20,5話。1638字。side魔族言伝、sideリクト、クエスト受注。
☆☆☆side魔族☆☆☆
冒険者の背を見送ると、隣から手下の一本角の魔族が話しかけて来る。
名前は憶えていない。そこまでの価値はない。
「良かったんですか、ほんと。命令一つで全員生かす、なんて」
「だからこそ良いんですよ、一つの命令に価値がでる」
s級と思われるパーティーと出会えたのは実に運が良かった。
わざわざゴブリンロードたちの魔力パスが切れたからと足を延ばした甲斐がある。
戦い、全員を生かし、言伝ての命令だけして放流する。
生け捕りは討伐より難しい。
そして危険な相手を約束もせずに逃がす意味はない。
「逆説、私にとってs級パーティーは雑魚だと人類陣営に伝える事が出来る」
私の強大さをまず人類に理解させる。
そうしたら、次。
たった一つの言伝。
それだけの命令に、人間は価値を見出さざる負えない。
「言伝は『ダークエルフを差し出せば見逃す』これでよっぽどのバカでなければ差し出すでしょう」
いちいち全部の街や国を襲うのはリスクもありますし、探すのも手間。
ならば人間に探させれば良い。
遠くない内に私はダークエルフの血を手に入れる事が出来る。
血を手にすれば、私はさらに強くなれる。
そうすれば、次。
汚い人類を滅ぼすのだ。
「準備は終わりました。次は拠点の魔物樹林に行きますかねぇ」
「ドラゴン、運びます」
「ああ、配下は先行っててください。少し土埃がついたので落として帰ります。あんまり目立つ遊びはしないように」
「人を殺すのは、あり?」
一本角の魔族が口を挟んでくる。
殺そうかな。
「…………まぁ良いでしょう。目立たない様に3人くらいをこっそりと、ですよ?」
拠点が汚れていたら殺そう。
☆☆☆sideリクト☆☆☆
金色ツチノコを追った晩。
宿のベットで寝ると、その日は夢を見た。
なにかいい夢だった気がするが、内容は起きると忘れていた。
「おはよう」
「おはようございます。なにかいい夢を見た気がします」
寝ぼけ目をこするセレーネが、ふわふわと笑う。
二人で一階への階段を降りながら今日の予定をぼんやりと話しだす。
「顔を洗ったあと、一緒に一階で食べないか?」
「賛成です。今日は何をしましょうね?」
「食べながら作戦会議をしよう、ああでもギルドに行ってからでも良いかもな」
「じゃあ、朝はゆっくりお喋りしながら食べましょう」
「よし、賛成だ」
☆☆☆
俺はパスタ。セレーネはパンを食べてから、ギルドへ向かった。
クエストの確認をしつつ、どのクエストが良いか話し合っていく。
薬草採取をしようと、決まりかけた時。
受付から声をかけられた。
どうも気絶した受付嬢はまだ現場復帰していない様子だ。
「パーティーランクの昇格についてご相談があります」
受付嬢の話はA級パーティーにならないか、と言う話だった。
何でも戦力を余らせる気はないとギルド長権限で書類をいくつかスキップしたらしい。
体裁上は畑仕事で最高評価をされたから昇格との事。
「セレーネはどうしたい? 俺は上げて損もしないと思うけど」
手順を踏んでランクを上げていくと最初にセレーネと決めたが、c級クエストでのパーティー試験運用に少し問題を感じていた。
「その、いつか一緒に薬草採取に行ってくれますか?」
「うん」
「じゃあA級パーティーになります!」
「よしゃ、では昇格の方針でお願いします」
すると、ギルドの扉が乱雑に開かれる。
音を立てて駆ける女性は隣の受付に一直線に向かった。
「依頼させて下さい! A級パーティー、場合によってはs級パーティーへの依頼です!」
酷く汗をかき、慌てた様子の彼女は叫ぶように告げる。
「ドラゴンが出ました! 迷い森にドラゴンが出たんです!」
「なっ!? 直ぐに冒険者を手配します! ですが今はs級の皆さまが出払っていて…………あ。ギルドでは今、準s級が一人」
迷い森、そう遠くない場所だったはず。
ドラゴンは個体差はあれどA級パーティー以上でなければ勝てない相手。
緊急性は相当に高い。
セレーネを見ると目がバチリと合う。
互いに考えは同じだと頷くと、隣の女性に声をかけた。
「「その依頼、受けます」」
☆☆☆




