君の声
名古屋でライブをした。
早い時間にホテルを出て、まだ異国みたいに眠る生活道路や細い道をお散歩。
ライブだよ。
ゲーン。ってギターの弦が鳴って、
ゲーン。ってベースの弦が鳴った。
シンバルはシャーン。
始まりの1曲目は、だいたいいつも緊張して間違うのだけど、今日はバレないくらいある程度は大丈夫だった。練習してて良かった。
『名古屋ー!』
叫ぶ歌うたい。
ぎゃー!! 叫ぶお客様。
『名古屋! 行くぞー!!』
叫ぶ歌うたい。
『ここはもうすでに名古屋ですよ?』
お客様のひとりが疑問を声にした。
『え? 』
『名古屋なんですよ。ここは。すでに。』
『あ。そーゆーんじゃなくて』
『嘘……ついたんですか?』
『ちがうよ。ええと? なんていうんだろ。
気持ち? 気持ちの問題ていうか。』
『理解したいです。』
『名古屋に来ているのはわかってるうえで、
それでもなお、行くぞーって言ったのはね、』
『はい。聞く耳をもっています。
私はファンです。大好きなのです。』
『ありがとう。』
『こちらこそありがとうです。』
『うふふ。バンドしてて、音楽してて良かった』
『大好きな人のことは100パーセント理解したいのです。それが見果てぬ夢だと言うことはもちろん理解しています。それでも諦めたくない。
大好きだから。大好きなのだから。』
『……なんか泣いちゃうよ。ありがとうねえ。』
『私の気持ち……声が届いて良かった。』
『うん。届いたよ。ありがとう。』
『引き続き、先ほどの名古屋問題を……』
『あ。そうだったね。あのね。さっきのはね、
これからもっとみんなと音楽で盛り上がって、
心が高い場所へ行くぞ。
一緒に爆発するぞ。
この破裂するような瞬間を始めるぞ。
もちろん比喩です。
いろんなものが行くぞー!
に圧縮されてる。そんな気持ちなんだよ。』
『完全に理解しました。泣いちゃいます。』
『良かった。僕の声も届いたんだね。』
『届きました。とてもとても』
『うふふ。これからもよろしくね』
『はい。もっともっと大好きになりました。』
どかーん。
ライブは、すんごく盛り上がり。
汗、音、光。熱。気持ち。
気持ちいいねえ。
言葉は完全ではない。
でも、それでも人は言葉を渡す。
気持ちを言葉に託して。
理解してほしいと願う。
理解したいと願う。
それって、とても
ラブだよ。
『それじゃ最後の曲だぜー!』
叫ぶ歌歌い。
ぎゅわーん。
叫ぶお客様。
『全部、燃やし尽くすぜー!』
気持ちを。
声を届けたい歌歌い。
『死にますよ?』
次の、声を———




