30話。3360字。sideザザ、合流、街を守る意思、ザマァーツー。
☆☆☆sideザザ☆☆☆
『直感』が────あと数分で上位魔族が街に侵入する、と最悪を告げたのが10分前。
即座にギルド長と緊急会議を開き、話をまとめた。
「クソがっ!」
目を覚ましていたゴルドとマチも参加を表明し、万全には程遠い体を引きずりつつ合流。
飛び出す様にギルドから駆けだしたのが2分前の事だ。
「人使いが荒すぎるっ…………!」
「病み上がりですが頑張りましょう、リーダー」
「下がり始めだわ、絶不調だろ!」
隣を走るゴルドとマチ。その顔色は悪い。
まだ魔力も回復しきっていない魔法使い、気合いで大楯をかつぐ盾職。
絶不調だ。
しかし、それでも出来る事はあると駆けだしたボケども。
前線に出ても足止めが精々、街を丸ごと更地にされる可能性が高いしさっさと逃げるのがベターだろう。
「上位魔族じゃ勝ち目がねぇだろうが、引っ込んでろ」
「男のツンデレに需要なんてないだろ、リーダー」
「鏡って知ってますか。バカですか、リーダー」
後ろにリーダー付ければ良いと思ってんのか?
そもそも俺は前線に出るつもりはない。
ギルド長と決めた目的地に向かいつつ、目標を『直感』も混ぜて探している。
「いいか、こうなったらダークエルフを差し出すしか道はねぇ」
「……作戦は?」
「ダークエルフを差し出した後、上位魔族は約束により街の住人に被害を出せなくなる。したら動きやすくなった俺たちでダークエルフを逃がす」
「逃がすのか。了解、ツンデレリーダー」
「作戦立案はギルド長だわ、ボケ」
少しは真面目に出来ねぇのかコイツ等、腹立つなぁ。
リクトのクソが影響している気がするのがより一層ムカつく。
後で毒でも飲ませよう。
「そろそろ────」
クソとダークエルフに合流出来るとギルド長が『予測』した場所。
人だかりを見つけ、そこに居ると確信した瞬間────轟音が響く。
「上位魔族の襲撃が始まったか、クソ。間に合うのかこれ」
「あ、リーダー! リクトとダークエルフちゃんが屋根に移りました!」
魔族から受け取る不吉な『直感』を分析していると、マチが告げた。
反射的に屋根を見ると大きく飛び跳ねて着地した姿が確認できる。
「…………はぁ!?」
ありえない。
一瞬で頭の中に乱立するあらゆる疑問に、『直感』が反応した。
あんな身体能力はアイツにはない。
なかった。
────! 『直感』が、あり得ない事を主張する。
アイツのなにかが変わったのか?
────! 『直感』が、俺の感情を否定する。
なら、何が出来る?
バカな魔族を倒したと聞いたが、偶然ではなかった?
────! 『直感』が、繰り返す。
繰り返す『直感』が外れた試しは俺の人生において存在しない。
頭の中で『直感』が繰り返される。
────リクトたちが上位魔族への唯一の勝ち筋。
あのクソを頼れってのか。
「俺はリクトへ走って合流する! マチは魔族の元へ行き交渉の成立を念押し! ゴルドは避難所!」
「がんばります」
「了解」
各々で道を分かれると、俺は屋根へ飛び移り既に離れつつあるリクトを追った。
しかし。
クソが、追いつけねぇ。
走る中で距離は開いていく。
このまま合流出来ない場合のリスクの数だけ罵倒が脳内に発生する。
声をかけようと息を吸うと、呼びかける直前でリクトが振り返って足を止めた。
直前で俺に気づいたらしい。
時間もないし、距離を縮めてとっとと話を進める事にした。
ムカつくし早く終わらせよう。
リクトのつま先を踏みつける。
「おい! それが例のダークエルフだな!?」
「譲渡後に戦闘希望!」
「うるさい死ね!」
上位魔族が受け渡しより先にダークエルフを見つけたら約束もご破算する。
この距離なら魔力探知に長けた存在であれば、ダークエルフにいつ気づいてもおかしくない。
「あの、リクト。この人からの殺意ゴブリンロード以上なんですけどなにしたんですか?」
「今度話すよ」
先行させたマチが上手くやったとして、街の住人は守れてもこのダークエルフは死ぬだろう。
「いいか、そいつ引き連れてこの街を出ていけ。魔人に顔見せた後で別の街に逃りゃいい」
「上位魔族を倒さないとじゃね?」
「言伝てを無視した行動は事情が変わったとも見れる。だがダークエルフの方が優先度は上だと予想している」
魔族が先にダークエルフを見つけ約束が成立しなくとも、ダークエルフがこの街を離れるなら魔族はそっちを追うはず。
リクトがダークエルフに【素早さ】バフをかけておぶられれば逃げ切る事は容易だろう。
「でも上位魔族を倒せば問題ないだろ?」
クソが喋る。
だから嫌いなんだよ、お前。
「そう言う所が嫌いなんだよ、お前!! 勝てねーんだよ!! あいつは強い! 仲間に一本角の魔族も居る!」
「その特徴ならこの間森で倒したけど」
「あぁ!?」
アレを、オマエが、倒したぁ?
