第二章22 七不思議のゴースト
「はっはっは、面白い推理だ。つかたんは小説家にでもなったほうがいい」
そう言っておちゃらけた返事をするのは虹川 飛雄馬だ。
「ふざけたリアクションしてんじゃねえよ」
せっかくのシリアスムードが一転、彼の陽気な反応で茶番のようになる。
「いやー、生きてるうちに一度は言ってみたいセリフだったもんで。まさか死んでから言える機会に巡り合えるとは思わなかった」
「そんなセリフを言うのは殺人事件を起こした奴だけだ。善良なる小市民であった虹川先輩が言ってんじゃねえよ」
へらへらと笑った顔に戻った彼は、センター分けにセットされた金髪をかき上げる。鼻が高く海外のモデルのような顔つきの彼がそういう仕草をするとセクシーさが生まれる。
「虹川先輩だなんて距離を感じる呼び方はよしておくれよ。今まで通りヒューマっちと呼んでくれ」
「そんな呼び方をした覚えはねえよ」
くだらない会話が繰り広げられる中で俺は悲しみを覚えていた。速川と友達になった。後日、加藤とも友達になりたいと思っている。そしてヒューマも友達になりたいと思える一人だった。しかし、彼は既に亡くなっており、目の前で愉快そうに笑うのは亡霊だ。
「まあ、俺の正体に気付いたということはバッサーに聞いたんだな」
バッサーという聞き慣れない単語が出てきて疑問符を浮かべる。
「君の姉だよ。柏木 翼。親しみを込めてバッサー」
「あの恐ろしい姉をそんな風に呼ぶ奴に初めて出会ったよ」
俺の表情は若干青ざめる。協会員で姉よりも確実に年上の人たちでも敬称を付けて呼ぶほど、姉は恐れられているのだ。それなのに彼は当然のようにバッサー呼びをした。
「それでバッサーからはどこまで聞いたんだい?」
「たぶん全部。虹川 飛雄馬が東浜高校の地縛霊となった経緯まで全て聞いた」
「ふむふむ、話が早いね。まあ、正確には地縛霊じゃないんだが、東浜高校の敷地内でしか活動できないのだから、その表現も間違っていないか」
彼は飄々とした様子で語る。正体が判明した今も目の前の青年が幽霊だとはとても思えなかった。
「せっかくだし聞かせてくれないか?バッサーが俺のことをどういう風に紹介したのかを。できればバッサーの口調に寄せてくれると嬉しい。弟である君を通して久しぶりに親友を感じたい」
「気持ち悪いこと言ってんじゃねえよ。あんな姉に口調は寄せないが、姉の話した内容に嘘偽りがないか確認するためにも話してやる」
そして俺は思い出す。数時間前に帰省してきた姉と交わしたやり取りを。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「東浜高校の七不思議を作ったのは私の友人だ」
姉は語る。きめ細かい白肌に紫色の長髪が組み合わさり、いつ見ても姉の姿はそこらの一般人とは異なる雰囲気を放つ。
「そうだな。私の昔話から始めよう。昔話なんて言うと私がババアみたいに聞こえてよくないね。なに、ほんの数年前の話さ」
意気揚々と姉が語り出す。饒舌なのはいつものことだ。
「今から四年前、私は東浜高校に入学した。私は誰よりも優秀だったからね、チヤホヤされたものだよ。成績優秀、スポーツ万能、そして何より人の上に立つ存在さ」
「ああ、誤解しないでおくれ。私は何も独裁政治を行っていたわけじゃない。確かに教師も生徒も上手く操り学校を掌握していた自負はあるが、それも全て高校生活という青春に彩りを与えるためさ」
「そんな私には愚弟と違って多くの友人がいたが、そのほとんどが私にへりくだるような態度でね。え?気分は良かったよ。凡人なのに反抗的な態度を取る愚弟のような人間ほど憐れみを抱く存在はいないからね。そうして私はへりくだる教師や友人に囲まれて青春を送っていたんだが、そんな私にへりくだることをしない人間が現れた」
「勘違いするなよ。そいつらはお前のように無能な愚か者ではない。私には遠く及ばずとも、有能で面白い奴らだった。一人は女子生徒で名前は宇龍 愛。もう一人は男子生徒で名前は虹川 飛雄馬」
「そう、虹川というのは東浜高校七不思議六つ目、事故で亡くなっちゃった虹川さんだ。ん?ヒューマってまさかだって?珍しく察しがいいじゃないか。そう、虹川 飛雄馬とお前の言っているヒューマは同一人物だよ」
「そんなに質問攻めにするなよ。まずは話を聞き給え。そうやって目先の疑問ばかりを優先してしまうのはお前がいつまでも愚かな証だね。姉として恥ずかしいよ」
