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彼は動けない

 さて、ここで唐突だが彼のダンジョンについて説明しようと思う。


その説明に難しい解説など必要なく、至極簡単に説明がつく。


高さ2m、幅2m。これだけだ。分かりやすく言うならば、2mの立方体の箱だ。2mの大きさのサイコロを浮かべればわかりやすいと思う。その中に彼がいるというわけだ。


これにも当然ながら、彼の効率さの概念が働いている。侵入者をいち早く抹殺するには物理的な意味で近い方が良く、ダンジョンの迷宮なんて非効率的なものは知識のない自分がやっても駄目だと判断し、広さに若干の修正を加えただけにしている。


そして、残存ptを全て消費しての罠だがこれは、地上の入り口からこのダンジョンの入り口の扉まで続いている。しかもその罠は、強制的にかかり回避は不可能ときている。気付かずに歩いている道が罠なのだから躱せない。その罠は『臆病者の世界(ラズ・ガッド)』という。


このダンジョンに光はないため、自分の姿や相手の姿は確認が出来ない。そして彼自身も光の必要性を感じていないため、このダンジョンは侵入者全員が思うように先の見えない闇となっている。


故にこの『臆病者の世界(ラズ・ガッド)』のだ。これは対象を強制的にしかも気付かれずに身長約2cmの大きさにする。そんな2cmしかない人間に対し約80倍以上もの上からの殴打。どんな装備を着けていようと、これに耐えられずはずがない。一瞬に挽肉(ミンチ)になって終わり。


それでも、この世界の人間の装備には当然ながら鋼鉄の類の堅い物が使われているがそれは大丈夫なのか?と言われると、大丈夫ではない。当然ながら人間を殺し終えた後、彼は痛みから悶絶する。自身の強化していないのだ。彼はダンジョンの主というだけで優れた能力は何一つとてない。


外に出てしまえば、彼は一般人としてそれは自然にこの世界に溶け込むことだろう。それほどまでに、彼は姿形も強さを変えずにここまで生き延びてきていたのだ。


ある意味では、彼は罠を選んでしまったが為に生き延びてしまっていると言っても過言ではないだろう。


そんな彼の世界だが、当然ながら弱点と呼べるものはある。攻略方法がなければダンジョンとして成立しないから当然といえば当然なのだが。これは簡単なことであり、難しいことなのかもしれないが。


それは、彼が死ぬまでに殺すこと。この一点に限る。


例えばの話をしよう。彼がいつものように冒険者を殺す作業をしていたとしよう。それが何かしらの不手際により最初に一撃にて冒険者が死ななかった。あるいは、彼の致死量の攻撃を行ったとしよう。


当然ながら彼は傷つくのだが、彼は平々凡々普通を形にしたような人間だ。そんな一般人の彼がいきなり鉄の塊で襲われたり、見たこともないような魔法で攻撃されるとどうなるだろうか?


答えは、彼は慌てふためき例えどんな小さな傷であろうとも逃げの一手に走る。しかし、彼はダンジョンの主。ダンジョンの主にダンジョン外での逃げ道など存在しない。では、何処に逃げると言うのか?と言うと、彼に箱庭とも呼べるこのダンジョン全域にまず、正方形の落とし穴を作成済みなのでそれを発動させる。次に、事前に設置している罠の全てを起動させる。落ちた場所には剣山。その上空からは竹の槍が降り注ぎ、その隙間には機関銃が全自動(フルオート)で小さな隙間を狙う。さらに、回転を加えながらのレーザーが走り出し、1mmずつの感覚でその光線を振り下ろす。これが全て一気に来るのだ。一つ一つはかなりダサい、またはしょぼいものと言えるかもしれないが、だが、残念ながら2cmしかない人間にはそれは天災に等しいものと言える。


そして、彼自身は自殺が不可能となっている為、所定の位置に戻るのだ。全ての罠を元に戻した状態にして。


しかし、当然ながら人間は周りに適応してしまう。どのような環境であろうと、それが死に繋がらない限り人間は適応してしまうのだ。普通である彼も当然その例には漏れない。


鉄の塊に襲われようとも、痛みに慣れてしまえばいい。彼が臆さずに一撃で殺せばいいのだから。未知の魔法も余程のことがない限り、全員が似たような魔法を使ってくる。


当然彼には感覚が存在しているので、火の熱さも水や氷の冷たさも風の切り裂く痛みも岩による鈍痛も雷による感電も光の閃光も闇の脱力感も全てされたことがあり、すでに未知ではなくなっている。


ちなみにだが、彼はこの世界の人間の言葉が分からない。他の者達は将来ダンジョンの外に出ることを夢見ているため、言語習得はしている。


故に、彼はこの世界の人間の魔法は幾度となく小さいながらも見てはいるものの、それが何を言っているのかはまるで分かっていない。


普通の地球出身の一般人である彼にはそんな異世界言語なんてものは必要ないのだ。


そんな、今日も今日とて来客者を待っていた彼にそれは唐突に訪れ彼のダンジョンはもぬけの殻になった。




何かあれば、感想を宜しくお願いします。

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