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【第2章完結】光一くんのピアスはプライスレス【第3章執筆中】  作者: 御乙季美津
第1章 光一くんの初体験はプライスレス
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防犯カメラは全てを見ていた! 後編

昨日の投稿の続きになります。

時間があればプロローグから読んで頂ければ幸いです。

よろしくお願いします。

 大川中央署の5人がモニターを見つめる中、軽乗用車の姿が消えた動画の再生が始まった。1分が経過してもあまり変化が無さそうな動画の中で動く「5月21日午前1時21分」という表示が、時間の経過を教えていた。


 動画が始まっておよそ1分が経った。


「まだ変化は無いか」

 貧乏ゆすりをしながら課長らしき男性が一言呟いた時のことだった。


「課長! これです! この軽乗用車です!」

「なるほど。これか」


 ヘッドライトで船着き場を照らしながら現れたのは、映像を逆再生した時に見たのと同じ1台の軽乗用車だった。それを目にした課長らしき男性は、右手で顎を触りながら身を乗り出して画面を注視した後、パイプ椅子へ再び腰を下ろした。


「これが山中部長が言ってた車?」

「あぁ。もうすぐでバックしながら駐車するはず」

 後藤の呟きに山中は画面を注視しながら答えた。


 山中が言うとおり、画面の中の軽乗用車は駐車をするためにバックで移動をし始めた。そして、船着き場の入り口に差し掛かったと思った次の瞬間、突然停止したかと思うと、防犯カメラでやっと分かるぐらいの距離を前進したのが分かった。


「あれ? 何か動きが変じゃない?」

「うーん……」


(もしかして……)


 疑問を呟く後藤とそれに明確な答えを出せない山中を含めた大川中央署の5人は、何が起きているのか全く察していないようだった。その一方で、光一は何が起きたかをしっかりと理解していて、横で動画を見ている貴格の方を向いて小声で尋ねた。


「古賀さん。あの縁石にあった自動車の衝突痕はもしかして……」

「光一さんの考えているとおりだと思います。この時にできたものではないでしょうか」


 見れば、貴格と光一の後ろから身を乗り出して動画を見ている夏奈も事態を把握していたようで、防犯部3人は顔を見合わせながら小さく頷いた。


 モニターには、わずかに前進した後に動きを止めた軽乗用車のヘッドライトが消えた後に、運転席から慌てた様子の人影が降りてくる様子が映し出されていた。そして、その人影は、軽乗用車の後ろに回り込むと、車体を含めた周辺の様子を見始めた。映像をよく見ると、その奥側にもう1人の人影がいるのが分かった。


「何やってんのか分かる?」

「うーん、何だろうな。バックで駐車する時に慌てて後ろを見に行くなんて……あ! そうか! そういうことか!」


 軽い雰囲気で尋ねる後藤に答えようと少し思案していた山中が、ここで突然何かに気付いたような大きな声を上げた。どうやら、防犯部の面々がすでに把握していることにやっと気付いたようだった。


「お、おう。ど、どうした?」


 山中の隣に座る課長らしき男性が、呆気にとられたような表情で山中の方を向いた。


「この船着き場にある縁石の1つから黒色の塗膜片を採取したということを報告しましたが、もしかしたらこの自動車のものかもしれません。さっきのこの軽乗用車の動きは、バックで駐車をする時に船着き場の縁石に車をぶつけたのではないでしょうか」

「なるほど。ということは、この防犯カメラに記録されたのが本当に死体遺棄の犯行の様子であれば、その採取した塗膜片を科捜研に出して車種推定をすれば、被疑者の有力な手掛かりを掴めるかもしれないということか」

「そのとおりです」

「おい! トランクを開けたぞ!」

 課長らしき男性の言葉に山中が頷いた時、モニターを見る後藤がやや興奮した様子で話しかけた。


 モニターには、たどたどしい動きをする2人の人影が、開けられたトランクから力なく横たわる人影を取り出した後に地面に下ろす様子が映し出されていた。そして、トランクのドアが閉まった後、2人の人影は地面に下ろしたものを抱えて立ち上がり、一歩ずつスロープを下っていった。