「まあ、語ればシリーズ化できそうなくらいの物語を愛と飛雄馬と私の三人で送ってきたんだが、今回は長くなるので割愛しよう。なに、そんなに悪いことはやってないさ。悪の組織のアジトを爆破させたときも上手く揉み消した。え?今の話が気になるって?そんなエピソードトークをしていたらキリがないよ。今知りたいのは飛雄馬が七不思議になった経緯だろ。まったく、すぐに脱線して目的を見失うのは愚弟の億ある欠点の一つだね」
「色々あって悪友二人と親交を深めていった私だが、とある厄介ごとに巻き込まれてね。寵愛現象?違うよ。寵愛現象が出てくるのはその後の話さ。その厄介ごとは解決したんだが、その末に飛雄馬が交通事故にあった」
「色々な不幸が重なってね。車とコンクリートの壁に挟まれて死亡さ。事故現場は東浜高校の近くだ。今でもあそこには事故注意の看板が設置されている」
姉の表情が曇った。豪胆な姉がこんな表情をすることは滅多にない。
「奇跡というべきか、不幸というべきか、そこで新たな事件が起こった。飛雄馬の死を拒んだ宇龍 愛がタブーを犯したんだ」
「宇龍 愛が力を使用し、虹川 飛雄馬を東浜高校の亡霊として縛った」
「寵愛現象かって?ああ、寵愛現象だ。だがお前が考えているものとは違うよ。お前は今どんな寵愛現象によって飛雄馬が幽霊になったと考えている?」
そう問われて俺は答える。それはすぐに思いついた内容だ。
「その宇龍 愛って人が寵愛を授かり、ヒューマを幽霊に変えたんだろ?」
「不正解。寵愛を授かったのは飛雄馬だ。だが、通常の寵愛現象と異なるのはここからだ。飛雄馬は強制的に寵愛を授けられたんだ」
俺は理解に苦しむ。寵愛現象とはどれも強制的に授けられるものだ。悩みに対して斜め上からのアプローチで解決させるために勝手に授けられる力だ。
「ま、これはわからなくても仕方がない。寵愛現象についておさらいしよう。寵愛の力を授かる人間にはとても強い苦悩がある。その強い苦悩を解決してあげようと慈悲深い寵愛者様が迷惑極まりない力を授けるわけだ」
「だが、飛雄馬には悩みなんてなかったんだ。己が死ぬその瞬間も、人生に対してそれなりに満足していたんだ。あまつさえこれまでの人生で関わってきた人たちへの感謝を思っていたくらいだ」
「そう。死が間近に迫っている状況でも飛雄馬は寵愛現象が授けられる程の強い苦悩を持ち合わせていなかったんだ。しかし、飛雄馬の存在が消えてしまうことを恐れた愛は彼に寵愛の力を授けたんだ」
「ん?どういうことか理解が追い付いていないという顔だね。ハハ、単純な話だよ」
「宇龍 愛は寵愛者だったんだ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
姉から告げられた衝撃の真実に俺の理解は今もなお追いつかない。
寵愛者。吸血鬼や悪魔が存在する世界で、それらよりも規格外の能力を持ち、世界で最も危険な存在と言われるナニカ。寵愛者を神と崇める者もいれば、怪異として見る者もいる。実体はないとも言われており、一番近いのは精霊なのではないかとも言われていた。
そんな寵愛者の正体は宇龍 愛という女子高生だと姉は言う。以前、寵愛者は行方不明と説明されたことはあった。そのときも寵愛者に実体があるのか知らなかったし、そこまでの興味もなかったため気にしていなかった。しかし、真実を明かされた今、行方不明という情報の意味合いも変わってくる。
「その宇龍 愛って奴は何者なんだ…?」
「何者って…言っただろ?寵愛者だ。伊吹ちゃんに龍の寵愛を授け、お前に憤怒の寵愛を授けた張本人様だ」
頭の整理が追い付かないままに考えもしていなかった情報が入ってくる。
「その宇龍って人が、、行方不明ってことか…?」
「ああ、そうだ。奴は飛雄馬に寵愛の力を授けた後、姿を消した。私もそれ以来会っていない」
表情は変わっていないのに姉の瞳に怒りが宿っているように見えた。
「えっと、色々と理解が追い付いてなくて何から聞けばいいのかわからないんだが…ヒューマは結局、既に死んでいて、お化けとして東浜高校に存在しているってことなのか?」
七月初旬に出会い、二日前まで当たり前のように会話していたヒューマがお化けでしたなんて未だに受け止められず、俺は姉に確認する。
「その通りだ。具体的にどんな寵愛を授かったのかは知らないが、生徒の目撃情報を照らし合わせたところ、飛雄馬と特長の一致する存在が確認された」
姉の言い方に違和感を覚える。生徒の目撃情報を照らし合わせた、その言葉はまるで姉はヒューマを見ていないみたいじゃないか。
「ひゅ、ヒューマがお化けだったとして、東浜高校に化けて出てたんだろ?なら俺がヒューマと会って普通に話したみたいに、姉貴もヒューマと会話してるんじゃないのか?」
