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異世界ダンジョンの最強清掃員~パッカー車で転生したおっさん、ゴミをプレスし国宝錬成!悪党は分別処理して極上温泉スローライフを満喫します~  作者: トール
第三章:規格外のマイホーム建設と、定時退社を阻む黒い影

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第013話:規格外のマイホーム建築と、定時退社を阻む黒い影

 


 1.常識外れの素材無双と、ドワーフの絶叫


 王都の貴族街の中心に位置する、元・呪われた洋館。

 地下の呪物や瘴気がリリィの『聖女の極大浄化』によって完全にクリーンナップされてから数日が経ち、広大な敷地は活気あふれる建設現場へと変貌していた。


「おい、親方! こっちの基礎工事終わったぞ!」

「よぉし、急ピッチで進めろ! 昼休憩には支給されたスタミナ弁当が待ってるからな!」


 完全二交代制、週休二日、そして破格のトリプル賃金。

 王都でも腕利きと評判のドワーフ建築団は、一郎が提示した「異次元の超ホワイト労働条件」に狂喜乱舞し、目を血走らせながら喜々としてハンマーを振るっていた。

 保護された奴隷の子供たちも、すっかり顔色を良くし、建設現場の隅で用意された温かいスープを飲みながら、楽しそうに職人たちの仕事を見学している。


 そんな現場の中央で、現場監督たる芝崎一郎は、ドワーフの親方を前に腕を組んでいた。

「親方。大浴場の図面は確認した。で、一番肝心な『浴槽』と『ボイラー(給湯設備)』の素材なんだがな」

 一郎はパッカー車の四次元収納ダッシュボードから、麻袋を二つ取り出して無造作に地面に置いた。


「浴槽の枠組みと底板には、水垢やカビが生えないように、この金属を打ち直して使ってくれ。それと、ボイラーの燃料にはこっちの石を組み込んでくれれば、半永久的に湯が沸くと思うんだが」

「ん? なんだい雇い主(旦那)、建材の持ち込みか? 俺たちドワーフの技術ならどんな硬い鉄でも……って、ふんぎゃあああぁぁぁっ!?」


 袋の中身を覗き込んだ親方の目玉が、文字通り飛び出さんばかりに見開かれた。

「だ、だだだ旦那ァッ!? これ、純度100%の『エルフの伝説級ミスリルインゴット』じゃねぇか! 国の宝物庫に眠ってるレベルの神代の金属だぞ!? これで『ただの風呂桶』を作れってのか!?」

「ああ。抗菌作用抜群で掃除が楽そうだからな」

「こっちの袋は……ひぃぃぃっ! こ、こ、国家予算級の『特大・超高純度魔石』がゴロゴロと!? こんなもん、王城の結界維持装置のコアに使われる代物だぞ!? これで『お湯を沸かす』ぅぅっ!?」


 親方は泡を吹いて白目を剥き、後ろにひっくり返りそうになった。

「なんだ、加工できないのか? ドワーフ随一の職人だって聞いてたんだが」

「だ、誰ができないって言った! ドワーフの魂に懸けて、世界一贅沢で、世界一神聖な『スーパー銭湯』を完璧に作り上げてみせるわい!」

 親方は涙目になりながらも職人魂を爆発させ、恐れ多くも伝説の素材を抱きかかえて現場へと走っていった。


 圧倒的な素材(ゴミから抽出した利益率100%の資源)を、単なる日用品のインフラ整備に使い潰す、常識外れのマイホーム建築無双。

 一郎にとっては「手持ちの余り物でのDIY」感覚だったが、現地人からすれば、神の御業としか思えない光景だった。



 2.専属アドバイザーと特級聖女の修羅場


「さすがは一郎さま! 規格外の財力と発想、わたくし、ますます痺れてしまいますぅ」


 背後から、ねっとりとした甘い声と共に、豊満な胸が2つ、一郎の腕にムニュッと押し当てられた。

 冒険者ギルドから「マイホーム建設の専属アドバイザー」という名目で出向し、毎日この現場に入り浸っている美形の受付嬢、セリアである。

 ギルドの制服の胸元を大胆にはだけさせ、フローラルな香水の匂いを漂わせながら、彼女は一郎に熱い視線を送っていた。


「現場の進捗も順調ですし、今夜はまた『翠明閣』の特別室をご用意しておりますわ。もちろん、今夜もわたくしが、一晩中みっちりとお背中を……いえ、全身の隅々まで『おもてなし』させていただきますね?」

