被疑者2人は無罪になるための何かしらの手掛かりをあの船着き場に残しているから全面的に否認しているのかもしれない、と考えているようなのです。なので、本部長は僕たちにその手掛かりを探るように依頼してきたのです」

「それが古賀さんたちの秘密ですか?」

「そうです。これは絶対に公にしてはいけないことです。ですので、吉田課長も山中巡査部長も口外されないようにお願いします」

「分かった」

「は、はい。わ、分かりました」


 吉田が神妙な面持ちで頷くその一方で、山中は表情に焦りを滲ませながら二度三度頷いて見せた。

感想やブックマークをしていただければとても励みになります。

次の投稿は明日の午後11時を考えています。

今後ともよろしくお願いします。

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