俺がそう発言した瞬間、姉が機嫌を悪くしたのがわかった。いつも飄々としていて心情を表に出さない姉とは思えないほど、露骨な反応だった。
「飛雄馬が無くなったのは高校二年生の二月だ。そして学生名簿に存在せず、飛雄馬と同じ特徴を持った生徒が東浜高校にいると気付いたのは高校三年生の五月末。私はコネクションが広いからね。新入生との交流も多かった。そんな新入生たちから凄いイケメンの先輩がいるけど知っているかと聞かれたんだ。そのイケメンの特徴が飛雄馬と一致していた。あのときばかりは流石の私も困惑したものさ。飛雄馬は死に、愛は消息不明となり、学校生活が退屈になったと思ったら私には見えない飛雄馬の存在を知る羽目になる」
姉の口調には苛立ちが含まれる。続く言葉からも苛立ちの色は消えない。
「私は調べた。徹底的に調べた。飛雄馬と同じ特徴を持つ男子生徒を見なかったかと、全校生徒に聞いて教師にも聞いて、総務の方々や警備員の方にまで聞いた。その結果、目撃情報は二十一件。その全てが新入生の証言だった」
「つまり…ヒューマのことを知らない人間にしか、彼の存在は確認できない」
姉は俺にその美しい横顔を見せたまま、瞳だけをぎょろりとこちらに向けた。
「そして今月、私は友人から肝試し大会の準備に携わっているという話を聞いた。そして、そのメンバーの中には飛雄馬と同じ特徴を持ち、西山 飛雄馬を名乗る男子生徒がいることを知った」
肝試し大会の話を姉に伝えた友人というのが誰のことかはわからない。口を挟んで聞こうかと思ったが、圧を放ち話を続ける姉に対してそれをする気は起らなかった。鳳凰先輩たちの学年が一年生のとき姉は三年生だ。姉の言う友人というのも三年生で肝試し大会の準備に関わった誰かだろう。まさか鳳凰先輩ではないと思うが。
「だから今この話をお前にしているんだよ。愚弟、命令だ。今から東浜高校に行き、飛雄馬に会ってこい。そして飛雄馬についての情報を収集しろ」
姉から強引な命令を下される。姉が好き勝手に命令してくるのはいつものことだが、いつもの俺を使って遊ぶための命令ではない。それはおそらく寵愛現象管理協会としての仕事の一環であり、姉の私情による命令でもある。
「…はぁ、わかったよ。俺もヒューマと話したいと思ってたところだ」
いつもなら姉の命令に対してギリギリまで抵抗するのだが、今回については俺もヒューマから直接話を聞きたいためすぐに了承した。
そして俺は支度をし、東浜高校へと向かった。先日の事件で多少の被害が出た校舎が復旧されているかを確認しながら校内を回る。もちろん一番の目的は校内にいるであろうヒューマを探し出すことだ。
そうして体育館もグラウンドも広場も見て回り、各教室に視線を巡らせていく。ヒューマの姿は確認できなかった。生徒会室にも音楽室にも彼はいない。別棟に辿り着き、お助けクラブの部室に入った俺はとある書類を取り出す。
この東浜高校の生徒名簿だ。肝試し大会の出欠確認用に印刷されたその用紙を、一年一組から三年八組の分まで余すことなく目を通す。そのどこにも彼自身が名乗った『西山 飛雄馬』の文字はなかった。
とうとう彼を見つけられないまま、別棟四階の一番隅にある空き教室へと辿り着く。俺は椅子に座る。見つからないのであればあちらから来てもらうしかない。加藤が七不思議の寵愛を発動している最中、ヒューマが言っていた言葉を思い出す。
『ラブマリンがどこにもいないんだ!この学校のどこにも!』
彼は加藤が姿を消したことを知っていた。そして数回のやり取りの後、家に帰ったのかもしれないと言った俺に対して彼はこう答えたのだ。
『いや、ラブマリンは帰っていない、、、まだ校内にいるはずなんだ…。なのに俺が見つけられないんだ!』
違和感を覚える発言だった。学校の敷地内にいないのであれば、敷地外にいると考えるのが普通である。加藤がまだ敷地内にいる根拠を尋ねたところ、
『、、、下駄箱にまだ靴があった。それにラブマリンのお化け役の衣装は裸足で、スリッパを脱いでたんだ。さっきそのスリッパも見つけた。流石に裸足で帰らないだろ?』
と彼は答えた。そのときは俺もその根拠で納得したし、今思い返しても根拠にはなり得る。だが、断定まではできない。それなのにあのときの彼は、加藤がまだ学校の敷地内にいると確信しているような様子だった。
『ラブマリンは東浜高校のどこかにいるはずなんだ。もしかしたら俺じゃ見つけられないのかもしれない。でもつかたんなら、、、柏木 司ならできるんじゃないかって』
力強い彼の視線を思い出す。彼はなぜ加藤が東浜高校にいると決めつけていたのか、なぜ自分では見つけられなくても俺だったら見つけられるかもしれないと言ったのか。
