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【第2章完結】光一くんのピアスはプライスレス【第3章執筆中】  作者: 御乙季美津
第1章 光一くんの初体験はプライスレス
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刑事一課長との対面(と対決) 後編

昨日の投稿の続きになります。

時間があればプロローグから読んで頂ければ幸いです。

よろしくお願いします。

「それでだ。その手掛かりは見つかったのか?」

「いやー、現状では無さそうですね」


 結果を早く知りたそうな焦った様子で成果を尋ねた吉田に、貴格は首を横に振りながら答えた。


「そうか。あの防犯カメラを見た限り、手掛かりを残すような小細工はしてなかったようだしな。それに、精神鑑定をしたとしても、被害者を川に投げ入れた後に自ら救助するように通報しているから責任能力ありと判断されるはずだからな。山中部長や後藤部長はああ言ってはいたが、有罪は堅いだろうな」

「いやー、嘘を吐いているようには見えないんだよなぁ……」


 その貴格の様子を見た吉田が、そうだろう、と言いたそうな様子で何回も頷いているその後ろで、山中は複雑そうな様子でしきりに首を捻っていた。


(古賀さんは凄いな。本業を隠すためとはいえ、あそこまできっちりとストーリーを組み上げて誤魔化すことができるなんて)


 貴格が秘密と称して話を切り出した時にはとても焦った光一だったけれど、しかし実際には本業を誤魔化すための話をしっかりと用意していたようだった。

 そして、その話が全て終わった段階で光一は、ふぅ、と安堵の溜め息を吐いた。


「ところで、君たち防犯部の職員は警察官なのか?」


 貴格の話が終わったところで、何かを思いついたかのような表情の吉田が古賀に尋ねた。


「いえ。僕たちは部長を含めて一般職員になります」

「つまり、令状請求とかは……」

「警察官が執行することができる権利は持っていません」


「そうか……」

 そう言うと、吉田はしばらく考え込んだ後、

「折り入って1つ頼みたいのだが聞いてもらえるか?」

 と神妙な面持ちで貴格に話しかけた。


「どういったことでしょうか?」

「船着き場で発生した死体遺棄事件の取り扱いをこちらに任せてもらえないか?」

「事件の取り扱いをですか?」

「そうだ」


 力強く頷いた吉田は、さらに話を続けた。


「確かに君たち防犯部が船着き場を調査したおかげで、死体遺棄事件に関連がある塗膜片や足跡を採取することができたし、防犯カメラに記録された映像が、その事件を立証するための証拠物件であるということも判明した。我々はそれについては感謝している。しかし、採取した資料の鑑定やその保管をこちらに丸投げしているのが現状だ」

「そうですね。確かに吉田課長の言うとおりです」

「それに警察官が請求したり執行したりする権利を持っていないという話だよな」

「はい。それも間違い無いです」


 吉田の畳みかけるような話にたじろぐことなく、貴格は冷静に頷き返した。


「そのような状況だから、我々が表立って動いた方が良いと思う。もしどうしても事件に関わりを持ちたいのであれば、君たちはアドバイザーという形でこちらに色々と指示をしてくれても構わない。もしこの話を了承してくれれば、君たちは何度もここを訪れることなく事件に関わることができるし、我々は認知していていなかった事件を検挙することで大川中央署刑事一課の株を上げることができる。どうだ。お互いにとってwin-winの関係だとは思わないか?」


 ニヤリと口元に笑みを浮かべる吉田の提案を聞いた貴格は、握りこぶしを口元に持っていってしばらく考えた後、

「分かりました。それで構いません」

 普段と変わらない笑顔で頷いて見せた。


「その代わりと言ってはなんですが、そちらが手に入れた色々な情報を、逐一教えてもらうことはできますか?」

「そんなことはお安い御用だ。いやー、本当にありがとう。これで我々刑事一課もそうだが、特に遠藤部長や山中部長や後藤部長の評価を上げることができる」


 貴格に事件の取り扱いについて尋ね始めた時は険しい表情をしていた吉田だったけれど、自分の要求が了承されたことに、ホッとしたような笑顔を見せていた。


「この事件に関係した巡査部長の方々の実績を上げようとされているようですが、何か事情でも?」

「ははは。大したことではないが、遠藤部長と山中部長と後藤部長には期待していてね。できれば早く警部補に昇任してもらいたいと考えているんだ」

「なるほど。それは是非頑張ってもらいたいですね」

「ははは……皆さんに迷惑をかけることがないように頑張ります」


 吉田や貴格が声援を送った山中は、どう反応して良いのか分からないようで、右手で後頭部を掻きながら苦笑していた。


「もう6時を過ぎていたか。君たちも事務所へ戻らなければならないだろう?」

 話が一段落ついたところで腕時計を確認した吉田が、貴格に尋ねた。


「そうですね。今日のところはこれで失礼します」

「山中部長。玄関まで送っていってよ」

「分かりました。それでは皆さん、行きましょう」

 そう言うと、山中は3人の先頭に立って会議室の出入り口へと向かった。

「それでは失礼します」

 貴格はいつものように堂々とした雰囲気で、光一はやや表情に硬さはあったものの貴格と同じように堂々とした様子で、夏奈は光一の後ろに半身を隠しながらそれぞれ吉田に一礼をすると、会議室の入り口で退出を促す山中に従い会議室を後にした。


「今日はありがとうございました」


 玄関までやって来ると、山中は防犯部の3人に深々と頭を下げた。


「いえいえ。こちらこそお役に立てたでしょうか?」

「役に立つどころか、認知できていなかった死体遺棄事件を認知することができて本当に良かったです。しかし、課長が色々と要求してすみません」

「もしかして事件の取り扱いについてですか?」

「そうです。見方によると思いますが、刑事一課の株を上げることや、俺や遠藤部長や後藤部長の評価を上げる話を持ち出してきた時に、自分の評価も上げようとしているように見えませんでしたか?」

「山中部長の話を聞いていたのでそのように見えなくもありませんでしたが、僕の目にはそこまで露骨には見えなかったですね」

「それなら良かったです」


 貴格の言葉を聞くと、ふぅ、と山中は1つ溜め息を吐いた。


「それでは僕たちは……」


 山中と一通りの挨拶を終えた貴格が、夏奈や光一を連れて大川中央署を去ろうとした時、

「あ! すみません!」

 山中が何かに気付いたような慌てた声を出した。


「はい。何でしょうか?」

「こちらで手に入れた鑑定結果とかの情報を伝える時の連絡先なのですが……」

「その時は、九州管区警察局の代表電話に掛けていただいた後に、防犯部の古賀班長と名指しして頂ければ大丈夫です。すぐに繋いでもらえると思います」

「防犯部の古賀班長ですね。分かりました。今日は遅くまで本当にお疲れ様でした」

「お疲れ様でした。それでは失礼します」


 貴格の言葉と共に防犯部の3人は山中へ向けて礼をした後、自分たちの公用車であるSUVへと向かった。

「それでは帰りましょうか」

 夕焼けに染まる空の下、3人が乗り込んだSUVは大川中央署を後にした。

感想やブックマークをしていただければとても励みになります。

次の投稿は1週間から10日後を目途に計画しております。

今後ともよろしくお願いします。

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