20話。3338字。迷子と金ツチ、sideザザ、土ペロざまぁ。
ギルドから宿に戻り、剣バフの高速付与の練習を4時間。
────ふわり。
セレーネからの魔力パスを感じた。
精霊さんに抗う余地を多少感じるのは、自分の足で駆けまわって探す選択肢もあるという事だろうか。
心で拒絶を訴えて、精霊さんに肉体の操作権を明け渡してみる。
「体が…………勝手にうごくー」
いつも通りの慣れた動作で、二階の部屋から階段を降り一階へ。
女将に話しかけられて、慌てて操作権を奪い取り出かけると伝える。
また精霊さんに任せると体がどんどん進んでいく。
宿をでて大通りを20分、裏路地に入って5分。
そこでセレーネを発見した。合流と同時に肉体の操作権は戻って来る。
「本当に来てくれましたね!」
「ああ、精霊さんに任せたら一直線だ。しかし裏路地は危ないから、なるべく入っちゃ駄目だよ」
「つい、はしゃいでしまって。次は気をつけます」
ここまで来ると、彼女の迷子は才能だろう。
ステータスに記載されず、努力や特性などで身についたスキルじみた物。
祝福か呪いか。
セレーネが路地裏に入り込んだ原因は、単なる子供染みた好奇心でも無いのかもしれない。
「でも、黄金のツチノコが道案内してくれたんです」
あるいは単なるアホなのかもしれない。
「ツチノコは置いといて、宿に帰ろうぜ。必要なら次は二人で来よう、いくらか安全だろうし」
「リクト、横をそっと見て下さい」
裏路地の薄暗い汚れた壁に。
月明りに照らされて場違いなほど輝く黄金のツチノコが1匹いた。
「ていっ! あっ逃げました!」
「追いかけよう追いかけよう!」
すかさずセレーネは捕まえようとして失敗する。
金色ツチノコに道案内されたって話は単に追いかけて迷っただけらしい。
「凄い凄い凄い!」
「行きましょう、あっちです!」
金色ツチノコは本当にいたんだ!
俺も大概アホかもしれない。
でも異世界っぽいんだもの。
心躍っちゃうもの。
仕方ない仕方ない。
「金ツチどこ行った!? セレーネも居ない!?」
────ふわり。
頼んだ精霊さん! セレーネはあっちか!
俺たちは裏路地を駆け回り、お巡りさんに怒られ、頭を下げてから宿に戻った。
金色ツチノコは捕獲ならず。
☆☆☆sideザザ☆☆☆
S級クエストを三人で受けた帰り道。
俺への遠回しな嫌味じみた言葉が背後から聞こえる。
「流石にリクトなしでは時間がかかるね」
「人員補給もまだですからねー」
事実を列挙していたとして、腹が立つ。
怒りに任せ剣を振るった。
心地よい風が吹く岩場で、俺たちは想定外の戦闘を行っていた。
「うーん、リクトのクソが居ないと気持ちが良いぜ!」
俺が炎を纏わせてた剣を勢い良く振りかぶる。
ガキリ、と弾かれるのは想定内だ。
ドラゴンなんだから、炎への耐性くらいあるだろう。
本命は背後で魔法式を組み立てているマチの一撃だ。
「私はリクトが居なくなって寂しいです」
「ああ、俺なんかよりずっといい奴だった」
マチの言葉にその隣、盾を持って守護しているゴルドが同意する。
「このボケどもがっ! 想定外のドラゴンだぞ!? sランクの魔物を前になんだその態度は!!」
しょげるなボケども。
お前らも納得した追放だろうが、はしゃげ。
ああ、人員選びをトコトン間違えた。
リクトの代わりはちゃんと選ぼう。
前方のドラゴンが喉を僅かに揺らした。
「ブレスだ!」
俺が叫ぶと同時に駆けていたゴルドが盾を前に押し出す。
マチも合流して盾に身を隠す。
ゴウッ。
吹き荒れる炎が肌を焦がす。
たっぷり1秒をやり過ごすと、マチが呟いた。
「出来ました」
魔法完成の合図がでた。
組み立てた魔法は氷結魔法。
目線でゴルドに指示を出すと、目の前のドラゴンに突進する。
尻尾の一撃をしっかり受け止めると盾を下から滑り込ませ、体を跳ね上げた。
「今だ」
「招致ですっ」
空中に現れた氷塊がパキパキと音を立てて大きくなる。
回転する氷塊は一メートルを超し、射出。
「危ないっ」
ゴルドの盾を弾き飛ばしながら、氷塊はドラゴンの腹をぶち抜いた。
チリになるドラゴン。これで一安心と行けそうだ。
「おいマチ。危ないと言いながら打てば許される、とかないからな」
「さっせーん。反省してます。まーす」
「本当に?」
「益々反省してます。してます、ますます」