この疑問について、俺の推測はこうだ。
東浜高校の地縛霊である彼は、東浜高校の敷地内に足を踏み入れている存在を知る力がある。そして加藤がまだ敷地内にいることを知っていた。
しかし、あのときの加藤の身にはイレギュラーが起きていた。加藤はあのとき透明人間になっていた。校内の人間を把握できるヒューマの寵愛の能力と、姿を隠す加藤の寵愛の能力が衝突した。その結果、ヒューマは加藤が校内にいることは把握できるが、どこにいるかまではわからないという状況が出来上がった。
これらは推測に過ぎない。答え合わせは彼自身の口からしてもらうとしよう。
俺は別棟四階の空き教室で彼が来るのを待つ。俺の推論が正しければ、東浜高校のこの場所に俺がいることを彼はわかっているはずだ。
「わ、つかたんじゃん。こんなところで何してるの?」
思った通り、東浜高校のお化けは姿を現した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「つかたんの推測は正解だよ」
俺がヒューマの秘密を知った経緯を話し終え、彼の能力にも言及したところでそんな回答が返ってきた。
「俺は東浜高校のどこに誰がいるのかを把握できる。肝試しの夜、ラブマリンが東浜高校の敷地内にいることはわかるのに、どこにいるのかがわからなかった。それに」
そう言ってヒューマは立ち上がり、突如として姿を消した。
「こんな風に学校の敷地内なら瞬間移動もできちゃうんだけど、その状態で血眼になって探してもラブマリンは見つからなかった」
後ろから声が聞こえる。振り返ってみればヒューマが窓際に立っており、そしてまた消える。
「だから正直かなり焦ってたんだよね。こんなことは初めてだったから、ラブマリンの身に何が起きているのかサッパリだった」
今度は正面から声がして、視線を戻すと椅子に腰掛ける彼の姿がある。
「そういえば聞いていなかったね。あのときラブマリンはどこにいたんだい?」
「何を白々しく言ってるんだか。瞬間移動ができるなら俺が加藤を見つけた瞬間もどこかから見てたんじゃないのか?」
「おー、鋭いねぇ。正確には見つけた瞬間じゃなくて、つかたんとラブマリンが話している最中に瞬間移動したんだけどね。さっきも言った通り校内のどこに誰がいるのかがわかるんだ。つかたんがラブマリンを見つけたことで、ラブマリンが中庭にいることがすぐにわかった」
どうやら俺と加藤が話すところは彼も見ていたらしい。それどころかドレスの女に俺が殺されるところも見ていたのだろう。
「あ?」
俺は素っ頓狂な声を上げた。彼が急に頭を下げたのだ。
「つかたん、本当にありがとう。ラブマリンを見つけてくれて、戦ってくれて、救ってくれて」
その声はあまりに誠実な音で、心からの感謝なのだと伝わってくる。
「それからすまなかった。つかたんが怪異に襲われてるとき助けてやれなくて。俺は物理的に干渉することが無理に等しいんだ」
「まあ、それはなんとなく予想してたよ。お化けだもんな。物理的に触れられるイメージはない」
そう言いながら俺は思い出す。俺は彼に触れたことがない。そんな男同士で触れ合うことなどないから気付くはずもなかったが、おそらく彼は物理的な干渉ができない。初めて加藤に出会ったとき、嘔吐する寸前の加藤を見たヒューマは俺にこう指示をした。
『つかたん!加藤を抱えてトイレにダッシュ!』
結果は間に合わずに加藤が俺の腕の中で嘔吐するという散々なものだったが、今にして思えば俺に加藤を抱えるよう指示する暇があったらヒューマがその役を担うべきだったのだ。しかし彼は担わなかった。担えなかった。
「俺はもう死んでいて、この世に存在しないお化けだからな。物理的な干渉はご法度なんだ」
彼はそう言ったが、俺は気になる点を思い浮かべて質問する。
「でもお前、肝試しの小道具作りとか加藤の吐瀉物処理とか一緒にやったじゃねえか。何か条件でもあるのか?」
「それについては、俺以外の誰かがやったことにできればいいんだ。仮に俺が小道具を作ったとしても、俺以外が作ったことにできればいい。そうすれば誰も作っていない小道具が世界に存在するという歪みが生じない。ラブマリンの吐瀉物お掃除もこの世界では全部つかたんがやったことになってるよ」
「…なるほど?なんとなくわかったが、お前が物理的干渉をしていないって判断は誰がしてるんだ?」
「世界だ」
彼が即答する。あまりに堂々と答えられて納得しそうになるが、その答えでは意味がわからない。
「世界?…世界?いや、わかんねえぞ」
