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赤と青のハルハル  作者: 高野 ぱら
第三章 鬼バケーション
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第三章1 暴力系ヒロイン

 朝日が降り注ぐ。人気のない廊下が明るく照らされる。ここ数週間は晴れの日が続いており、今日も今日とて空にはほとんど雲の姿がない。


 水で薄めたような水色の空が広がり、心なしか空気が綺麗に感じる。廊下の窓から見えるのは晴天の下で固まって走る運動部だ。常に腹の底から掛け声を発しており、健康的で健全な高校生の姿があった。


 別のほうに目を向けると水泳部が水しぶきを上げる。この暑い日をプールで過ごせるのは羨ましさを覚えるが、よく見てみればどの部員も息切れをしながらそれでも懸命に泳いでいる。夏ということもあり大会が近いのかもしれない。


 そんな部活動に精を出す生徒たちを眺めながら、俺は冷房の効いた部屋へと向かっている。だがそれは俺が怠けていることにはならない。冷房の部屋だろうとそこで行われるのは部活動だ。その活動が運動部とは性質の異なるものなだけであって、夏休みにわざわざ部活をしに学校へ来る俺もまた、立派な健康的で健全な高校生なのである。


 もっとも、俺の部活動…正確には同好会の扱いであるお助けクラブの今日の活動内容はそんなに誇れるものではない。いつもは学校の雑用や地域のボランティアをしているので誇ることのできる活動なのだが、今から執り行われるのは来週のバカンスに関する打ち合わせである。


 先月の終わりに生徒会役員である奈良 千秋という先輩から依頼を受けた。その内容は檻ヶ島という離島でリゾートの仕事を手伝ってほしいというものである。報酬として旅費もバイト代も出るので、これはお助けクラブとしての活動というよりかは各個人がリゾートバイトに出向くという話に過ぎない気がする。


 まあそれでも檻ヶ島へと行くのはお助けクラブの三人と奈良先輩、あとは鬼野 恋という後輩だ。今から行われるのはそのバイト内容の説明だ。もっとも概要は既に奈良先輩から説明を受けているため、細かい部分の話をする場となるだろう。


 そうして夏休みなのに早起きをして、遥々学校へと辿り着いた。下駄箱から距離の離れた別棟の部室へと足を運ぶ。未だに憤怒の寵愛の代償である筋肉痛が消えないので歩く速度は遅い。ノロノロといった効果音が俺から出ている気がする。


「先輩、なんでいるの?」


 曲がり角に差し掛かったところで急に声を掛けられる。突然発せられた声に驚き俺の肩はビクッと震えた。


「びっくりした…。お前はいつもぬるっと現れるな」


 俺は話しかけてきた相手に言葉を返す。その相手というのは黒木 まこという東浜高校の一年生だ。吸い込まれるような黒髪のおかっぱ頭が可愛らしく、そのご尊顔もかなり整っている。しかし特徴的なのは可愛いと称される目鼻立ちではなく、小学生かと間違えるほど小さな背丈だ。俺の友人の伊吹や加藤も背丈は小さいほうだが、その彼女たちよりもさらに小さい。


「酷い…。先輩の索敵能力が低いだけなのに」


「索敵って…お前敵なの?」


 若干ワードチョイスがおかしい彼女にツッコミを入れつつ、その姿を観察する。俺もそうだが、彼女の服装は制服だ。窓から見える運動部たちのような涼し気な服装ではない。今は夏休みなので生徒がここにいるということは部活動だろう。把握していなかったが、彼女はどこかの部活動に所属したのかもしれない。


