1話。1219字。S級パーティー追放、強さを求めて。
「お前クビな!」
ザザはテーブルに袋を叩きつけて唾を飛ばす。
なにかの冗談だろうか。
テーブルの袋からは討伐の報酬金が顔を覗かしていた。
突然の話に頭が追い付かない。
「何でいきなり、冗談だろ?」
「なわけねーだろ。これは手切れ金だよ」
笑いながら袋を指さした。
他のパーティーメンバーも既に聞いていたのか何も言ってはくれなかった。
「お互い新人でc級だった時から今まで一緒にやって来たが、今更パーティーを変える訳は?」
「頭もカスか雑魚。俺たちは今やs級。バフばら撒くだけの雑魚は邪魔なんだよ」
これは冗談、そう本気で思えればいいのだが現実は甘くないらしい。
嫌味な言葉だが心当たりは確かにあった。
「そうそう、俺らにかけ続けてるバフもさっさと解除しとけよ。もうパーティーは抜けるんだからよ」
S級になってからはステータスが追い付かず戦闘についていけない事が数度。
「聞いてるか? ねぇおい」
行動パターンを読んで攻撃より先に回避しなきゃいけない場面も増えたし。
「お前らもなんか言ってやれよ! せーせーするってな!」
魔法使いのマチ、盾職のゴルド、剣士のザザ。
明るかったはずのメンバーはザザを除いて沈痛な面持ちをしていた。
「私はリクトの事、そんな嫌いじゃないです。ホントです。ただ……」
「すまんな。感情でリクトを排したい奴は一人だけだ。ただ……」
「「弱すぎるから」」
「えっ」
びっくりした。
こんなことでハモらないで欲しい。
「評価がひどすぎる」
「「そんなことない」」
「ハモらないでくれる、悲しくなるから」
多少の腹立ちはあれど、気の置けない仲間との会話はやはり楽しいと感じてしまう。
少し名残惜しい。
しかし、パーティーメンバー四人のうち三人が出てけと言うならもうどうしようもない事だ。
「わかった。パーティーを抜けるよ」
「最後までむかつくなぁ。てめーの意思じゃねぇ、俺が追放したんだよカス!」
ザザが俺に指をさして罵ると、マチとゴルドが割って入る。
「言い過ぎです、リーダー」
「そうだ。もうちょっと言葉を選べ」
怒ってくれてありがたいが、ここにこれ以上いても火種にしかならなそうだしさっさと出ていく事にした。
金貨の袋に一瞬目をやって、何も持たずに部屋を出る。
ギルドの作戦会議室を出て、ギルドの表へ。
月が出ていて夜風が気持ちいい。
「悔しいなぁ」
ザザには前から嫌われていた。
それでもパーティーを続けたのは俺の能力を買ってくれたからだ。
逆に言えば。
追放理由は俺が弱いから。シンプルゆえにどうしようもなかった。
さっきのパーティーメンバーの喧嘩も俺が強ければ起きなかったはずなのに。
「弱いなぁ」
地面を蹴って走り出す。
道を駆け抜けて、城壁の門をくぐる。
「強くなりたい、胸を張って生きれるように」
走って、走って、呼吸が荒くなって、それが悔しくて無理して足を回す。
夜道を蹴っていくと、だんだん森が見え始めた。
「強くなろう、全員守れるくらいに」
体を廻る熱を吐き出すように一呼吸。
俺は夜の森へと足を踏み入れた。