「そう言われても俺もこれ以上の説明はできない。世界って人がいるわけじゃない。重要なのはこの世界に歪みを生じさせないことだ。例えば誰も作っていない小道具が存在している、とかな。だから実は小道具作りを結構サボってたんだぜ。俺が作った小道具は皆で大量生産するようなものだけだ。それなら他の誰かが作ったと誤魔化しが利くからな」
いまいち理解に至ることができないが、彼にこれ以上言及しても結果は変わらなさそうなので、俺は次の疑問を投げかける。
「物理的な干渉ができないって言ってけど、加藤の肩を叩いてたよな。お前がだいじょーぶって叫んでたとき」
イベントの増員スタッフに作業内容をレクチャーしたときのことだ。緊張している加藤に彼はすぐ後ろから大声でだいじょーぶと言いながら加藤の肩を強く叩いていた。
「正確に言うと俺は物理的に触れられないわけじゃないんだ。触れられるけど世界に歪みを生じさせてはいけない。肩を叩く程度は問題ない。でももしそれでラブマリンの肩の骨が折れたりしたら、何も起きていないのに急に肩の骨が折れたという歪みが生じ、大変なことになる」
「大変なことって?」
「まあ、まず俺は消えるだろうな。歪みを生み出した罪で世界から抹消される。それとその歪みを有耶無耶にするために天変地異が起きる。仮にあの場でラブマリンの肩を叩くではなく、彼女を抱きかかえたとしよう。そうすると彼女は何もないところで宙に浮いたことになる。そのありえない事象を有耶無耶にするために、ラブマリンが宙に浮いた事実を知る者たちを抹消するための災害が起きる。地盤が崩れるとか、雷が落ちるとか、隕石が降ってくるとか、そういう災害で目撃者全員が死ぬことになる」
なかなかに信じ難い内容である。しかし彼が言うことが本当である場合、それはかなり危険性を孕んだものだ。
「怖っ…お前絶対余計なことするなよ。やろうと思えば簡単に東浜高校にいる人間を全滅させれるじゃねえか」
「そうならないように注意してるさ。万が一、誰かが宙に浮いたラブマリンをSNSで拡散したら世界規模の大災害が起きるかもだし」
「お前の存在って、もしかしてかなりの爆弾だったりする?」
「起爆させないように気を付けてね。ま、といっても世界の歪みに対して言い訳を用意できれば災害は回避できるんだろうけどね。宙に浮いたのはマジックでしたーとか、SNSに拡散された映像はAI生成でしたーとか」
それを聞いて少しだけ安心する。ないとは思うが、万が一に彼が世界に歪みを生じさせたら全力で誤魔化そう。
「というかそんな爆弾が生徒の前にポンポン姿を現すなよ。お前、今回のイベント関連で何人の生徒に認知されたんだ?」
どれくらいの内容までが世界の歪みに該当するのかわからない以上、ヒューマの存在を認知する者がいることはリスクにつながる。
「そんなに心配しなくても数人だよ。俺の姿を見える相手はこっちで決めることができる。だからお助けクラブの三人とラブマリン、あとはななちとリンリン以外には基本的に姿を見せてない。生徒会の子らには最低限かな」
「…え?そうなのか?でもお前、加藤が増員スタッフに説明するとき堂々と大声出して肩叩いてたじゃん」
「いや、あのとき俺の姿が見えていたのはラブマリンとつかたんの二人だけだよ」
衝撃の事実を告げられ唖然とする。言われてみれば「だいじょーぶ!!!!!」と急に大声を出したとき、周りの生徒の反応が薄かった気がする。あれは急に大声を出したヒューマにドン引きしていたのではなく、ただ見えても聞こえてもいなかっただけなのか。
「で、でも生徒会との打ち合わせにお前も参加してただろ?」
「ちなみにつかたんは生徒会室での打ち合わせのときに俺を何回見た?」
逆に質問を返されて記憶を辿る。言われてみれば確かにイベントの言い出しっぺにしては出席頻度が少なかった気がする。だがゼロではない。
「それでも三、四回くらいはその場にいただろ」
「打ち合わせのときに俺が何かを発言している記憶は?」
そう問われて思い出そうとするが該当の記憶は見つからなかった。こちらについても言われてみればいつも元気で喧しい彼が打ち合わせ時はやたらと静かだった気がする。
「もしかして打ち合わせのときも生徒会の連中には見えてなかったのか…?」
「ピンポーン!まあ、必要なときにだけ特定の生徒会役員から見えるようにはしてたけどね。その人も俺のことは増員スタッフの一人くらいに思ってたはずだよ」
明るく答え合わせをする彼に複雑な感情を籠めた視線を向ける。この視線には驚きや恐怖、納得や呆れなど様々なものが混ざっている。俺と生徒会連中で見えていた光景が違っていたという事実はまさしく化かされた気分だ。
