2話。1766字。ゴブリン倒して過去回想、とんちきスキル神殿へ。
月明りだけを頼りに道なき道を進む。
木々の間。
影にわずかな魔力を感じ、身を潜め剣に手をかける。
「てりゃ」
木陰のゴブリンに奇襲を仕掛け一刀。
断末魔はあげさせない。
「ゴブリンがいるなら森の浅瀬か」
しかし、どうしてこうなった?
「慣れた土地なのになぁ」
どうしてこうなった?
どうして?
「迷っちゃったなぁ」
暗いからかな。
「グギャ……? グギャギャ!?」
右手からやって来たゴブリンが俺を視認すると慌てた様子で剣を振りかぶる。
「よっと」
避けつつゴブリンの勢いを利用して腕を切り、返す刀で首を落とす。
倒れたゴブリンはチリとなって消えていく。
昔に比べて確実に強くなった実感はあるけど。
「でも、まだ足りない」
暗い森のなか、何処にいるか分からないゴブリンを警戒しつつ彷徨う。
B級雑魚のゴブリンでも、下がったステータスなら練習相手にはなるだろう。
「グギャ?」
見つけて切って。
「グギ?」
魔力を感知して切って。
「グ?」
曲がり角から堅パン加えて出てきたゴブリンを斬殺する。
「出直せゴブリン」
美少女と曲がり角でばったりじゃないんだよ。
……ゴブリンには碌な思い出がない。
異世界転生して16年。
こんなので前世を少し回想すんの癪だな、と思いつつ転生当初の事が頭をよぎった。
☆☆☆
日本では田舎の零細企業に勤めていた。
23の誕生日、コンビニの帰り道に階段でコケて気づけば赤子。
異世界転生と気づいたのは早かった。
「なんで一振りでリンゴの皮むきが終わるの? 理屈は??」
「お母さんが剣士だからよ、リクト」
頭がおかしいのかと思っていたが。
「ねぇ! ねぇお父さん、イノシシが空飛んでたんだけど!」
「でかしたぞリクト! 今夜はボタン鍋だ!」
親父が空を飛んでからは深く考えないようにした。
母は剣士、親父は魔法使い。
それが現実だった。
ファンタジーへの憧れもあり割と直ぐに受け入れ、剣や魔法も少しづつ教わっていた。
そんな風に過ごして、7才になったある日。
親父が珍しく出かけるから着いてこいと、俺の手を引いた。
「お父さん、どこ行くの?」
「今日は『すごいスキル授かれるかも神殿』にいくぞ」
「露骨に胡散臭くない? 嘘くさぁ」
「失礼な」
親父とはどこの世界でも下らない嘘をつくものらしい。
いつものやつだと呆れていると、歩いていく先に神殿が見えてきた。
美人なお姉さんが庭先の掃除をしている。
父親が声をかけると振り向き、ハキハキとした動きで一礼。
「どうも! 『すごいスキル授かれるかも神殿』に何か御用ですか?」
「マジだったの!?」
そして、チープにすぎる神殿名を語った。
恐る恐る父親に耳打ちする。
「前に言ってた、神官は怒ると目からビーム出すって……ホント?」
「嘘に決まってるだろ」
「はぁ!?!?」
なんだこのクソ親父!?
父親の足にローキックを入れていると、美人な神官はクスクス笑って父親と話を進めだす。
「7才くらいですよね。少し早いですが、もしかしてスキルを授かりに?」
「ええ、お願いできますか」
「もちろんです」
ローキックをハイキックに変えて太ももへのダメージ蓄積を狙う。
が、足首を捕まれると体が浮いた。
浮遊魔法だ。
ぷかぷか浮きながら腕を組む。
浮遊魔法はいつでも楽しいものです。
「ほら、コイツどこかずれてるんですよ。スキルを道標にすりゃ、ちったーマシになるかと思いましてね」
「力にはリスクも伴いますよ?」
「大丈夫です。コイツ自身、頭は悪くないし、妙な献身性まで持ってる。いざとなれば家内ともどもA級なので止められるでしょうから」
褒められると照れるね。
顔を熱くしていると神官のお姉さんが優しく俺の頭を撫でる。
「いい子ですね。きっと素敵なスキルを授かれますよ」
「スキルってなんですか?」
「…………お父様から聞いていませんか?」
聞くと神官のお姉さんの目が少し鋭くなり、親父がそっぽを向いた。
とりあえずローキックを打っておこう。
「いい? スキルと言うのは、神殿で授かり直ぐに使える強力な魔法の事よ」
なんでも、中には原理不明の強力なスキルもあるとか。
親父にため息を吐きながら、俺を撫でて説明してくれた。
しかし、まずいな。
神官のお姉さんの手のぬくもりに顔がより熱くなる。
このままだと、これが初恋になってしまう。
いや、考えてみれば困ることもないのでは、
「それでは『すごいスキル授かれるかも神殿』に向かいましょうか」
なんか冷めるなぁ、神殿名。