俺ら三人で負けた相手をオマエが倒せるはずがないだろうが。
────!
『直感』する。
これは嘘じゃない。
一本角の魔族を倒す実力がコイツにはある。
つまり、俺たちより強いってか?
バカを言え、一朝一夕で強くなんて…………。
────!
事実だと『直感』する。
…………クソがよぉ。
だとしたら、なら、なんでその情報を伝えなかったこのボケ。
ギルド長の怠慢?
────!
『直感』する。
なるほどな?
コイツが倒した魔族の特徴は「バカな魔族」だと聞いたが、それが俺たちが戦った「一本角の魔族」か。
報連相しろよボケ。
ギルド長もちゃんと特徴くらい聞けよ凡ミスだろうが。
────!
コイツが殺した魔族なら大した事ないとでも思ったか?
人が死ぬわ、クソども。
加速した思考は考えがまとまると同時に焦点を現実へと戻した。
「ドラゴンは?」
「倒しました!」
「……一本角の魔族が付き従うほど強い奴がいたとして、倒すメドは?」
「いけるいける」
軽いんだよ。
「あ?」
ふと気づく。
なんでコイツ、こんな安い剣を下げている?
偶然か、能力に関係して壊れたか。いや、どちらにせよか。
この剣じゃ勝てる勝負も勝てねぇ。
────!
『直感』する。
ギルド長が俺をここに派遣した一番の理由はコレだな?
相変わらず性格が悪すぎる。
「はっ。まともな剣が無いならこの剣はくれてやる。その剣はよこせ」
「え、リクトの命より大事と言っていた剣だろ?」
「チリ以下と比べるな、格が下がる」
ただの家宝だ。
「…………そろそろだ」
「おっけ」
街の入り口付近から聞こえていた破壊音と悲鳴はいつの間にか聞こえない。
リクトの足を強く踏みにじって解放してやると、入り口付近の空に火の玉が小さく爆ぜる。
マチが「差し出す」と言い、上位魔族が反射的にだろうが何だろうが魔力探知を発動させてダークエルフを見つけたのだろう。
約束が成立した以上この街の住人は無事で済む。
これでダークエルフの顔見せは必要なくなった。
「それで、逃げないのか?」
「ああ」
「なら相討ちがベストだな。とっとと行け」
「セレーネ、行こう」
「はい!」
駆けだしたリクトとダークエルフ…………でなくセレーネの姿がどんどん遠くなる。
速い。セレーネとやらも速すぎる。
リクトのスキルを考ると妙だ。…………似たスキルを持っていたとか?
────!
へぇ、勝率は1割くらいか。まぁ切り札くらいあんだろうし、変動するが上等な数字だろう。
マチが戻ってこないのは上位魔族を引き留めてセレーネの逃走時間を稼ぐため。
戦うらしいし、時期にフリーになるマチは防衛に回れるだろう。
約束は抽象的だった。もし上位魔族の手下がまだいるなら他に手を回す必要がある。
住人が生きていても、街が壊れればこの街は終わってしまう。
だからと言って、アイツに託す事になるとか、きっと一生忘れない。
…………今日は眠れそうにないな。
「これが終わったら酒飲んで寝よう」
街を囲う城壁からなら街全体を見回せる、と屋根伝いに城壁めざして駆けだす。
不幸中の幸いか、月一で魔族と交戦したおかげで街の住人の避難は既に終わっていた。
ゴルドが避難所入り口に居るならまぁ、うん。
病み上がり未満の病みゴルドでもきっと大丈夫だろう。
仮にも俺のパーティーメンバーだしな。
仮にも。
リクトは追放したからノーカン。
「はぁ」
上位魔族が侵入した入り口付近をチラと見る。
あそこにリクトのクソがいるのだろう。
「……………………アイツ死なないかなぁ」
零れた本音に『直感』が反応した。
────!
長生きするっぽいんだよなぁアイツ。
「…………はぁ」
生きて帰ったら毒でも盛るか。




