第040話:慰安旅行と海のゴミ掃除
1.未曾有の特大ボーナスと、慰安旅行の決行
王都を襲った「複合魔力嵐」と、地下下水道での大事故。
安全基準を無視したエリート魔法騎士団の傲慢が引き起こした大災害を、芝崎一郎と白銀のパッカー車は完璧な現場力で制圧してみせた。
そして後日、騎士団の年間予算の10倍という、国家予算すら揺るがす莫大な「救助代行費用および残業代」が、ギルドを通じて芝崎清掃の口座へとキッチリと振り込まれたのである。
「……よし。これだけ利益が出たなら、経費で落としても文句は言われねぇな」
マイホーム兼巨大スーパー銭湯「芝崎湯」の広場で、一郎は分厚い札束の入った麻袋を前に、メガホンを片手に高らかに宣言した。
「いいか、お前ら! 先日の災害復旧、本当によくやってくれた! 莫大な特別ボーナスが出たからな、今日は事業所を臨時休業にして、全員で海へ「社員旅行(慰安旅行)」に行くぞ!」
「「「うおおおおおっ!! 現場監督殿、万歳っ!!」」」
ドワーフの職人たちや孤児の少年レオたちが、割れんばかりの歓声を上げる。
奴隷として泥水をすすってきた彼らにとって、「海への旅行」など貴族にしか許されない夢のまた夢であった。
「一郎さまぁっ! 慰安旅行ですって!? もちろん、夜の『特別な慰安(ご奉仕)』は、この副マスターのわたくしにお任せくださいねっ!」
「泥棒猫は引っ込んでなさいな! 王族が所有する最高級のプライベートビーチを手配しましたのよ! 一郎様との熱いバカンスは、わたくしがいただきますわ!」
「お二人とも不純です! 私は第一助手として、一郎様の『日焼け止め』から『オイルマッサージ』まで、神聖なる儀式として隅々まで……っ!」
セリア、エレノア、リリィの三人のヒロインたちは、すでに頭の中で「海辺での過激なラブコメ展開」を限界突破させ、激しいキャットファイトを繰り広げていた。
「お前ら、海だからって羽目を外しすぎるなよ! 水難事故(労災)には絶対気をつけるんだぞ! よし、全員車に乗れ!」
一郎の号令とともに、従業員たちは第二形態への進化で四次元拡張されたパッカー車の「キャンピングカー部分」へと次々と乗り込んでいく。
絶対防音と極大サスペンションを備えた快適な巨大空間は、大人数の社員旅行すらも余裕で収容する最高の「走る福利厚生」であった。
神聖オートクルーズ(自動運転)を起動した白銀のパッカー車は、抜けるような青空の下、王都から海へと向かって意気揚々と爆走していく。
2.水着回(不可抗力のエロス)と、現場監督の紫外線対策
数時間後。
パッカー車が到着したのは、真っ白な砂浜と透き通るようなエメラルドグリーンの海が広がる、王家専用のプライベートビーチだった。
「ひゃっほーっ! 海だぁぁっ!」
レオたち子供が浮き輪を持って駆け出し、ドワーフの親方たちも「昼間から飲むビールは最高だぜ!」と早速バーベキューの準備を始めている。
「ふぅ……。やっぱり、たまの休日はいいもんだな」
パラソルの下で、アロハシャツにサングラス姿の一郎が、冷たい麦茶を飲みながらくつろいでいた。
そこへ、キャンピングカーでの着替えを終えた三人のヒロインたちが姿を現した。
「お待たせいたしました、一郎さま……」
一郎がサングラス越しに目を向けると、そこには男の理性を木端微塵に破壊する、極限の「水着シチュエーション」が広がっていた。
ギルド副マスターのセリアが身に纏っているのは、極小の面積しかない黒い「マイクロビキニ」だ。豊満な胸の谷間と腰骨が露わになり、少し動くだけでこぼれ落ちそうなほどの破壊力を放っている。
第二王女エレノアは、王家の気品を残しつつも腰元に深いスリットの入った真紅の「ハイレグ水着」。引き締まったウエストから伸びる長く美しい足のラインが、艶かしく強調されている。
そして特級聖女リリィは、純白のフリルがあしらわれた清楚なビキニ――のはずだったが、最近の発育が良すぎたのか、胸元も下半身も布地がパツンパツンに張り詰め、逆に最も扇情的なことになってしまっていた。
「い、一郎様……。その、似合いますか……?」
