スノーホワイト
ちょっと謎だなあ。
なんで死んだのやろ。
事故かな他殺かな自殺かな。
わかんないね。
ほなら、いつもみたく先生にお願いしよ。
上野先生に。
そうしよ。
現場での↑みたいな流れで、僕のとこには、
異状死体。ご遺体が運ばれてきます。
こんにちは上野です。
ちゃんとした根拠にもとづいて、あちこち見たり触ったりして、なぜその人が死んだのか、
死因を特定させなくちゃいけない。
そうです。それは法医学です。
僕。監察医。
今回、運ばれて来たのは、こんなの見た事もないってくらいに原型を留めてないご遺体で、
あまりのアレさにこれが人のする事かと、
これが元は人間だったのかと、
僕は絶望しながら、温めたオレンジクリームソーダを飲んだ。落ち着く。落ち着け。
法医学をするんだ。頑張れ僕。
サラッと見ただけでも分かる、鋭利な刃物による刺し傷。たくさん。
これをひとつずつ数えなきゃなんない。
めんどくさいなあ。残業なりそ。
こんなに刺さなくてもいーじゃん。ねえ。
僕の知る限りでは、今の刺し傷の日本記録は、
247ヶ所だったかな?
今回は、果たしてその記録を上回るのだろうか。やれやれだね。
いーち、にーい、さーん、(以下略。)
結果、246ヶ所の刺し傷を確認できました。
あのさあ……
もう少し、あと2回くらい刺せなかったの?
どうせなら日本記録更新したい、
新記録を出したい。
とは思わなかったの?
続いて、全身の火傷の具合を確認。
肺の中にススが入っているのか、
気道は焼けてないか、
みたいな事を確認しまーす。うん。
だいたいわかりました。
その次に、首の圧迫の状況ね、確認しまーす。
自殺の首吊りなのか、第三者に首を絞められたのか、アザってゆーか、索痕からそのあたりがわかりまーす。うん。だいたいわかりました。
あとはまあ、歯とか、皮膚とか髪の毛とか、
胃の内容物とか、いちおーね。法医学だからね。まあ、専門的なことは、ここでは言えないけれど、あちこちいろいろ確認しまーす。
んで、検死終わりでーす。
殺害時の状況をまとめました。
ご遺体(Aとする)
Aは、両手首を後ろに回し、手首を粘着テープでぐるぐる巻きにして、目を粘着テープで塞ぎ、刃渡り17㎝の包丁で全身を246ヶ所刺した後、灯油をかぶり、マッチで火を付けて、醤油を2リットル飲み、首吊りをしながら、練炭を燃やし、頭部を鈍器で殴りながらコンセントに針金を突っ込んで感電した後、除草剤を4リットル飲んで、心臓を釘打ち機で撃ち抜いた後、マンション屋上に登り、鼻と口を粘着テープで塞いで、そこから転落しながら舌を噛み切り、地面のアスファルトに激突しながら骨折したと見られる。
以上の結果から、
自殺と思われます。
と、僕は法医学的な書類に記入して、
ペンを置いた。
お仕事の場所から外に出ると
あたりはすっかり暗くなっていて、
はよかえろ。
帰宅途中、車の運転中に僕は、ご遺体Aの足の爪に塗られていたペディキュアの色を思い出した。
Aが生きていた時に、塗ったと思われる色。
季節は巡り行き、
この街にももうすぐ冬が、訪れる。
冬が好きですよ。
雪の白色を想って、ただ目を閉じた。
僕は。




