不思議なお姉さん 1
不思議なお姉さんとは、夏休みに出会った。
夏休みって、海や川やなんかで遊ぶでしょう?
僕は遊ばなかった。褒めて?
やりすぎな直射日光に殺意を抱きながら、
扇風機を見ていた。
平日の昼間は家に誰もいないから、
本を読んだり、漫画を読んだり、
スナッフフィルムを見たり、
ようするに何もせずに死んだふりしてた。
それでも世界は僕を日常へと巻き込んで、
普通にオツカイとかお買い物とかを
お願いしてくるので、その時は僕も死んだふりを少し休んで、マーケットにパプリカなんかを買いに行くのだけど、ごめんね。嘘ついちゃった。
スーパーに大根を買いに。
でも許してね?
僕、スーパーって言葉に納得していない。
わかる? この感じ。
あとは、ブラジャーとか。
なにひとつ可愛く無い。
こんなかわいいものを包む、
かわいい下着なのに、語感が硬い。
大嫌い。
不思議なお姉さんは、マーケットの帰り道にある
汚くて古いアパートの1階に住んでいて、
ベランダには、だらけたワンピースが揺れて、
その隙間にはブラらが干してあって、くたびれた感じが、とてもだらしなかった。
だからなんだか好きな雰囲気で、きっと部屋の中には青みがかったフィルムで撮られた映画みたいな時間があるのかな? 退屈なんかしない時間。
マーケットから帰るたびに、どんな人が住んでいるのかな?
知りたいな、って気持ちが大きくなっていた。
遠くに台風ができて、だけどそれは僕の住む街にはぜんぜん遠くて、朝から晴れて嫌だった。
その日は、サンポールとカビキラーを買いに行かされた帰りで、いつもみたいにブラらの前を通り過ぎようとした時、
カラカラ。ってベランダの窓が開く音がした。
ドキドキした。
痛いくらいに。
ベランダを見ながら、
バカみたいに突っ立っている僕を、お姉さんは、チラッとだけ見て、洗濯物をいくつか取り込んで、また部屋の中に戻っていった。
くわえタバコで、髪はスパゲッティで、
やる気のなさそうな目で、
くわえタバコで。
どんな服着てたっけ?
何歳ぐらいだっけ?
ああ。挨拶しといたほうが良かったかな?
夜は、お姉さんの事ばかりを考えて、
少し夜更かしした。
明日、
目が覚めたら、タバコを買いに行こう。