三人の極上美女が、顔を赤らめながら一郎の前に並び立つ。
「お、おう。……布地が少ねぇな。最近の流行りか?」
47歳の精神を持つ一郎は、目のやり場に困りながらも、どこか「娘の水着姿を見る父親」のようなズレた反応を返した。
「もうっ、一郎さまったら! 布地が少ないのは、こうして『直に』触れ合うためですわよ!」
セリアが大胆にも一郎の隣に座り込み、日焼け止めのオイルを自らの豊満な胸に塗りたくった。
「さあ、わたくしの背中にもオイルを塗っていただけますか? それとも……わたくしが、一郎さまの全身に、この胸で直接オイルを塗り込んで差し上げましょうか……?」
「わたくしも! 王家の極上オイルで、一郎様の逞しい筋肉を隅々まで……っ!」
「ズルいですわ! 第一助手の私が、一郎様の『奥深くまで』オイルを浸透させますっ!」
三人が一斉に一郎に覆い被さり、オイルで滑らかになった柔らかい素肌が、三十歳の男盛りの肉体に四方八方から押し付けられる。
むせ返るような甘い香水とココナッツオイルの匂いが混ざり合い、パラソルの下は完全に「密着ラブコメ空間」と化していた。
「おいバカ! 密着しすぎだ! 暑苦しいだろ!」
一郎はたまらず怒号を飛ばした。
「紫外線対策(日焼け止め)は現場の基本だが、そんなに擦りつけたら肌が荒れるぞ! それに、直射日光の下でそんなに肌を露出してたら、すぐに熱中症になる! ちゃんとラッシュガードを着て、こまめに水分補給をしろ!」
極限のお色気アピールを、またしても「純粋な健康管理と熱中症対策」として真っ向から説教で返す一郎。
「ああっ……! 灼熱の太陽の下でも、決して理性に流されず、私たちの肌の健康を第一に考えてくださるなんて……!」
「なんてストイックで、気高いお方なの……っ!」
完全に惚れ直したヒロインたちが頭から湯気を出している中、平穏なバカンスは続くかに思われた。
――しかし、その時だった。
3.海を汚す不法投棄(巨大クラーケンと幽霊船)
「ウッ……!? な、なんだこの臭いは!?」
「海から、ドブのような悪臭が……!」
バーベキューの肉を焼いていたドワーフたちや、海で遊んでいた子供たちが、一斉に鼻をつまんで顔をしかめた。
エメラルドグリーンだった美しい海が、突如として赤黒く濁り始め、吐き気を催すような有毒な瘴気が波打ち際に押し寄せてきたのだ。
「……チッ。どこの世界にも、休日の空気をぶち壊す『マナーの悪い同業者』がいるもんだな」
一郎はサングラスを外し、海のかなたを鋭く睨みつけた。
波に押し流されて浜辺に漂着したのは、全長数十メートルにも及ぶ、ドロドロに腐敗した「巨大クラーケンの死骸」だった。
さらにその背後には、呪いの瘴気を撒き散らしながら漂流する、ボロボロの「巨大な幽霊船」が連なっている。
「あ、あれは……隣国で討伐されたはずの深海魔獣の死骸と、呪われた海賊船!? なぜ王家のプライベートビーチに!?」
エレノアが青ざめて叫ぶ。
「決まってんだろ。デカすぎて処理に困った隣国の連中が、海流に乗せて他国の海へ『不法投棄』しやがったんだ」
一郎の目が、プロの現場監督としての氷のような冷たさを帯びた。
「せっかくの慰安旅行の海を、粗大ゴミと生ゴミの不法投棄で汚すとはな。……いい度胸だ。お前ら、水着の上にツナギを着ろ! 遊びは終わりだ!」
「「「はいっ!! 現場監督殿!!」」」
ヒロインたちは即座に水着の上から「芝崎清掃の蒼いツナギ」を羽織り、戦闘態勢へと移行した。
4.超高圧バキューム無双と、幽霊船のプレス処理
「相棒! 出番だ!」
一郎が声を上げると、駐車されていた白銀のパッカー車が、地鳴りのようなエンジン音を響かせて砂浜へと躍り出た。
「まずはあの腐った生ゴミ(クラーケン)と、海に溶け出したヘドロの回収だ! 有毒瘴気吸引フィルター、最大出力! 超高圧バキューム、起動!」
一郎がパッカー車の外部パネルを操作すると、車体側面から極太の魔導バキュームホースが射出され、クラーケンの死骸と赤黒く濁った海水を一気に捉えた。
ズギュゥゥゥゥゥゥンッ!!!!
