8話。1433字。人生の分岐点。
暗い森の中。
ゴブリンに奇襲をかけ、逆にゴブリンに奇襲されて返り討ちにしてやる事10分。
いい加減に心も落ち着いてきた。
「パーティー追放されちゃったなぁ」
少し前、ザザ達パーティーメンバーとの最後の言葉が思い起こされる。
マチとゴルドは目を伏せて言った。
「「弱すぎるから」」
リーダーのザザは…………あれだ。
「聞いてるか?」と。
ザザもなんか、もうちょっと言ってたような。
聞いてなかった訳じゃないんだ。ほんとほんと。
イメージ上のザザが俺を睨んでいる。
思い出せるはずだよ、うん。
なんだったかな。
…………そうだ。
「俺らにかけ続けてるバフもさっさと解除しとけよ。もうパーティーは抜けるんだからよ」と。
仲間じゃなくなった以上バフを解かないと。
念じて、彼ら三人に分けていたステータスを元に戻す。
────スキル解除。
そんで。
────ステータスオープン。
【ステータス
最大魔力量 2200
攻撃力 1300
防御力 1600
素早さ 1500
器用さ 2000
スキル名────『レート4倍みたいなバフで最強目指しちゃう的なスキル』
】
この数値を4倍にし、3人に分けて付与していたが、それも今日が最後か。
ステータスの急な上下に慣れないからとずっと付与しっぱなしだった。
配ったバフを手元に戻すことも最近はなかったので、自分の500以上のステータスは新鮮に見える。
試してみよう。
魔力を少し外へ漏らし、ゴブリンを誘う。
すると暫くしないうちに5匹のゴブリンがやって来た。
「ギャギャ?」「グギャ」「グーギャ!」「ググギャ?」「グググギャア!!」
奇襲のつもりはないらしく5匹で周囲から現れたゴブリン達。
囲めば倒せると思っているらしいが、見当違いである。
剣に魔力を乗せて、くるりと横に1回転。
「えいや」
振るう刃から小さな斬撃が5つ飛び出すとゴブリンに襲い掛かった。
「「「「「ギャギャー!?」」」」」
悲鳴を上げゴブリン達はチリとなる。
さっきまで一匹ずつ処理していた魔物を一太刀に5匹、力押しで倒せた。
あれ、俺ってこんな強かったけ?
万全なステータスでの直接戦闘が久方ぶりだったせいか、ふと思う。
強ければパーティーに戻れる?
…………いや。俺のプライド以前に不可能だ。
俺のステータスはA級冒険者の上位。
ゴブリンが雑魚なのは当たり前。
今の俺ではs級の単騎性能には及ばない。
俺のパーティーでの役割はバッファーだった。
さらに言えばバフの後、俺のステータスが雑魚になってしまうのが大問題。
それにザザなら代わりの人材を見つけて明日に討伐があっても問題ない手筈をつけてから追放したはず。
つーか強くなったら出戻りなんてザザが認めるはずもない。
「切り替えよう」
気合を入れようと頬を叩く。
────今日は俺の人生の分岐点。
かつてのパーティーに戻ることはない。
S級冒険者パーティーを抜けた以上、ソロの冒険者ランクはパーティー以前のc級に戻るだろう。
やる事は決まった。
「s級冒険者を目指そう」
誰かを助けられる、そんな冒険者を目指して。
そうと決まれば、ゴブリンじゃ練習にもならないしもっと森の奥へ行こう。
…………うん。
「森の奥ってどっちだ?」
絶賛迷子中だった。
誰か助けてくれないかな。
そんな事を考えていると、女性の叫び声が聞こえた。
「誰か! 誰か助けて!」
奇しくも同じ心情。
声の方角へ慌てて駆けだす。
助けを求める女性の声が途切れる前にと夜の森を走る。
…………何だか思ったより人生の分岐点だった!
他人の人生の分岐点だった!
「間に合えぇぇ!!」
そうだ出口教えてもらおう。