「敵じゃないよ。私は先輩の唯一の味方だよ。索敵って表現は間違えたね。先輩が鈍いって言いたかっただけなの」


「お前は絶対に俺の唯一の味方とかじゃないよ。味方は目上の先輩に鈍いなんて言わねえよ」


 失礼な物言いをする後輩を見下ろしながら睨む。そもそも彼女が近くにいることに気付かなかったのは身長が低いからだ。視界に入らなかった。


「目上の先輩だなんて…先輩は自己評価が高いんだね。いいと思う。私は根拠のない自信を持つことには肯定派の人間だよ」


「前々から思ってたけど、お前って遠回しに俺を馬鹿にするよな」


 そんな俺の反応を見て、普段は表情の変化が乏しい彼女は薄く微笑んだ。髪型といい、白い肌といい、小柄な体型といい、日本人形感があって少しだけ不気味さを覚える。不気味さを感じるのは彼女の瞳もだ。

 彼女の瞳は奈良先輩のようなハイライトの入っていない死んだ魚の目ではない。ハイライトの入った綺麗な瞳だ。それなのにその瞳からは感情を全くと言っていいほど窺えないミステリアスさがあった。


「馬鹿になんてしてないよ。先輩こそ、私に対して何か失礼なこと考えてない?」


 可愛らしい女の子が首を傾げるポーズを取っているのに俺の心にはヒヤッとした感覚が生まれる。異様に勘が鋭いのも彼女の特徴の一つだ。


「おいおい、俺が可愛い後輩に対して失礼なことを考えるわけないだろ?」


「可愛い後輩だなんて照れるな。今ので好感度が一上がったよ」


 スマートに嘘をついた俺の言葉を信じてくれたらしく、彼女は笑みを含めながら返答した。彼女の喋り方は非常に静かだ。年下なのに俺の周りの奴らよりも落ち着いた印象を受ける。声の大きい速川やヒューマとは大違いだ。


「ちなみに今の俺の好感度はどれくらいなんだ?」


「ゼロだよ」


「じゃあ今加点されるまでマイナスだったのかよ!?」


 後輩からの好感度を知ってショックを受けた俺は大声で反応してしまった。速川やヒューマに対して声がうるせえなとか内心思ってたけど、俺も結構うるさいな。

 それにしても黒木からの効果度がマイナスだったのはショックだ。仮にも四月に彼女の悩みを解決するために協力した仲なんだが。


「冗談だよ。先輩は私の悩みに寄り添ってくれたからね。九十くらいの好感度があったよ。でも今大きい声を向けられて怖かったから好感度四十くらいになっちゃった」


「減点デカ!?」


「あ、また大きい声出したから好感度ゼロになっちゃった」


 結局はゼロになっちゃったじゃねえかよ。クソ、どうにか好感度を稼げないものか。


「黒木、身長伸びたんじゃないか?」


 俺は思ってもいないことを口にする。嘘の一つで好感度が稼げるなら安いものだ。


「え、わかる?さすが先輩お目が高い。入学から一ミリも伸びたの。あと九ミリ伸びて、かつ四捨五入すれば大台に乗れるの」


 珍しく嬉しそうな声で答える後輩を可愛らしく思いながら、身長って四捨五入したらダメじゃね?とも同時に思う。今の発言からして彼女の身長が百四十四センチメートルであることがわかった。