 上目遣いで露骨に夜の接待(大人の関係)を匂わせるセリア。

 先日睦み合った情熱も冷めやらず、今日も既成事実を積み重ねて正妻の座を不動のものにしようという、打算と欲情にまみれた猛烈なアピールだ。


「おい、この泥棒猫! 現場の神聖な空気を、その破廉恥なフェロモンで汚さないでください!」


 そこへ、猛然と割って入ったのはリリィだった。

 彼女が身に纏うのは、一郎から支給された『芝崎清掃の蒼い作業服』をベースにしつつも、女神の奇跡によって純白と白銀の装飾が施された、この世界に一つしかない『特級聖女の法衣』である。

 その神々しい姿とは裏腹に、リリィは猫のようにシャーッと唸って、セリアを一郎から引き剥がした。


「一郎様の第一助手にして直属の聖女は、この私です! 今夜のお背中流し……お風呂でのお世話は、私が、私がご奉仕する手はずになっているんですからっ!」

「あらあら、田舎娘の聖女様。お背中を流すだなんて、お子様にはまだ早い大人の嗜みですわよ? あなたは大人しく、子供たちとスープでも飲んでいなさいな」

「なっ、なんとぉっ!?」


 バチバチと、二人の間に青白い火花が散る。

 肉食系の打算受付嬢と、妄想暴走気味の純情聖女。二人のヒロインによる、おっさん清掃員を巡る「夜のご奉仕権」の激しいキャットファイト(修羅場)は、もはやこの現場の日常風景となっていた。


「ははは。お前ら、本当に仲がいいな。現場の空気が明るくて、監督としては嬉しい限りだぜ」

 一郎は「若い娘同士がじゃれ合っている」と完全に勘違いし、暢気にコーヒー(に似た異世界の黒茶)を啜っていた。


「そうだった、リリィ。子供たちの名簿を作っておいてくれ。何か手伝いをさせないといけないな」


 3.腐敗神官と悪徳商人の暗躍


 その頃、王都の裏社会。

 表向きは真っ当な貿易商を装う『ガルシア商会』の豪奢な応接室で、二人の男がどす黒い密談を交わしていた。


 一人は、恰幅の良い商会主、ガルシア。

 そしてもう一人は、聖教会の高位神官――枢機卿の政敵であり、次期教皇の座を狙う大司教のザルバであった。


「――どこの馬の骨とも知れん田舎娘が、いきなり『特級聖女』だと? ふざけるな」

 ザルバは、忌々しげにワイングラスをテーブルに叩きつけた。

「女神の奇跡だと? 笑わせる。教皇猊下も枢機卿も、すっかりあの怪しげな男と小娘の幻術に騙されておるのだ。私の長年の根回しと権力基盤を脅かす目障りな輩め……必ず異端審問にかけて、火あぶりにしてくれる」


「ええ、大司教様のお怒りはごもっとも。我々としても、あの男の存在は看過できません」

 ガルシアが、葉巻の煙を吐き出しながら同調する。

「我々のシノギである不法投棄場(ダンジョン中層)が、たった一晩で謎の光によって浄化され、ゴミの不法投棄ビジネスが頓挫しました。あまつさえ、隠れ家にしていた呪われた館まで、あの『芝崎』と名乗る男に買い取られてしまった」


「しかも、貴様らが労働力として使っていたガキどもまで保護されたそうだな?」

「ええ。あの子供たちは、我が商会の所有物(奴隷)です。勝手に奪われたとなれば、商会のメンツに関わる。それに、あの館の地下には、まだ回収しきれていない裏帳簿と呪術具が眠っているはずなのです」


 二人の悪党は、邪悪な笑みを浮かべて頷き合った。

 利害は完全に一致している。

「よかろう。私が直属の『異端審問局』の私兵を動かそう。貴様も商会の荒くれ者を出せ」

「承知いたしました。あの生意気な清掃員を半殺しにして館を奪い返し、ガキどもは再び奴隷に。そしてあの小娘は『教会を騙る偽の聖女』として、大司教様に引き渡しましょう」