カチッと時計の針が動く音が教室に響いた。時刻を見れば丁度十七時になったところだ。外はまだ明るい。
「ちなみに加藤はヒューマの正体に気付いてたってことで合ってるよな?」
俺は確認する。確信はないが、状況証拠から見て彼女は『事故で亡くなっちゃった虹川さん』がヒューマだと気付いているはずだ。
「その通りだよ。よく気付いたね」
「さっきも少し話したが、東浜高校の七不思議が具現化されたあの夜、二つの怪異は確認できなかった。老婆は林間学校に現れるという条件が付いているから具現化されていなくても説明がつくが、事故で亡くなっちゃった虹川さんのほうは説明がつかない」
「さっきは聞きそびれたけど、やはり七不思議を具現化してたのはラブマリンなんだね」
彼は声のトーンを落としてそう言った。あの夜の状況証拠やここまでの会話の内容的に加藤が事件の元凶だと察していたようだが、確信したのは今らしい。気に掛けていた女の子が人を傷つける怪異を生み出した元凶だとわかり、彼の表情に悲しみのような感情が宿る。
「その通りだ。でも安心しろ。加藤が授かった七不思議の寵愛は既に消失している。力を授かるに至った望みを加藤は手放したからな」
危険な寵愛現象を発動させ、寵愛現象管理協会に記憶を消してもらう。そんな望みを加藤は手放し、七不思議の寵愛は消失した。
「…そうか。察するにそれはつかたんのおかげかな。感謝するよ、ありがとう」
そう言って彼は頭を下げるが、加藤は寵愛を手放すことができたのは彼女自身の決断だ。俺の手柄ではない。
「話を戻すが、七不思議の寵愛で虹川さんが具現化されなかったのは、具現化せずとも既に存在していると加藤が知っていたからだ。つまり、ヒューマの正体が虹川さんであることを加藤は知っていた」
それを聞いたヒューマはフッと微笑んで、思い出を懐かしむように語り出した。
「去年の十二月くらいかな。半年くらい掛けてようやくラブマリンと談笑できるようになってね。正体を明かすことにしたんだ。実は俺はお化けだぞーって」
窓の外に視線を向けた彼は話を続ける。お化けのはずの彼をオレンジ色の夕日が美しく照らす。美男のその姿には神々しさを感じる。
「正体を明かしたい理由があった。ラブマリンはモジモジしてて言い出さなかったけど、私たちって友達だよねって俺に聞きたそうにしてたんだ。あの子は友達を欲してたからな。でも、俺は友達になれない」
どことなく寂しそうに見える彼の表情は、世の女性が見ればトキメキで心を震わせるのではないだろうか。そう思えるほどに美しい。
「つかたんみたいに友達がいらないんじゃない。友達になりたくないわけでもない。友達になれない」
「…なぜ?」
俺は質問する。これはきっと彼の旧友だった姉にも関係することだ。
「バッサーから宇龍 愛のことも聞いたと言っていたね。宇龍 愛、彼女は寵愛者ご本人だ。寵愛者という存在について、世界はルールを設けている。寵愛者とは日本の悩み苦しむ人間に力を授ける存在だ。そういうルールがあるんだ」
夕日を吸収したのかと思う程に煌めいていた彼の瞳に影が落ちる。
「彼女はそのルールを犯した。苦しむ程の悩みを抱えていない俺に力を授けたんだ。世界が寵愛者とはこういう存在だと定めた内容と相反する行動をした。世界の理に逆らった」
俺は黙って話を聞くが、正直理解には苦しむ。力を授ける能力を有する寵愛者がそれを私情で使っただけだ。それがどれほど悪いことなのかわからない。
「だから彼女は世界から罰を受けたんだ。職権乱用をした者に罰が与えられるのと同じさ。罰の内容は二つ。一つは宇龍 愛の存在をこの世から消すこと。もう一つはお化けになった虹川 飛雄馬に友達とは会えないというルールを作ること」
その罰の内容を聞いて、姉が話していた内容に解が得られた。
「姉貴はお化けになったお前と一度も会えていないと言っていた。にも拘らず新入生は虹川 飛雄馬と特徴の合致する人物を目撃できていた」
俺は内容を整理するように話すと、続きをヒューマが語る。
「バッサーが俺と会えなかったのも、当時の二三年生が俺を認識することができなかったのも、俺の友達だったからだ。俺は話したくても友達と接触することができなかったんだ」
「なるほどって言いたいところだけど、姉貴は当時の二三年生は誰一人としてヒューマを目撃していなかったって言ってたぞ。友達じゃない奴らの前に姿を現すことはできたんじゃないのか?」
「いや、俺は全員と友達だったから」
俺は唖然とする。一体どんな生き方をしていれば二学年の五百名近くと友達になれるのか。
「ま、俺がラブマリンと友達になれない理由はわかってもらえたかな?」