「まあ、これから成長期が訪れてどんどん伸びてくだろう。来年には四捨五入せずとも大台に乗れているさ」


 そんなことにはならないだろうと思いつつ、俺は偽りの言葉で彼女に希望を与える。彼女は希望を得て、俺は彼女からの好感度を得る。Win-Winというやつだ。


「まさか先輩がこんなにも良い人だったなんて。今ので好感度が百になったよ」


 彼女のそんな返答を聞き俺は密かにガッツポーズをした。後輩の好感度を稼ぐなんてチョロいものである。


「あと九百の好感度を稼がれたら、先輩への好感度が満点になっちゃう」


「お前の好感度って千点満点かよ!?じゃあ百点の状態は大して慕われてねえな!」


 衝撃に事実を明かされた俺はまたも大きな声でツッコんでしまった。また彼女から好感度を減点されたことだろう。


「そんな、落ち込まないで。先輩は私の中の好きな人ランキングトップ百に入ってるから」


「トップ百ってそんなに凄くなくない?…まあ、それでも今まで出会った人が何千何万といる中でトップ百入りしてるなら光栄なのかな」


「あ、ごめん。このランキングは東浜高校の生徒の中でのランキングなの」


「じゃあ俺最下位くらいじゃねえか!?お前まだ入学して四ヶ月だろ?」


 この四ヶ月で彼女がどれほどの数の生徒と関わったのかわからないが、まともに会話した人数が百人に届いているかも怪しい。


「早計だよ、先輩。トップ百は何も百位とは限らないよ。百人の中でも上位の可能性はあるんだよ」


「そ、そうか。確かに早計だった。それで俺は何位なんだ?」


「ところで先輩は何で夏休みなのに学校にいるの?」


「おい、露骨に話を逸らすな。何位なのか言え。…まさか最下位なのか?最下位なのか!?」


 俺は問い詰めるが、黙秘を始めた彼女は最後まで口を割らなかった。俺はランキングの順位を聞くことを諦め、彼女からの質問に答えることにする。


「お助けクラブの活動の一環だ。こうして夏休みも駆り出される羽目になってるんだよ」


「先輩も忙しいんだね。私もせっかくの夏休みなのに毎日のように学校に来てるよ」


「そうだったんだな。黒木っていつの間に部活に入ったんだ?何の部活?」


「へ?私は部活じゃないよ。赤点取ったから補習だよ」


「補習かよ!?頭良さそうな見た目してるのにな」


 落ち着いた雰囲気の彼女は頭が良さそうだが、実際はそうでもなかったようだ。


「頭良さそうは余計だよ。実際に頭良いんだよ」


「いや、自分で赤点取ったって言ってたじゃん。その反論は無理があるよ」


「あー、先輩も学力イコール頭の良さだと思ってるタイプだ。先輩のことは買ってたんだけど、私は残念だよ」


「それ馬鹿が言う理論だからな」


 彼女は己の学力の無さを微塵も恥じていないご様子だ。どこからそんな自信が湧いているのだろうか。まさか、これが根拠のない自信の肯定派である理由か。


「それじゃあ、私は選ばれし優等生だから特別授業を受けに行ってくるね」


「それ補習って言うんだぞ。あとたぶんお前は劣等生だぞ」


 そして黒木 まこは小さい歩幅で教室のほうへと歩いていく。俺も別棟へと向かおうとしたその時、彼女がこちらを振り返り言葉を発した。


「そういえばまた先輩の予言を見たの。不服ながら」


「不服は余計だ。聞きたくないが、どんな予言だ?」


 黒木 まこは予言の寵愛を授かっている。予言を聞くのではなく、見ることができるらしい。正確には夢を見るような感覚で断片的な未来が見えるとのことだ。それは予知夢では?と思わなくもないが、彼女自身が予言の寵愛と命名したのでそれに則っている。



「この夏休み、先輩は鬼を助ける」



 感情の籠っていない声で、無表情な彼女は呟いた。相変わらず、何を考えているのかわからない瞳だった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「遅いわよ!!!」


