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規格外の『4倍バフ』で美少女と無双する。~褐色エルフと追放ざまぁ~  作者: 麗麗(レイレイ)


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29話。side潔癖、前言撤回。sideリクト、噂話、街を出る決意、轟音。

☆☆☆side二本角の魔人☆☆☆


「ふー、ふーっ。大分、落ち着いてきました。冷静に考えるとしましょう」


ツリーハウス倒壊から深呼吸を丸一日。

日をまたぎ夕方になって、ようやく思考をまともに回せるようになった。


魔力を込めて、目を凝らす。当日の事を思い出す。


予測する、解析する、分析する。


「体を清めるのに5時間」


魔力からして部下が死んだのは私が着く1時間前。

相性の悪いs級と鉢合わせたのでしょうか?


「ダークエルフの未知なるスキル…………可能性としては薄い。とっくに攻勢に出ていないのが変です」


なら突発的に現れた、条件が整った?

相手は偶然通りかかった強者だった?


「いいえ、違う。あの時、遠出はしましたがドラゴンと拠点に住み着いてから数日が経っていた」


迷わせる魔法は得意で、最近までは上手くいっていた。

問題は配下がミスをしていた事。


ドラゴンが見られていた事。


「なら冒険者が派遣されるのは自然。…………一番近くの街から派遣されたと考えるのが、もっとも自然」


なら、あそこだ。

先日のs級パーティーが帰っていった方角には、たしか街があった。


そこに下手人がいる…………あ、失敗です。


「汚しやがって」


下手人を意識した途端、思考が怒りに飲み込まれていく。

感情の制御が利かなくなり、不利益が頭から抜け落ちていく。


「ゴミ掃除だ!! 殺す殺す殺す!!! いや落ち着こう、いや殺したい、殺すか殺そう。よし殺すぅ!」


前言撤回です。

ダークエルフなんて関係ない。

下手人が本当に居るかも関係ない。


もう、衝動が抑え切れないから。

街を襲うとしましょう。


☆☆☆sideリクト☆☆☆


薬草採取の帰り道では相互にバフをかけて走り、何度かセレーネが迷子になりって。

夕方、街についた。


薬草をギルドに届けるため歩くと、なんだかジロジロ見られている。

街の皆がざわざわと、セレーネを見てはひそひそ。


顔が良いと大変なのかな、と思ったが流石に変。

初めての事だ、なぜセレーネを見ているんだ?


周囲の声に耳を澄ませ、ぴたりと足が止まってしまう。

隣を歩くセレーネも立ち止まり、俯いたまま動かなくなった。


周りがざわめく。


「あ、あれが例のダークエルフか」

「差し出せば命は助かるって」

「巻き込みやがって、魔族が来たらこの街は…………」


…………なにが起きている?

口々に語る噂を読み解くと、どこかの馬鹿が『ダークエルフを差し出すなら命を助ける』と言ったらしい。


噂話なら、外部が関係していない場合の大半はギルド長が知っているはず。


追い出したくてギルド長が噂を流した?

