ただ冷たい
さらさらと、
綺麗なひらがなで雨ふってる。
雨雲。
冬だし。
夜だし。
アスファルトに水たまり。
ひどく冷たいし。
いつもみたいにぎゅうってしていた手を
いつもとは違う気持ちでゆっくりとほどいて、
全部、雨にびしょ濡れ。
シャツも靴もリュックもスカートも
前髪も、君の手のあたたかみも。
ぜんぶ。
びしょ濡れなんだよ。
バイバイ。
こんな時に、さようなら。では無くて、
バイバイなんていつもみたいに言う君。
映画みたいなバイバイのシーン。
こんなの、ずっとずっと忘れらんなくなるよ。
やだ。
僕は絶対に、こんな、
どこかで見た事のある綺麗でいて、
エモなあの感じに酔ったりしたくない。
失恋映画の全部こみこみ。みたいな。
雨、やんでくれないかな。
できるなら真夏の昼間のやばい太陽にしてほしい。酷暑。蝉の声。汗。
あたたかいをとおりこして。熱いね、だりいね、授業さぼろ。
って、今のシーンとは反対方向。
エモくなんかなりようがないはずで。
場所は、アスファルトじゃなくて、畑とかがいいのかも。エモしてる場合じゃないよ。
畑の作業をするんだよ。雑草を除去しなきゃ。
指先が氷みたいに冷たい。
雨が僕を冷凍しようとしてる。
目からじわる涙だけがぬるい。
ダメじゃん。
こんなの。
畑の作業の途中に、麦茶飲みたい。
暑いねえ。日焼けやだねえ。あはは。
土だらけ。髪の毛バサバサ。でも楽しいよう!
って笑いながら、これ終わったらさあ、一度お家に帰ってお風呂入って、それからオシャレをして、観覧車に乗りに行きたいな。
いつもみたいに。
チリドックを食べよう。ポップコーンを食べよう。そうして笑い合って、
手を……
手をつなごうね。
君と
雨は映画みたいに。
やっぱ冷たくて、
ただ冷たい。
さらさら。
今、君が、
僕に映画みたいな思い出をくれた。