 部室の扉を開き、開口一番に発せられた言葉だった。その音域は高く、結構特徴的な声だ。故に耳にキンキンと響く。


「おいおい、集合時間は八時半だろ?」


 安武が十時からバドミントン部の指導役として練習に参加するらしく、早めの開始時刻だった。安武は別にバドミントンの選手でもなんでもないのだが。


「今何時だと思ってんのよ!!!」


 甲高い声が耳に響き苛立ちを感じながら俺は時計を見る。


「八時三十一分。間に合ってるじゃないか」


「一分遅刻してるじゃない!!!何?私のこと舐めてんの?」


 ヤンキーみたいな表情と口調で俺を責め立てるのはアイスブルーの髪色をした女子生徒だ。鬼野 恋。東浜高校の一年生で、背丈が俺と同じくらいある長身である。


「鬼野さん、落ち着いて。一分と言えど悪びれる素振りのない司君のことが腹立たしい気持ちはわかるけど、もう少し優しく言ってあげよう」


 そう言うのはお助けクラブの部長である速川 日和だ。パステルグリーンの重ための前髪の下にはくりくりした目が付いており、非常に可愛らしい外見をしている。


「そうだ!もっと優しく言え!」


「司君は遅刻したんだからもっと反省しなさい。あ、でも、あの司君が夏休みなのに一分遅刻で済んでるのは偉いよ。頑張ったね」


 調子に乗った俺に速川が注意をするが、その後にお褒めの言葉が続く。我ながら甘やかされ過ぎていて危機感を覚えてきた。


「はあ!?何を甘っちょろいこと言ってんの?大体私は赤頭のことも緑頭のことも認めてないんだから!!千秋、こいつら全員クビよ!」


 怒りが収まらない鬼野は席に座る奈良先輩のほうを見て訴える。赤頭呼ばわりされた俺は奈良先輩が返事をする前に口を開いた。


「おい、目上の先輩に向かって赤頭とはなんだ。あと速川のことを緑頭を言ったな。撤回しろ」


「どこに目上の先輩がいるのよ!自己評価が高すぎるんじゃない?」


 それさっき黒木にも言われたな…。まあ、俺の上からものを言うような態度がよくなかったのは確かだが、ここまで敵意を向けられると反撃したくなるのが男の性だ。


「いいから速川を緑頭って言ったことを撤回しろと言ってるんだ」


「ッ!うっさいわね!まずは赤頭が遅刻してきたことを謝りなさいよ!」


 俺たちの口論は続く。その光景は小学生の喧嘩と変わらない。俺が遅刻したのは確かだし、まずは謝ることを選択する。これが大人の対応というやつである。


「一分遅刻してきたのは悪かった。これでいいだろ?」


「はぁ?その悪かったという言葉が謝罪のつもり?ちゃんと申し訳ございませんでしたって言いなさいよ!ガキじゃないんだから!」


 このクソガキが。先輩に対しての礼儀を知らないらしい。だがここで意地を張っても話が進まないだけだ。俺は怒りを必死に抑えながら頭を下げた。


「もうしわけございませんでした」


「フンッ!最初からそう言えばいいのよ!」


 腰に手を当てて鬼野は俺を見下すようなポーズを取った。なんて生意気な後輩なんだ。黒木が可愛く見えてくるぜ。


「俺は謝ったんだ。次はお前が緑頭呼びしたことを速川に謝れ」


 当の速川は自身が口論の火種になってしまったからかあたふたしている。言い争いなどを嫌う速川には申し訳ないが、こういうのは最初が肝心だ。生意気な後輩に序列というものを叩き込まなければ。


「別に謝らないわよ!あんたは撤回しろと言っただけで謝れなんて言ってなかったじゃない!後から条件を付け足さないでもらえる!そいつを緑頭呼びしたことは撤回してあげるわ!はい、これでいいでしょ!」


