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不思議なお姉さん。3
『物語の主役がお前らだけだと思うなよ』
そう叫んで、
チワワが人を襲っているらしい。
マーケットで惨劇。
ザワザワ騒ぐ他のお客さん達。
僕は床に反射した天井の照明を数えるのをやめて、他の野次馬と一緒になって
マーケットの表に出てみた。悲鳴。
人がバラバラになっていて、
チワワがつぶらな瞳でぼんやりしていた。
『物語の主役がお前らだけだと思うなよ』
口周りを真っ赤に汚して、そんな顔をしていた。
暗闇の中を何の約束も無しにただ歩いてて
足元は細いワイヤー。
途中でイヤンなって止めちゃう人。
足元の頼りなさに気づかないでスキップする人。
みんなそんな物語の主役達。
……だと、今の今まで思っていたのに、
狂乱のチワワ。
『なんでお前らの人生を説明するための背景として俺たちが存在してると思ってんの?』
今、
それさえも、今、揺らいで崩れた。
はやくどうにかしなきゃ。
僕はブラらへと、走り出した。
血塗れのチワワは、僕を見ていた。
僕だっていつ不条理に解体されるか分からない。
日付も分からない。
だからこそ、
一刻を争う切迫した、気持ち。
夕暮れ。
恋心。
息を切らしながら
ブラらの前で、
ベランダがカラカラするのを待った。
蚊。
汗ばんだ身体。
蚊。
怖くて
切なくてどうしようもないよ。