 モニターに映し出されたその光景を見た大川中央署の5人は、再び五者五様の反応を見せた。

「課長! これです!」

「ちょ、ちょっと、山中部長。少し落ち着こうか」

「あ、はい。すみません。しかし、なるほど。こういうことが起きてたのか。ん? あれ、てことはちょっと待てよ……」

 興奮を抑えきれなかったことを課長らしき男性に窘められた山中は、船着き場で起きたことの全容を把握することができて納得したような表情を見せた後、何かに気付いた様子で思案し始めた。


「うわぁ、起きてしまったなぁ」

 1人挟んだ左隣でモニターを食い入るように見ていた後藤は、そう呟いた後に額から流れる汗を拭いながら天井を見上げていた。


「あのさ、浜田部長。この流れを見る限りさ、あのスロープから採取した足跡って、人影を抱えてスロープを下りていった2人のものってことだよね?」

 落ち着きを取り戻した山中に尋ねられた浜田は、

「そうだろうね。これだけはっきりとした映像を見せられたら、そう考えるのが自然じゃないかな」

「てことは死体遺棄事件の被疑者のもの?」

「そうなるよね。古川。足跡を採取した時の立会人関係は完璧だよな?」

「はい。大丈夫です」

 山中と言葉を交わした後、今日の現場検証の時に採取した足跡の証拠能力について古川と確認していた。


「これだけ明確な証拠があるから、足跡と塗膜片の鑑定は急ぐ必要性があるな。後は防犯カメラの解析だが、この動画じゃ顔貌とか軽乗用車のナンバーは難しいか……」

 映像を見る課長らしき男性は、誰よりも深く思案するような表情を見せていた。


 しばらくして、スロープへ姿を消した2人分の人影は再び姿を現すと、駆け足で軽乗用車へと乗り込み、何かに追われるかのように慌てた様子で車を走らせて去っていった。そこまで映像を確認した山中は、他の4人の表情を一度確認して映像を止めた。


 映像を見終わった後、しばらくの間、誰も口を開こうとはしなかった。


「さて、どうしようか」


 その沈黙を最初に破ったのは課長らしき男性だった。


「現状、最も早くできるのは防犯カメラの解析でしょうか」

「だけど、この映像を鮮明化しても距離があるから分かりにくいと思うよ」

 課長らしき男性に向けて答えた山中の言葉を、後藤が遮るように拾い答えた。


「そういえば、古川!」

 その時、課長らしき男性が古川に声をかけた。


「はい」

「防犯カメラの映像では、あの軽乗用車は手前側に来たけど、確かこの進行方向にコンビニがあったよな。あそこの防犯カメラは確認したか?」

「いえ、まだです」

「まだか。あのコンビニは佐賀と大川を向かう道路を曲がって例の船着き場に向かう交差点の角だよな?」

「はい。今日、現場検証の立会をお願いするために訪ねたので間違いないです」

「よし! 後藤部長と古川は、そのコンビニに行って防犯カメラの映像を確保してくるんだ。映っているかは運次第だけど時間は分かっているからな。もし映っていれば解析で色々と分かるかもしれない」

「りょうかーい! 古川! 行くよ!」

「はい!」

 課長らしき男性の言葉に大きな声で答えた後、後藤と古川は会議室を颯爽と出ていった。何かしらの希望が見えてきたことは、時刻が既に18時になろうとしているにもかかわらず、2人にやる気を呼び起こしているようだった。


「浜田! 鑑定を急ぐために、明日朝一で鑑識課と科捜研に嘱託する準備を進めるんだ! 躊躇はするな!」

「了解です!」

 浜田も後藤や古川と同じ意気込んだ表情で会議室を出ていった。


「色々と後回しにして申し訳ない。管区警察局から派遣されたというのは君たちだね」


 命を下した3人が会議室を出ていったのを見届けた課長らしき男性は、防犯部3人の方を向いた。


(遂に来たか)


 光一の警戒レベルが急上昇した瞬間だった。

感想やブックマークをしていただければとても励みになります。

次の投稿は1週間後を目途に計画しております。

今後ともよろしくお願いします。

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