「このクソガキがぁ」


 俺のフラストレーションは最大まで溜まり、今にでも拳骨を食らわせたい気分だ。


「それと俺のことを赤頭呼びしたことの撤回がまだだぞ」


「赤頭呼びを撤回しろなんて一言も言ってなかったじゃない!」


「はあ?言ってただろ?」


「言ってないわ!アンタが撤回しろと言ったのは緑頭呼びしたことだけよ!記憶力もないのね!」


 ああ言えばこう言う女に俺のはらわたは煮えくり返るが、緑頭呼びしたことは撤回させられたので一旦良しとしよう。これ以上、この女と口論しても何も生まれない。


「はぁ、はいはい、わかったよ。俺は寛大な心を持ってるからな。どんな呼び方をされたところで何とも思わん。好きに呼べばいいさ」


「フン!だったら最初からそう言いなさいよ!この赤頭が!」 


「まあ、一緒にリゾート地へと行くんだ。仲良くしようぜ、水色頭」


「はぁぁぁ!?お前マジでムカつく!!!」


「おいおい、自分が言われたら怒るのか?幼稚が過ぎるぜ」


 煽られたら煽り返す。これが柏木家の家訓だ。…いや、俺の両親はそんなことしないし、煽り返す性格なのは俺と姉だけなんだけどな。


 そうして俺が勝ち誇った顔で席へ向かおうとすると、水色頭がこちらまで歩いてくる。背丈が同じくらいのため目線が並ぶ。なんだ、謝る気にでもなったのか。


「死ね!!!」


 そう言って彼女の長い脚から全力の蹴りが放たれる。蹴りは俺の脛に命中し、一瞬にして痛みの信号が脳まで駆け上がる。


「痛ってぇぇぇぇぇ!」


 俺は悲痛の叫びを上げながら床を転げ回る。


「何すんだこの野郎!…って、ちょっと待」


 俺は蹴られたことに対する怒りの言葉をぶつけようとしたが、顔を上げた瞬間に恐ろしい光景を見た。俺の顔面に向かって二発目の蹴りが迫ってきていたのだ。そのままギリギリ目で追える速さの蹴りが俺の鼻先へと吸い込まれる。その瞬間、


「はい、そこまで」


「ストップだ、恋」


 俺の顔面と彼女の右足との間に手が差し込まれていた。その手は鬼野の足をキャッチしている。手の主は安武だ。そのまま視線を上げて鬼野のほうを見ると、俺から引き剥がすように奈良先輩が彼女を羽交い絞めしている。


「ッ!アンタたち!退きなさいよ!!!」


 彼女は獣のような顔で男三人を睨み、せっかくの美人を台無しにしていた。


「司君、大丈夫?」


 速川がそう言って俺の下へと駆け寄る。俺を心配する彼女の優しい声が教室内に響いた。


「ああ、おかげさまで大丈夫だ。…はぁ、おい、水色頭」


「なによ?蹴られたいの?」


「とりあえず落ち着け。もともとは俺が遅刻したのがきっかけだ。それについては本当に悪かった。…申し訳なかった。もう遅刻しないと約束する。だからお前も約束してくれ。もう暴力はなしだ」


 俺は真剣な口調で彼女に説く。先程までは小学生同士の喧嘩同然だったが、俺の態度が変わったことで構図は子供に説教する大人になった。そのことで鬼野はバツの悪そうな表情になる。


「柏木 司の言う通りだ。暴力はよくない」


 鬼野を羽交い絞めした状態で奈良先輩もそう注意する。

 実際、誰彼構わず暴力を振られたら堪ったものではない。矛先が俺や安武ならまだいいが、速川なんかに向けられた日には怒りを抑えられなくなる自信がある。


「ッ、わかったわよ!その代わり次に赤頭が遅刻してきたらその顔面ぶん殴ってやるんだから!」


 声を荒げながら彼女は暴力を振るわないことを約束する。これで今後俺が遅刻をすることは許されなくなってしまったが仕方がない。まあ、遅刻ってもともとしちゃ駄目なことだからな。


「恋…お前本当にわかってるのか?」


 奈良先輩が呆れたような口調でそう確認するが、彼女はプイっと顔を背けて会話を拒否してる状態だ。


 パンッ、パンッ、と手を叩く音がした。その音を発生させたのを安武だ。彼はこの一連のやり取りを見て、なおも涼しい顔のまま口を開く。


「それでは気を取り直して、檻ヶ島での活動内容について話をしましょうか」


 そうして最悪な空気のまま打ち合わせが始まる。


「はぁ、どうしてこうも上手くいかないんだ…」


 奈良先輩が小さな声でそう呟いた。その呟きは雲一つない水色の空へと吸い込まれていく。その空の色と鬼野 恋の髪色が同じだということに気付き、俺は空を嫌いになりそうだった。

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