黎明
『困ったことになってしまった』
て、私は言った。
それを聞いた後輩のスズちゃん、
ニヤリとして、
『しまった事になってしまった? ッスね笑』
美術館で開催される、おたま展のスタートまではあと1時間。今回の最大の見どころである、
人類しじょう最高傑作のおたま
《黎明》
がまだ、現地の美術館からこの美術館に届かない。
どうして?
あはは。私の連絡が遅れたからです。
ね。困ったし、しまったでしょ?
『だりいッスねー』
スズちゃんは普通にタバコ吸い始めた。
ここ禁煙なんだけどな。
非常事態だからいいのかな?
『死ぬしかないのかなあ?首吊り。』
私は、やけくそになって、酒飲んだ。
『死ぬ時、見てていーッスか?』
なんて優しい子……スズちゃん。
———
『大変な事になってしまっておる』
『大変な事になってしまっておる。』
て、俺は言った。
あまりに大変なので、2度言った。
それを聞いた後輩のベルちゃん。
ニコリとして、
『2回おんなじ事言うの、もう流行んねえッスよ。ダセエッスよ。笑』
あと1時間で開催される、おたまの美術展。
そこに俺はおたま専門家としてゲストで呼ばれたのだけど、本当はおたまの事なんて全然知らない。どうして? あはは。
女遊びばっかしてたから。
『だりいッスねー』
ベルちゃんは、普通に覚醒剤をやり始めた。
それ? いいの? まあ、非常事態だからいいのか。
『切腹しようかなあ』
『それスマホで撮影していーッスか?』
俺の最期を看取ってくれるのか
……優しいベルちゃん。酒飲もっと。
テレビCM。
『人類しじょう最高傑作のおたまがついに見られちゃうよ。ろうにゃくなんにょ。来たまえ。
おたま展、その他にも100均のおたまとか、なんかまあ、そのへんもあるよ。来たまえ。あんた退屈してんのやろ?来たまえ。そうすると、人間としてのランキングが少し上がる気がする。夜明けはそこまで来ているぞ、人類の。来てね。』
———
うすらぼんやりと光をかがやく、
古めかしい銀色の曲り野郎、それは、
それこそが、じんるいしじょうさいこう傑作のおたま、《黎明》であった。本当だよ。
来場者は、目を輝かせ、まばたきを忘れ、
たまに失禁をして、おなかすいた。
それほどに、《黎明》は、美しいしてた。
本当だってば。
テレビの生放送。
『こちらが、れいめい。です。本当です。 』
テレビカメラの向こう、今回、美術館に来ることができなかったアホ共に向けて、お家からおたまをもってきたスズちゃんが案内を始める。くわえタバコ。
『いやあ。素晴らしい感じ。やべえって感じ』
とスズちゃんの隣でヘラヘラしてるのはベルちゃん。お薬で気持ちのいい気持ちの、ベルちゃんが、《黎明》の解説をはじめる。目は左右別々。
『これが……なんだっけ? れいめー?
れいめーです。ヤベっす。ちょいトイレ。』
おたま美術展は、大盛況ののち終わりました。
なにもかも、大成功でした。
その夜、スズちゃんは首吊りを見た。
その夜、ベルちゃんは切腹を見た。
明けない夜がある。
『やば。』
『やべ。』