空気を引き裂くような吸引音が響き渡る。
数千トンはあろうかという腐乱したクラーケンの肉片と、海に広がっていた有毒なヘドロが、竜巻のようにホースの中へと猛烈なスピードで吸い込まれていく。
「ギャアァァァッ……!」
クラーケンの死骸に寄生していたアンデッドや寄生虫たちも、なす術なくバキュームの負圧に巻き込まれ、パッカー車のホッパーへと消えていく。
「よし! 生ゴミの回収は完了だ。次はそのデカい木屑(幽霊船)の解体だぞ!」
一郎はホースを巻き取ると、腰から神器「解体用聖杖」を引き抜いた。
「お、お待ちください一郎様! あの幽霊船には、数百年分の海賊たちの怨念と呪いが結界となって張り巡らされております! 物理的な破壊は……!」
リリィが警告するが、三十歳の男盛りに若返った一郎の足は止まらない。
「船だろうが魔城だろうが、結局はただの『木と鉄のデカい塊』だ。粗大ゴミの解体は、結合部を狙うのが基本だ!」
一郎は海を蹴って跳躍し、幽霊船の甲板へと着地した。
呪いの結界が彼を弾き飛ばそうとするが、「芝崎清掃の蒼い作業服」の加護がそれを完全に無効化する。
「ここが重心の支点だな! オラァッ!!」
一郎はバールをフルスイングし、幽霊船のメインマストの根元、最も強固な魔導結合の隙間に正確無比にフックを叩き込んだ。
ガキィィィィンッッ!!!
テコの原理と異常な膂力が一点に集中し、船全体を覆っていた呪いの結界ごと、メインマストが飴細工のようにへし折られた。
それを皮切りに、船体のフレームが次々と連鎖的に崩壊していく。
「レオ! クレーンのワイヤーを掛けろ!」
「はいっ! 重心ヨシ! 巻き上げます!」
孤児のレオがパッカー車のクレーンアームを操り、崩壊した幽霊船の残骸を次々とホッパーへと放り込んでいく。
「相棒、プレス開始だ! 海のゴミは残さず持ち帰るぞ!」
一郎がコントロールパネルの赤いボタンを押すと、「次元圧殺結界」が起動した。
ブゥゥゥン! ギギギギギギ!
白銀のプレス板が、クラーケンの腐肉と幽霊船の残骸を、数百トンの油圧と神聖魔力で完全に圧殺し、分子レベルで浄化していく。
プシャァァァァッ!
エアブレーキの心地よい音が響き、パッカー車の排気口からミントの香りの風が吹き出した。
そして資源排出口からは、海の魔力を限界まで圧縮した「超高純度の水属性魔石」と、呪いが浄化されて最高級の建材となった「霊樹のインゴット」が、カランカランと吐き出された。
5.定時退社スローライフと、第七章の幕引き
作業開始からわずか数十分。
不法投棄によって赤黒く汚染されていた海は、パッカー車の浄化機能によって完全に濾過され、元のエメラルドグリーンよりもさらに美しく、神聖な輝きを放つ海へと戻っていた。
「す、すごい……! あの絶望的な海の汚れが、あっという間に消え去ってしまいましたわ……!」
エレノアが、透き通るような海面を見つめて感嘆の声を漏らす。
「よし! 不法投棄の回収完了だ! 海が綺麗になったからって、いきなり泳ぐなよ! 準備体操をしてから入るんだぞ!」
一郎がメガホンで注意を促すと、従業員たちから再び「うおおおおっ!」と歓声が上がり、彼らは美しい海へと飛び込んでいった。
「ふぅ。せっかくの休日に仕事(残業)になっちまったが、まあ、海が綺麗になったなら良しとするか」
一郎はパラソルの下に戻り、再びアロハシャツ姿で冷たい麦茶を喉に流し込んだ。
目の前では、ドワーフたちが焼く海鮮バーベキューの良い匂いが漂い、美しい海を背に、ツナギを脱いで水着姿に戻った三人のヒロインたちが、キャッキャと水を掛け合って遊んでいる。
「一郎さまぁ! バーベキューのイカ焼きが焼けましたわよ! わたくしが『あーん』して差し上げますわ!」
「ズルイですセリアさん! 私の焼いたホタテの方が美味しいですっ!」
「わたくしは、この王家のワインをお注ぎいたしますわ!」
極上の美女たちに囲まれ、美味い飯を食い、絶景の海を眺める。
これこそが、幾多のブラック企業を粉砕し、世界のインフラを守り抜いた男に与えられた、最高の「慰安」であった。
一郎は腕時計(魔法具)を確認し、夕日が沈みかける水平線を見つめて、満足げに笑った。
「今は17時。……よし、今日のバカンスも、これにて定時退社だ!」
最強のおっさん清掃員と白銀のパッカー車による、利益率100%のインフラ完全掌握ビジネス。
彼らの痛快でブレない定時退社スローライフは、海を越え、国境を越え、いつまでも果てしなく続いていくのであった。