「なら良いけどよぉ」
はぁ。
マチとゴルドを連れて来たのはリクトだ。
あのクソは妙な物を引っ提げる才能があった。
そのくせ他人任せだ。能力しかりな。
同期で優秀なバッファーだからと組んでから、心の中でため息を吐かない日はなかった。
A級になっても組んでいたのは能力を鑑みての事。
しかしs級は格が違う。
アイツの能力値を試算して損切り範囲と気づいた日は眠れないほどに嬉しかった。
追放したんだ。今日からは真っ当に街を守っていこう。
破天荒は俺に似合わない。
安全、確実、安定した防衛。街の守護こそが俺の仕事。
しかしなぁ。
隣のボケどもを見て、はぁ、と心でため息を吐く。
「益々反省してますます益々反省してますます」
「毎回それ言ってるだろう。もう騙されないぞ」
「本当です」
「なに…………?」
「おいボケども、ドラゴンについて含めてギルド長にさっさと報告行くぞ。ゴルドはいい加減に疑え、マチは次殴る」
街に戻るため、言い合う二人に声をかけ歩き出す。
2人が追ってくるのを確認し────その時、ふと違和感を覚えた。
「マチ魔力探知をしろ」
「えーと、なんもないです」
「何かある、引き続き探れ。ゴルドはマチを守る陣形を取れ、辺りを探ってから帰還する。いいな」
「ザザの『直感』か、面倒だな」
俺のスキルは『煉獄剣』で剣に炎を纏わせる力だ。
『直感』はただの才能。
偶然当たる事が多いだけ、確率80%程度の不確定な物でしかない。
「確かに面倒ですね。リクトも居ませんし」
「ボケが! この街の面倒事は大抵アイツ由来だ、これ100回『直感』してるから確定な!」
80%が100回以上連続する確率を求めたらアイツの殺害許可下りないかな。
まぁ、この街では下りなかったんだけど。
国が違えばなぁ~。
5分ほど歩くと早速ゴルドから報告が上がる。
「ザザ、北西2000」
「…………マジかよ」
目線をむけた先には、ドラゴンがもう一匹いた。
…………どうなってんだ?
リクトを追放したというのに、厄介事が起きているらしい。
ドラゴンは単体で完成された存在で、縄張りを持つ魔物。
いきなり未観測のはぐれドラゴンが2匹、同じ場所に突然現れるのはおかしい。
もしも、もしもドラゴンが群れるとしたら、圧倒的な強者に屈服した場合のみ。
撤退だな。
「ゴルド、マチ、撤退する。今すぐギルド長に報告するぞ」
「ドラゴンもう一匹くらい…………」
「ちがう、俺たちじゃ手に負えない奴が近くにいるかも知れないから逃げるんだよ」
ゴルドにマチを背負うように指示して、踏み出す瞬間。
────パチパチパチパチ、と拍手の音がした。
逃げるのが遅かったか。
振り向くと魔族が……………………二人。
拍手をする二本角の魔族と、隣を歩く一本角の魔族。
3人のs級パーティーでは勝ち目のない明らかな格上が、二人。
マチが震え声で零した。
「マジですか、反則でしょう」
「安心してください。私は汚れるので戦闘には参加しません」
二本角が潔癖のような事を言うと一本角の魔族が前に出てきた。
「じゃあ、行くぜ。ぶっ殺しはしないけど、ボコだ」
その一言で戦闘が始まった。
あるいは言葉の意味としては蹂躙が近い、一方的な戦闘だった。
☆☆☆
どうなってんだよ、クソが。
ざらついた地面が頬を撫でる。
倒れたまま、起き上がる力は残されていなかった。
「よくやりましたね。誰も殺さずに倒す、見事です」
「ありがとうございます、精進」
どうやら二人には上下関係があり、一本角の魔族は二本角の潔癖魔族に従っている様子。
ありえねぇ。
魔族なんて個人主義の極みだろうに。
ドラゴンどころじゃない強さのコイツらが、それでも手を組むなら。
従うとしたら。
俺たちを倒す一本角の魔族が、圧倒的格上と認めているのが潔癖魔族って事じゃねーか。
見るにゴルドとマチは倒れたまま意識を取り戻さない。
冷えた地面が、土の味が、脳にこびりつく。
「剣士の君はまだ意識がありますね?」
今俺たちが殺されていない以上は利用価値を見出しているはず。
どう転ぶ?
もう俺たちは動けない。魔力だってない。
クソ、最悪だ。
なにを約束させたいんだ、この魔族は。
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