22話。2157字。魔族登場、九九っ…………80くらいだなおい、sideセレーネ。
5分置きの合流を繰り返し、森の奥まで入り込んだ。
【素早さ】【器用さ】が上がったおかげで思いのほか探索はスピーディーに進む。
「また人の痕跡があった。千切れた山菜から見てこの付近にスズさんがいるかも知れない」
千切れた山菜を見つけるのは5度目。かつて通った道なのかは分からない。
迷っているのかなんなのか、大きく感覚を開けうろちょろと特定の山菜を取っているらしい。
そして恐らくドラゴンが森にいるとまだ気付いていない。
「ここら辺はドラゴンの縄張りにまだなっていなさそうですね」
「ああ、いつ奥から出て来るか分からないし、引き続き警戒して探そう」
スズさんを見つければさっさと連れて逃げて、二人でドラゴン退治と行きたいものだ。
セレーネと別れて3分。
森の奥側。ツリーハウスを発見。
最近使った形跡があり、スズさんの居る可能性もあった。
しかし、おかしい。地面に妙な跡がある。
太い尻尾を引きずるような跡。
間違いなくドラゴンはここを中心に動いている。
そしてここには居ない。
マズイ。この付近に全てが集まっている。
散歩するドラゴン、危機感のない迷子のスズさん、ある方の迷子セレーネが同時に居る。
ツリーハウスはドラゴンが入れない以上、今回は無視でいいだろう。
これは異常事態だ、そう心で念じる。
────ドアノブが回った。
セレーネに事前に「異常がみつかれば合流」と命令されたゆえ、位置が分からずとも合流出来るはず…………。
────扉から現れたのは、捻じれた大きな一本角を持つ男。
「なに見てんだよ、てめぇ?」
「んで、なんで魔族がいるっ!?」
────ブブッ。と精霊さんは合流を却下する。
ああ、そりゃそうだ。
精霊さんは「対価を払い過ぎ」とジャッジしたんだ。
俺がセレーネに支払ったのは四年分の命令権だ。
「ぶっ殺すぜ、おめぇ」
合流の為に背を向けたら俺は殺される。
それは一生分の支払いと同義。
戦うしかない。
ドラゴン、スズさん、セレーネの行方は気になるが…………。
「考え事とか舐めてんのかよ、おい」
「まさかまさか! 腹痛でうっかり死んでくれないかなって!」
「体が弱すぎるな、人間」
そんな余裕はなさそうだ。
距離を一瞬で縮めた魔族の拳を剣で流す。
見ると何故か無傷のままの魔族の拳。
肉体強化系のスキルだといいが、素のステータスで他の能力値も同じくらい高いとしたら厄介だ。
しかし、この程度のスピードならスキルで固い可能性が高いかな?
ステータスの偏りは良くあるが、鎌でもかけてみるか。
拳を避け、なんとか横に逃げ距離を取りツリーハウス前に転がり出る。
開けた場所の方が戦いやすい。
「くくっ、軟弱が過ぎると笑えてくるな、頭に心、力まで弱い!」
「でも、殺し損ねたな?」
「死にたきゃ言えよ、やっぱり黙れ、黙殺だぜ」
この魔族、もしかして頭が弱いのか?
────ブブッ。
────ブブッ。
────ブブッ。
突然三度、精霊さんがジャッジを拒否した。
こんな取り決めはしていない。
「どーせ雑魚スキルだろぉ魔族君。降参したら見逃すかもよ?」
「切れたぜ、俺は。ブチンと切れた」
「やったぜー、怒らせて動きを単調にする作戦は成功かー」
けど、セレーネが「来て」と三度コールした事は分かる。
それは、緊急事態の発生に違いなかった。
「なに? いや、いや、言葉にしたのはどういう意図だ、おい」
「強化スキルなんだろ? 底が知れてる」
「いや、嫌な奴だな、そんでやっぱり、バカだ」
「なぜ…………そんなに自身があるんだ?」
「くくっ、俺のスキルは『頑強』!! 上位スキル。お前じゃ底を計れなかった、それだけだ」
…………コイツ良いスキル持ってるな。
短期決戦いけるか?
頭の中で手札を巡らせ、慎重に剣にバフをかけ正面に構える。
「スキル言っちゃうとか馬鹿じゃん」
「殺すぞ、黙殺だ!」
煽ってやると、魔族が単調な動きで襲い掛かって来た。
☆☆☆セレーネside☆☆☆
マズイ事になった。
リクトへの緊急呼び出しに手ごたえがない。
来れない事情があるとしたら…………。
遠くで爆発音がする。
きっと戦ってるんだ。
「お姉さん、私は良いから逃げて! …………腰が抜けちゃったの」
「いいえ、スズさんを守ります。そうありたいと、決めちゃいました」
背後にはスズさん。
眼前には────ドラゴン。
「グルゥゥ!」
マズイ。本当にマズイ事になった。
スズさんを抱えて逃げたら、『迷子』のせいでリクトと距離が出来かねません。
最悪の事態はバフの効果範囲から出てバフが切れてしまう事。
そしたら、リクトが死ぬ。
きっと私達も追いつかれてしまう。
足の震えは収まらない。
ドラゴンの殺意が、『感情』が見えてしまう。
いつも母親に守られていた。バッファーはそういう物だと逃げて来た。
でもリクトに守られた時、リクトは強い恐怖を感じていた。死すら覚悟していた。
助ける事に迷いがない人。
リクトが同じスキルと知った時、人生で一番驚いて、心の底から憧れた。
私も誰かを守ると決めた。
だから。
「ドラゴンの1匹がなんです。すーぐ倒しちゃいますよ」
「無茶ですよ…………!」
だから、私は笑ってここに立つ。
リクトが背を押してくれる気がする。
バフが全身を包み、全能感が私に満ちていた。
ん?
…………これってステータスのトレード?
あれ、つまりは結婚も同然なのでは?
「任せて下さいスズさん、負ける気がしません」
「…………っうん!」
☆☆☆