ある意味で本日一番の驚きに開いた口を塞がないままでいると、陽気な雰囲気を纏い直した彼がそう言った。
「俺と友達になったら会うことができなくなる。でもラブマリンは友達になりたそうにしている。だから俺はお化けであり、友達にはなれないことを彼女に話すことにしたんだ」
加藤がヒューマの秘密を知ることになった理由は明らかになった。
「ということは俺もヒューマとは友達になれないのか」
敢えて冗談を言うような口調で俺は呟いた。
「え!?まさかつかたんが俺と友達になりたがっている!?クソォ…!こんな珍しい機会を逃さなければならないなんて!」
わざとらしく彼はリアクションする。実際のところ、俺はヒューマとも友達になりたいと考えていたのでそれが叶わないことは残念だ。
「ちなみに友達の判定って何?もしかしてあんまり仲良くし過ぎると急にヒューマと会えなくなったりする?」
「いや、そんなことはない。友達の判定は俺の主観だ。どう見ても友達のひよりんを友達と認めないつかたんと同じ理論だ。俺が友達じゃないと言い張ればどんなに仲良くても会えなくなったりはしない」
例えに自分が使われてなんだか居心地が悪い。昨日、俺が速川と友達になったことを知らない彼は非難の視線をこちらに向けているような気がした。
「それなら姉貴のことも友達じゃないと言い張って会ってやればいいんじゃないか?お前のことを話しているときの顔が寂しそうに見えたぞ。姉貴のあんな顔を見るのは初めてだから、弟としては気味が悪かった」
「まじか。あのバッサーが寂しそうな顔をするなんて信じられん。なんというか、俺の死でバッサーが寂しがっていたと思うと嬉しいな」
不謹慎な発言をする彼に呆れなつつ、友人の前でも寂しそうな様子を見せてこなかった姉にも呆れる。
「だがバッサーと友達じゃないと言い張ることはできん!と言うのも一度でも友達認定してしまった相手とはもう会えないんだ。だから今さらバッサーとの友情を否定しても意味はない。それに、嘘でも友達じゃないなんて言いたくないしな」
コロコロと表情を変えながら大きい声で話す彼は、最後の言葉だけ愛情とでも言うべき感情が籠められている気がした。
「それと俺の姿を見せれる相手は東浜高校に在籍している生徒だけなんだ。だから友達じゃなくても卒業生や先生たちには俺の姿は見えない」
「そうか。まあ、姉貴にはそう伝えておくよ」
姉貴には「俺はヒューマと会えるけどお前は会えないんだな」とマウントを取ってやろう。…そんなことしたら殺されそうだな。
「ま、俺の秘密はこんなもんだな。他に聞いておきたいことはあるか?なんでも答えてやるぞ」
「いや、一旦は聞きたいことは聞けたかな。また何か疑問を思いついたら聞きに来るよ」
「ああ、そうしてくれ!お化けって結構暇なんだ!」
堂々と胸を張ってそう言い放つ彼に呆れの眼差しを向けていると、彼の表情が真剣なものに変わった。
「何度も言うが、改めて言わせてくれ。あの夜、ラブマリンのために全力を尽くしてくれてありがとう」
彼がお辞儀をする。誠心誠意という言葉がぴったりの所作だった。
「どういたしまして。だが問題と向き合ったのは加藤自身だ。今度会ったら褒めておいてやってくれ」
「フッ、そうするよ。あんまり褒め過ぎるとすぐ調子に乗るから塩梅は気を付けないとな」
笑いながらそう言った彼に対して俺も歯を見せて笑ってしまう。俺も彼もすっかり加藤の保護者みたいになっている。
「それからもう一つ」
彼は再び真剣な声音に戻して発言する。
「リンリン、伊吹 凛のことも感謝してる。つかたんがいて本当によかった」
そう言ってまた見ていて気持ちの良い綺麗なお辞儀を見せる彼だが、俺にはハテナマークが浮かぶ。
「え?伊吹?なんで伊吹なんだ?」
「お化けとなった俺の存在理由は東浜高校の生徒に青春を楽しんでもらうことだ。だから青春を楽しめていないラブマリンに声を掛けた。そしてラブマリンの他にも青春を楽しんでいなさそうな生徒が二人いた。つかたんとリンリンだよ」
失礼なことを思われているなと怪訝になりかけるが、事実なので否定はできない。
「でも俺は声を掛けるか決め切れなかったんだ。ラブマリンと違って一年生のときの二人は青春を楽しむことなんて全く求めていなかったから。俺は迷った結果、二人はそれでいいと判断した。青春を楽しめなくても本人たちがそれでいいなら俺が無理に介入すべきではないと思ったんだ」
彼は言葉を続ける。気付けば遠くから聞こえていた運動部の掛け声が聞こえなくなっている。
