彼は大きい
これは、簡単に書ける・・・!
彼がこの世界に来て約1年と数ヶ月の日数が経っていた。彼はまだしぶとく生き残っており、今日も今日とて自分のダンジョンを荒らしに来る冒険者を待ち、いずれ来るであろう勇者の来訪に怯えていた。
ちなみに彼は知らない。彼のダンジョンの入り口が、人間が住まう国に近い場所に作られているということを。そして様々な国で危険認定され、難易度が高くなってしまっているということを。
そんなダンジョンに今日も勇敢というべきか愚かともいうべきなのか、冒険者が入り口付近にたむろっていた。
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「おい、これがお前本当にあのダンジョンなのか?」
「ああ、1年程前に突如世界中数を増やしたダンジョンの一つだ。本当に行く気なのか?一人でが挑むにはここは早すぎると思うぞ。ここは、冒険者ランクBのパーティが挑んで誰も帰ってこなかった場所だぞ」
「どうせそいつら、ドジ踏んだだけだろ。俺はそんなヘマはしない」
「自信があるのはいいことなんだがな、せめて人数を揃えてからにしろよ・・・」
「揃えようとしたよ。だけどどいつもこいつも誰もこのダンジョンに挑もうともしない。だったら俺一人で行くしかないじゃか。だったら、お前が来てくれよ」
「俺は嫌だね。何でわざわざ死ぬと分かってお前と組まなきゃならねえんだよ」
「だろ?だから仕方がないさ」
男は肩を竦めながらダンジョンの中へと消えていった。それを見送った男は溜め息をつきながら、期待のある若い芽が今ここで摘まれるだろう未来を予測し、早々にこの場を立ち去った。
ダンジョンの中へと侵入した彼だが、当然自分ひとりで攻略できるとは思っていない。だが、その概要だけでも知ることができれば攻略の糸口へと繋がり攻略できるものだと踏んでいた。
誰も踏破者のいないダンジョンなのだから、当然ながら発見されていない珍しい宝があるに違いないという打算も当然あるのだが。
そうして進む中、男の正面に扉らしきものが見えてきた。どうやらここからがダンジョンの始まりらしい。彼はダンジョン内にどのような危険があるのか分からないため、自身を強化することにした。
【付与魔法】『筋力増強』『脚力増強』『防御結界』
とりあえずこんなものでいいだろうと男はいざ!と扉を開けた。そこで彼を待ち受けていたのは、闇だった。
真っ暗な空間に生き物の気配感じられない闇。彼は良く確かめようと明かりの魔法を使う。
『光源』
しかし、魔法は発生したにも拘らず辺りは変わらず暗いままだった。
「??」
彼は疑問を覚えながらも、足を扉から先へと進んだ。その途端扉は閉まってしまった。
「しまった!罠だったのか!」
彼が気付く頃には既に遅く扉は完全に消えうせ、もう引く事はできなくなっていた。
「・・・なるほど、攻略するまで出させはしない、ということか」
男はこれには納得がいった。このダンジョンが秘密だらけなのがだ。出入り口がなければ脱出ができない。攻略のために、食料は幾ばくかは持っていはいるが、心許ない程度しかない。長期間の滞在は不可能だ。
普通ならば、魔物を食料にすることができるのだが、何故かこの1年で現れたダンジョンの魔物は食料にならない。倒した直後に消えてしまい、こちらが解体する前に勝手に素材を落ちて消えてしまうのだ。
その素材は、爪や皮などでとても食べられたものではない。故に長期の滞在は不可能なのだ。攻略をするなら早くしてしまわなければならない。
恐らくだが、他の冒険者も同じだったのだろう。パーティなんて持っての他だ。食料を巡っての身内同士の殺し合いにしかならないだろう。
ならばと、男はほくそ笑む。一人できた男はある意味でついてるかもしれなかった。
そうして進んだ男を待ち受けていたものは、強い衝撃と身体の弾ける音だった。こうして男は一瞬にしてこの世から退場した。
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侵入者の男を素手で殺した彼は、死んだ眼で男の圧死体を見ていた。何人もの冒険者がやって来ては彼によって潰される。そんな日々を送っている彼の頭の中はあまり考える力もなく、ただただ勇者によって殺される日々を待っているだけだった。
―――早く、殺してくれ!―――
そんな彼の願いとは空しく、彼はやって来る冒険者を叩き殺す。数ヶ月前に感情を極限まで殺したことにより彼は、ただただ、効率を求め冒険者を殺していた。
彼の願いとは反対に、彼は訪問者を殺す。効率を求めてしまったが為に自己保全に走っている、効率さを呪いながら。
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