4話。1620字。ゴブ雑魚と規格外のバフ。
村の様子が徐々に見えてきた。
村の外周の家から黒煙が立ち上る。
木の燃える臭い。
キン、と村の剣士が振っただろう剣戟の音が響く。
強い魔力を感じた先で光が瞬く。
魔力の気配と共に爆発があちこちで発生していた。
「まずいな、こりゃ」
父親の呟きの先には、ゴブリンがいた。
村を覆うように緑が視界で蠢き、道を塞がれている。
かつて酔いながらA級にとってはゴブリンは雑魚だと語っていた父親が冷や汗を流していた。
数が多すぎるのだ。
視界に入るだけでも、ざっと300匹。
ここだけで、村の北側だけでもそれだけ。
完全に囲われているならゴブリンは数倍いるだろう。
「おそらく上位個体も複数いるだろうな」
数は力だ。複数の守護対象がばらけていたらまず守り切れない。
だからこそ村の中心への避難誘導が真っ先に求められる筈だ。
しかし、村がゴブリンに囲まれている訳ではそうもいかない。
「村の外から攻撃して数を減らす?」
「うんにゃ、村の戦力じゃ長い防衛線はちと厳しい」
「どうにか中に入る方法…………そうか、浮遊魔法なら?」
「下から魔法打たれて終わりだよ。だからここは強引に行こう!」
親父のゴブリンに右手を向ける。
突き出した手のひらに魔力がどんどんあつまっていく。
まさか。
「正面突破で道を作るつもり!? 親父は攻撃魔法が苦手なんじゃなかったの!?」
「前教えたよな、魔法の威力は何で決まるか」
「えっうん。【器用さ】で魔力を編み【魔力量】で威力を出す、でしょ」
「いいか、良く聞けよ?」
親父は手に見たことない量の魔力を集め、妙な事を言った。
「熟練のA級魔法使いの【器用さ】【魔力量】の平均ステータスは1000だ」
「え?」
何を言っているんだ?
ありえないだろう。
だって────たったそれだけで?
俺の【魔力量】は500だ。
もしかしたら成長しても1000には届かないかも知れない。
でも。
もしも。
スキル『レート4倍みたいなバフで最強目指しちゃう的なスキル』を使ったとしよう。
一時的に俺の【魔力量】がゼロになり、その4倍の【魔力量】2000を父親は使えるようになる。
【器用】は250だったので、4倍で1000。
俺のバフひとつでA級レベルの魔法が使えるってことじゃないか?
「元の【魔力量】も足し合わせれば────」
父親の手の先に集まった魔力が魔法へと変わって。
飛び切り強い光を放ち、ゴブリンの密集地帯へ扇状に解放されると、
「────こんな事も出来る」
辺りの音が消え、強烈な熱気が吹き荒れる。
熱気が収まると、村へ続く一本道が出現した。
チリが舞う黒い道はそこにいたゴブリンがことごとく倒れた事を示していて。
「かっこいいー! すごいぜ親父!」
「おいっ、それだけじゃねぇだろうな!? 上手くいったから良かっただけで、慣れない【器用さ】で暴発していても可笑しくなかったんだ!」
「使わないでくれます!? 俺マジに死ねるよ?」
「そこは成功したから。…………俺はお前のバフの危険性を知って欲しくてだなぁ!」
転ばぬ様に気を付けて走る親父に捕まっていると、次第に村連中の顔が見えてきた。
目線の先では、村をゴブリンから守っていた剣士達が驚愕の表情を浮かべている。
魔法使いに至っては目を見開き、大声で叫んでいた。
きっと父親を称える声だろう。
「こっわあああ!!」「死んだかと思った!!」
「ほとんど暴走だったでしょ今の!?」
あるいは「巻き込まれかけたんだけど」という切実な非難かもしれない。
いや、そんなわけないよね?
「うーん、次は威力調整が課題だな」
父親の顔には見たことない量の滝汗が流れていた。
「全員生きてるかー?」
「お陰様でな! 今のなんだよ!?」
「ハハハ!」
「ねえ親父、あの人達が生きてるのって奇跡だったりする?」
「ハハハハハ!」
「「はぁ…………」」
適当に笑って流す父親に、ため息をついて話を切る。
これ以上聞くの怖いし。
「あっ、ちょ!」
誤魔化すように走り出した父親にしがみついて、村の中心へと向かった。
そこに居るはずの村長に話を聞くために。
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