公園へあと少し
12月29日。
私は久しぶりに、お家に帰ってきた。
冬。
玄関開けて、ああ懐かしい匂い。
靴脱いで、リビングに行くと
妹ちゃんがテレビを見ていた。
『た……ただいまあ〜』
少しビビりながら声をかけると、
妹ちゃんは、振り返って
『おかえりー。お姉ちゃん。』
つって普通。
なんか安心しちゃった。
少し背が伸びた?
妹ちゃんが見ているテレビは、なんやら年末の歌番組で、たくさんのアーティストが出てる。
『あ。私この人たち知ってる。人気だよね。』
テレビにはカッコいい5人組のアイドルグループが出ていて、この人達はバラエティもやるし夜空のなんとかも歌うし、。
私は妹ちゃんとナチュラルに会話するために、
ことさら明るく発声した。
『スコップ。』
妹ちゃんが、飲んでいたミルクを吹き出した。
『ぎゃははははは』
なんで笑われているのか、わかんないけど、楽しそうで良かった。私も笑おっと。
『えへへへへへ。』
『ぎゃはははははは。はー。はー……』
たくさん笑った後、少し落ち着いた妹ちゃん。
『やめてよ笑』
『うん(?) 』
2人でビシャビシャになった床を
ティッシュで掃除していたら、テレビには韓国みたいに美人なグループが出てきた。
『あ。私この子達しってる。人気だよね。』
さっきみたいに妹ちゃんと、楽しい会話をしたいなあ。私はつとめて明るく発声した。
『ロボトミー』
妹ちゃんが、飲んでいたミルクを吹き出した。
『ぎゃははは』
『え? あははは? あははー笑』
『やめてよ笑』
『うん…てへへ』
『お姉ちゃん、テレビとか見てないんでしょ?
このグループはねえ、オハナ。人気なんだよ。』
『ふーん。そーなんだー』
お母さんが帰ってきた。
『あ。あんた帰ってたの?』
『うん。ただいまあ〜』
『そうそう。あんたに言うわね。あれ。
えっと自転車屋さんを右に曲がってそのまましばらくまっすぐ、公園まであと少し、靴は履いた?
そうしたらそこが処刑場。』
お母さんが真顔で変な事を言った。
『え!? なにそれ。怖い。』
私は、風邪ひいたので
なんか頭痛と寒気がした。
『ちがうよお母さん、公園には桜、処刑場じゃなくて和歌山刑務所、懲役15年。だよ』
妹ちゃんミルク飲む。ぼだほだこぼす。
『え? なにそれ。綺麗。』
私の風邪が治った。
『ああ。そうだっけ笑』 母。
『そうなんだよ笑』 妹ちゃん。
楽しそうに笑顔で会話をするふたり。
ミルクぼだぼた。
『処刑場』 母。
『あと少し』 妹ちゃん。
『あ。あはは〜笑?』 私。
15年前に私が、スコップでお父さんを殺して、
和歌山刑務所からセンターへ。
そこでロボトミー受けて、
刑期を終えて今日、帰宅した。
そうしたら、
妹ちゃんとお母さんは壊れていた。
ミルクで床はびしゃびしゃ。
………スコップをふたつ買いに行かなきゃ。
まったくもう。