流石にそんな事はしないはず。

精々あった火の粉を森林火災に変えるくらいだ。


「セレーネ、落ち着いて。ギルドに行って事態を把握しよう」


硬直したセレーネの冷たい手を取り、ギルドを目指そうとするが皆に囲まれて上手く動けない。


非常によろしくない。

セレーネには才能『魔力感知』がある。

きっと悪感情に囲まれるのは辛いはずだ。


「出ていけ!」


街の住人からしたら、魔族ってのは恐ろしい物だ。

上位魔族に襲われたら街の痕跡が残る方が稀なほど。


だからこれは、仕方のない反応だった。


セレーネの前に出て庇うと、人混みから一人出て来る。

女の子だった。


少し前まで行動を共にしていた女の子がそこに居た。


「スズさん? でも何で」

「村長が街への移住について下調べをしろと私を派遣したんです」


スズさんが並ぶようにセレーネの前へ立ち、眼前の大人たちを睨みつけ啖呵を切る。


「この人たちは私を守ってくれた! 凄い人なんだ! 悪いのは魔族でしょ、なんでそんな事も分からないの!?」


周りを説得しようと声を張るスズさんに街の住人は言う。


「いいかいお嬢ちゃん、騙されてはいけないよ。その男(・・・)が災いを呼び寄せているんだ」

「え?」


繰り返すが、街の住人からしたら魔族ってのは恐ろしい物だ。

だからこれは、仕方ない。


「いい加減に出ていけ! リクト!!」


そう、俺はアンチに大人気なのだ。


「どうせリクトが連れて来たんだろう! 魔族の手先め!」

「何回目よ! 魔族を何回倒してs級になったか言って見なさいよ!」

「疫病神が!」

「あぁ!? こっちも頑張ってるんです~! 今回の件も俺は無関係……いて、石を投げるな!」

「そうだぞ、女の子に当たったらどうするんだ!」


この反応もまぁ…………仕方ないのだ。

あと無関係は流石に嘘だ。


俺とザザたちのパーティーが二年でs級になった最大の要因は魔族討伐数だった。

本来はs級になってから1年で1体相手にするような存在。


A級になって以降そんな魔族と月一で遭遇して討伐する俺たち。

半年に一回、街中の魔族を『直感』で発見するザザ。


それ以外の厄介事は俺が持ち込んだ案件だった。

俺が頭の中で反論を練っていると、手をぐいと引っ張られる。


俺と入れ替わる様に前に出たセレーネが街人に向かって口を開いた。


「あの、直ぐに出ていきます! この街での楽しかった日々はわすれません!」

「出てかないでいいさ、リクトを追い出したいだけだし」

「ええっ!? あの、私はダークエルフで魔族に狙われたりするので…………!」

「まずはリクトの追放よ。月一で魔族呼び寄せてから言いなさいなお嬢さん」

「…………リ、リクトぉ」


街人の言い分に唖然としたまま、こっちを見て言葉を探すセレーネ。

誤解しないで欲しい、ファンもいるんだ。


それに、この人たちだって悪い人って訳じゃない。

月一で魔族を倒すうちにマッチポンプ疑惑が浮上して反転アンチになっただけで。


「セレーネ、君はどうしたい?」


噂が『ダークエルフを差し出せ』なら、元凶はセレーネを追う魔族の可能性が高い。

なら街人が「ダークエルフを差し出す」と言えば、誘い出して戦う選択も出来る。


噂を流す選択を魔族がとっている以上、まだセレーネの居場所を探ってる段階だろう。

なら逃げるのもアリだ。上手くすれば、ここを守る事にも繋げられる。


「戦うか、逃げるか」

「えっと、私は…………」


目を泳がせていたセレーネが俺の手をギュッと握り、決意の宿した目で顔を上げた。


「私は、誰かを守る人になりたい。だから…………戦います」


セレーネは街人にダークエルフを差し出させて、魔族の口約束を精霊さんの力で確定させる腹だろう。

「ダークエルフを差し出せば命は見逃す」そんな噂だったし。


どのみち口約束の内容しだいの作戦だが、ギルド長に聞けばどうせ知ってる。


「魔族の約束次第では逃げる事になると思うんだが、その時は一緒に行ってもいいか?」

「はい! お願いします!」


暖かく笑うセレーネと、俺が出ていく可能性にざわめく街人。

気まずそうな様子のスズさんに一声かけてからギルドに向かう事にした。


「ごめんスズさん、助かった」

「いえ、私は何も出来なかったですから」

「そんなことありません。とっても心強かったですから」


セレーネの言葉にスズさんが小さく微笑んだ。


「おーし、アンチども退きな~! 今からギルドに────」


街人の囲いを退かそうと声を上げると同時。

────轟音が響いた。


遠くから響く破壊音と悲鳴がハッキリと聞こえる。

反射的に魔力探知を行う。


少し距離があるな。

入り口付近、街の侵入したおぞましい魔力。


魔族だ。

…………でもなんで?

これじゃ噂の意味がない。


襲ってくるには早すぎる、事情が変わった?

セレーネの所在がバレた可能性が高いか?

…………今考える事じゃないな。


魔族の襲撃に気づいた街人の一人が叫ぶ。


「やっぱり魔人がきたじゃねーか!」

「黙って避難してくれない!?」


俺悪くないよ多分。


「リクト、バフを! 急ぎましょう!」


セレーネに頷いて手をほどく。


「せーっの」


ハイタッチ。

合わせて────『レート4倍みたいなバフで最強目指しちゃう的なスキル』


体を全能感が包むのを確認して、跳躍。

セレーネと共に一息に人垣を飛び越える。


「あれは俺達2人で倒す! お前ら……皆さんは避難を!!」


屋根の上をセレーネと二人。

遠目に見える崩れた城壁目掛けて駆け出した。



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