 善良な市民を食い物にする悪徳商人と、神の威を借りて私腹を肥やす腐敗神官。

  健全な労働環境を理不尽に踏みにじる「二大巨悪」が結託し、一郎たちの平和なスローライフ計画へと、その黒い毒牙を向けたのだった。



 4.定時退社を阻む者への宣戦布告


 夕刻。

 マイホームの建設現場は、夕日に赤く染まっていた。

「よし! 今日の作業はここまでだ! 道具を片付けて、各自手洗いとうがいを済ませろよ!」

 一郎の号令に、ドワーフたちが「お疲れ様でした!」と元気よく応える。今日も残業ゼロの、完璧な定時退社(17時)の時間が迫っていた。


 リリィとセリアも、いがみ合いを一時休戦し、子供たちに夕食の配膳の手伝いをさせている。

 誰もが、このホワイトで温かい職場の空気に癒やされていた。


 ――その平穏は、理不尽な暴力によって唐突に破られた。


『ドガァァァァンッ!!』

 現場を囲っていた仮設の木門が、強力な攻撃魔法によって吹き飛ばされたのだ。


「「「きゃああっ!?」」」

 土煙が舞う中、子供たちが悲鳴を上げてリリィの後ろに隠れる。

 ドワーフたちが慌ててハンマーを構える中、門を蹴破ってずかずかと足を踏み入れてきたのは、完全武装した数十人の荒くれ冒険者たちと、聖教会の異端審問官の黒い法衣を纏った兵士たちだった。


「なんだ、お前ら! 許可なく現場に入るな! ヘルメットも被ってねぇぞ!」

 一郎が前に出ると、集団の先頭に立っていたガルシア商会の幹部が、下劣な笑い声を上げた。


「ヘッ、お前が芝崎とかいう男か。勘違いするなよ、この館の所有権はまだ我々ガルシア商会にある! 契約の不備を理由に、即刻この土地を差し押さえさせてもらうぜ!」

 さらに、黒い法衣を着た異端審問局の隊長が、冷酷な声で告げる。

「大司教ザルバ様からの勅命である! そこにいるリリシャという小娘は、邪法を用いて特級聖女を騙った大罪人! 即刻、異端として連行する!」


「なっ……!? 私が、偽の聖女……!?」

 突然の理不尽な罪状に、リリィの顔から血の気が引いた。

 セリアも「ガ、ガルシア商会に、ザルバ大司教の私兵ですって!? 王都の裏と表のトップじゃない……!」と青ざめて後ずさる。


「そして、そこにいる奴隷のガキどもは、我々の正当な所有物だ! 逃げ出した罰として、たっぷりとムチを打ち込んでから、一生地下で働かせ……」


 男が子供たちに向かって鞭を振り上げようとした、その時だった。


「……おいおい」


 地を這うような、恐ろしく低く、冷たい声が響いた。

 それは、いつも職人たちに気さくに笑いかける一郎の声ではなかった。長年、マナー違反の不法投棄業者と対峙してきた、百戦練磨の「現場監督プロ」の凄みが、そこにはあった。


 一郎は、ゆっくりと腕に巻いた腕時計(に似た魔法具)に目を落とした。


「今は16時55分。あと5分で、今日の現場は終わりなんだよ」


 チッ、と一郎が舌打ちをする。

 その瞬間、彼から放たれた30歳の男盛りの覇気と、女神の極大加護による重圧が、物理的なプレッシャーとなって荒くれ者たちを押しつぶした。

「ヒッ……!?」

 鞭を振り上げた男が、その恐ろしい眼光に射すくめられ、思わず一歩後ずさる。


「俺はな、『子供を泣かせる奴』と『不法投棄をするクズ』、そして……『俺の定時退社(ホワイトな現場)を邪魔する奴』が、この世で一番大嫌いなんだ」


 一郎は、傍らのパッカー車の助手席から、あの神聖なる神器『解体用聖杖ただのバール』を静かに引き抜いた。


「てめぇらみたいな『産業廃棄物クズ』は、俺がまとめて分別処理プレスしてやる。残業代は請求させてもらうぞ」


 ピーーー、ピーーー、ピーーー……。

 呼応するように、白銀のパッカー車のエンジンが、地獄の底から響くような重低音の唸りを上げた。


 悪徳商人と腐敗神官。

 権力を振りかざし、善良な人々の平穏なスローライフを理不尽に踏みにじろうとした愚か者たち。

 彼らが、最強のおっさん清掃員とパッカー車の『圧倒的な暴力カウンター・ざまぁ』によって、絶望の底へと蹂躙される秒読みが、今、始まった。





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