「そのうちつかたんは晴間っちやななちと仲良くし始めたから俺が介入する理由は完全に無くなった。リンリンは一人でも割と快適そうに学校生活を送ってたからそれほど心配してなかったんだけど、四月中旬くらいから彼女の表情は曇り始めた」
伊吹の表情が曇り始めた理由はよく知っている。阿賀 華蓮という女子生徒によって伊吹 凛への干渉を妨げる不干渉の寵愛が発動されたことがきっかけだ。
「リンリンに助けが必要だと思い、俺は初めて彼女の前に姿を現した。ラブマリンにそうしたように、仲良くなって彼女の憂鬱を少しでも晴らしてあげたいと思ったんだ。…でも、姿を現した俺の姿を彼女は認識できなかったんだ」
「え?どういうことだ?東浜高校に在籍している生徒でヒューマの姿が見えないのは、お前が友達だと判定した相手だけじゃないのか?」
「そのはずなんだけど、そのときはリンリンに対してだけ俺の姿を認識させることができなかった。試しに他の生徒の前に現れて手を振ったり会釈したりしてみたんだけど、そのときはその生徒たちに認識されていた」
俺は新たに出てきた謎に首を傾げる。
「まあ、六月になってリンリンが久しぶりに登校してきたときには姿を認識してもらえたんだけどね。遠くから手を振ってみたらめっちゃ怪訝な顔をされた」
そう言いながら彼は笑う。その話を聞いて俺の頭には一つの推測が浮かび上がった。
「ヒューマ、お前二年何組だったんだ?」
「え?どうしたの急に。二年六組だったけど」
その答えを聞いて線がつながった。不干渉の寵愛はあの時点では二年六組を対象に発動されていた。もう数年前ではあるが、当時二年六組だったヒューマにまで力の影響が及んでいたのではないだろうか。
しかし、そうなると疑問もある。不干渉の寵愛は伊吹に対する思考を阻害するようなものだ。ヒューマの話だと、彼自身は伊吹と関わろうとする意志を持てていた。
もしかしたらこれも寵愛現象のバグのようなものかもしれない。今は二年六組ではないが、死亡時は二年六組であり、そのままお化けになった彼は中途半端に条件を満たした。その結果、伊吹のことを思考はできるが、伊吹からは彼を認識させないという形で不干渉の寵愛の目的を果たさせたのではないだろうか。伊吹 凛を孤立させ苦しめるという目的を。
「つかたん、おーい、何かわかったのかい?」
考え事に夢中になった俺にヒューマが声を掛ける。
「いや、何でもない。何はともあれ、今の伊吹は元気だし、ヒューマも伊吹に認識されるようになったからよかったという話だな」
俺は推測した内容を語らなかった。あくまで推測の域を出ない話であるし、今はもう解決したことだ。
「そうだな。これからは皆で青春を楽しもー!」
彼は元気一杯に拳を天へと掲げた。その生命力に溢れる姿はとてもお化けとは思えない。
「ああ、そうしよう。加藤の奴も世界一幸せに生きようとしてるみたいだ。それにはヒューマ、お前の存在が必要だ」
そう返事した俺に対して、彼はおちゃらけた口調でこう聞いてくる。
「お化けでもかい?」
「お化けだからこそだろ。お化けと送る青春なんて楽しいに決まってる。世界一幸せになれるくらいにな」
俺は笑って答えた。彼も笑っている。二人して笑う男を西日が照らし続けていた。
「それじゃあ俺は帰るよ。夏休みもお助けクラブの活動でちょいちょい学校に来るから、暇だったら俺の前に出てきてくれ」
「ああ、そうさせてもらうよ」
そう答える彼のほうを振り返らずに、俺は空き教室から去っていく。空き教室と廊下の狭間を跨ぐと、微かに風が吹いた気がした。明かりの灯っていない廊下は薄暗く、それでも隙間からオレンジ色の強い光が差し込まれる。
初めて加藤に会った日、ヒューマも含めて三人で吐瀉物の掃除をする羽目になったあの日も、廊下は同じくらいの明暗を生み出していた。たったの三週間前が酷く懐かしい。
懐かしさを覚えながら廊下を歩いていく俺の後ろには、この学校の七不思議が立っていて、俺の姿を見ていることだろう。俺は振り返ったりしない。今生の別れでもなんでもないのだ。またすぐに会える。
これからの高校生活に刻まれていくであろう虹川 飛雄馬との青春に思いを馳せながら、俺は東浜高校の外へと帰っていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
赤髪の男子高生が廊下を歩く。そんな後ろ姿を虹川 飛雄馬は見つめていた。見つめて、頬を緩める。
東浜高校の七不思議において唯一の実在するお化け。事故で亡くなっちゃった虹川さん。
そんな彼は、死してなお、これから送られるであろう青春に思いを馳せた。
七不思議のゴーストは、青春に思いを馳せて、微笑んだ。




