6話。1680字。上位種族の到来、脱走チャンス!
ステータスが元に戻った以上、父親へのバフは切れた。
おそらくバフの対象が死んだ場合、スキルは解除されステータスは俺に戻る。
ここで父親が死んだ可能性が出てくる。
「バフを盛ったA級冒険者の親父が、出かけて10分で死んだとは考えにくい」
そうだ、父親が言っていた。
バフの範囲が分からないと。
ゲームなんかじゃバフに時間制限があったが、なんとなくスキルには時間制限がなさそうだった。
まだ良く分からんが、俺起点でもおかしくはない。
まだバフの範囲外に親父が出た可能性もある訳だが。
うむむ。
戦場で急にバフが切れたってことか。
じゃあ…………死んだ?
どっちにしろ死んだのか?
「…………あ」
そういえばあの人、魔法使いだったわ。
流石に後衛で戦ってるだろうし生きてるか。
急にステータスが下がっても後衛の魔法使いなら大した影響もないはず。
「…………ん?」
魔法に影響のあるステータスは二種類あった。
【最大魔力量】と【器用さ】だ。
急に下がったら魔力コントロール出来なくなるんじゃないか?
少し前、村を囲うゴブリンを消し飛ばしたあの関光に見まがうエネルギーが制御できなくなると言う訳だ。
…………やっぱり父親は死んだかもしれない。
すると突然、ずっと怪訝な顔をして俺の頭を撫でていた村長が立ち上がった。
「なんじゃと!?」
いつの間にか来ていた一羽の鳥に手紙がくくられている。
手紙の内容に驚いているらしい。
何か書かれていたのか気になるが、今はそんな場合じゃない。
「皆の衆、ワシに注目!」
脱出チャンスだ!
村長が注目を集めている内にこっそり目線から外れていく。
俺のステータスが戻った以上は出来ることをしに行きたい。
忍び足で出口へ歩く。
ばれない、ばれない。行ける行ける。
「──どこ行くんじゃ?」
ばれた。
「……トイレに」
A級冒険者の父親が、俺のバフは強いと言った。
ならここで座ってるだけじゃダメなんだ。だから────。
「トイレならよし」
大丈夫だったわ。
ちょろい爺さんだったわ。孫に何でも買うタイプかな?
よし、戦線の少し後ろでバフを配るだけでも役に立てるはず。
「皆の衆、わしに再注目! なんと、S級冒険者が────!」
こっそりと、素早く家を出た。
村長の爺さんが何か言っていたが、今はそんな重要じゃないだろう。
建物の外に出て、体が固まる。
青年に声をかけられたのだ。
「どうした坊主」
表の見張りを失念していた。
村長はこれを分かっていたのだ。恐るべし策謀。
ああもう、どうすっかなぁ!?
「──トイレ」
「ついてってやるよ。すぐ済ませろよ?」
だめだった! この善人め!
「じゃあその辺でしてきちゃうよ!」
「うーん、目の届く範囲でだぞ?」
せめてもの抵抗で、子供の図体で走れば撒けそうな位置へ近寄る。
少しだが距離は取れた。
後はこのスカスカの路地でどうやって大人を撒くかだな。
田舎村は土地が余ってるせいで家の間が広い。
さてどうするか。
策はあるが、善人に使うのはなぁ。
「まだか~坊主~!」
「もうちょっと待って! すぐすむよ!」
もういいか。使っちまおう。
心の中でスキル発動を念じようとした、その時。
────ドンッッッ!!!!
打撃音が響いた。
おそらく西口の戦線から響いた、絶対的な暴力の音。
いや、絶対に西口だ。
西の空を見上げると、木が浮いてた。
浮遊魔法の軌道じゃない、あれは地上から打ち上げられたんだ。
「今のはなんだよ!?」
見張りの青年が叫ぶ。
木が放物線を描いて地面に落ち、また轟音。
振動が足を揺らした。
距離があってなお心臓を乱す恐ろしい物、魔物がいる。
強力な奴が西口にいる。
西口には俺の母親がいる。
青年が慌てて建物に入ろうとして、俺を見やる。
「おい坊主!」
「もうちょい!」
「すぐ戻れよ!?」
頷いて返すと、青年は「村長村長!!」と大慌てで建物に入っていく。
すぐ戻れなんて言われるまでもない。
ちょっと西口に行くだけで、すぐに戻るに決まってる。
「村長村長!! 西口方面に恐らくゴブリンの上位種族が────s級冒険者でないと────!!」
青年の声を背に走り出す。
目指すは西口。
母親を助けるために。
…………東口の父親はきっと生きてると信じよう。
メイビーメイビー。




