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規格外の『4倍バフ』で美少女と無双する。~褐色エルフと追放ざまぁ~  作者: 麗麗(レイレイ)


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12話。4085字。セレーネ先生はデバッカー。剣バフ習得。


本来スキルの内容や操作テクニックは秘中の秘。

レアスキルならより一層。


それを人生5年で習えるなら安い安い!


「それではレッスン開始です!」


と言う訳でやってきました。近くの岩場です。

秘中の秘だから仕方ないね。

ギルド長の元に戻るのはいつになるやら分かりませんが、まぁ仕方ないね。


「生徒のリクト君には当時私が習得した時のシチュエーションを再現してもらおうと思います」


何処からか取り出したメガネを押し上げてセレーネ先生は語る。


「せんせー、この呼び方なんとかなりませんかー」

「なりません。先生の言うことは絶対でーす」


セレーネがどこまで自覚しているか知らないが、こういう簡単な命令に俺は逆らえなくなっていた。

これを4年か。


…………妙な事言われなきゃ大丈夫そうだな。


「じゃあまずは私に膝枕をして下さい」


妙な事言いやがってコイツ。


「どういうことだ?」

「当時を再現するのです。そういうものです」


────ふわり、と魔力が揺れる。


精霊さんのジャッジは「行うべき」だったらしい。


拒否する間もなく体が勝手に動きだし俺は正座の体制を取っていた。

口約束をした俺に拒否権などないのだ。


「で、では膝をお借りしますね…………」


この世界の口約束には具体的な拘束力が発生している。

契約魔法の類は野良の精霊さんが仲介しており、精霊さんの独自のジャッジで成立しているのだ。


レアスキルの情報と、5年命令権。2つを精霊さんが天秤に乗せ「このくらいの命令は聞くべき」「これは釣り合ってないでしょ」と判断する。


この時、自分の意思で動かない場合は肉体の操作権限が精霊さんに移り実行される。


はっきり言って激ヤバだが、想像以上だったかもしれない。


「ふふふ、妙な景色です」

「本当にな」


実質的に精霊さんがセレーネに膝枕をしている構図だ。

エルフの事がトコトン分からない。


ただ、剣へのバフの前に彼女は誰かに膝枕をする事があったらしい。

慕われていたのだろうか、あるいは恋人か。


「セレーネはエルフだったよな、見た目が若いけど実は結婚していて旦那さんとか居るのか?」


だったら申し訳ないなぁなんて思っていると、セレーネが勢いつけて起き上がった。


「いやえっとあの、ずっと居ませんし今もフリーです! 膝枕は嘘です!」

「難しいなぁ本当」


嘘ってなんだ。

…………いや、普通に結婚の話で怒ったのか。配慮が欠けていたな。


「すみませんでした」

「くっ、こちらのミスなので謝罪はいりません。ではバフをしましょう!」


元気よく拳を握って宣言した。

度々申し訳ないが、思い付きで話の腰を折る。


「その前に、スキルを教え合わないか? どうせパーティーも組むし」


お互いスキルがバフ系統なのは知っているが、具体的なことは知らない。

スキルの効能を知ることが剣バフ習得にも、きっと生きるはず。


「う。まぁ、そうですね。報酬貰ってますし、スキル名かぁ…………」


少し渋ってセレーネはスキル名を言った。


「笑わないで下さいよ? 私のスキル名は『レート4倍みたいなバフで最強目指しちゃう的なスキル』…………です」


少し考えて、思わず笑った。

手を叩いて笑った。

大爆笑とも言えた。


「…………アハハハハハッ!!」

「笑った! ヒドイですよ! 最低! 賠償に膝枕を求めます!」


エルフの文化は相変わらず分からないが、これを笑わずいられるかっての。

だって、俺と全く同じスキルだ。


ならば必然、俺にも剣バフが出来るって事だ。


「ごめんごめん、えっと」


説明しようとして、止める。

これからを考えたらこっちの方が良い。


「────ステータスオープン」

「えっ!?」


【ステータス 

名前 リクト


最大魔力量 2200

攻撃力 1300

防御力 1600

素早さ 1500

器用さ 2000


スキル名────『レート4倍みたいなバフで最強目指しちゃう的なスキル』



「こ、これって…………」


俺のスキル名についてセレーネも気づいたらしい。

声は少し震えていた。


「ステータスは家族か神官にしか普通見せない物で。それって、それってつまり、実質プロポーズじゃないですか!?」

「違うよ?」


今後セレーネにかけれるバフを明示しただけである。

仲間の能力については把握できるだけした方がいいと思っての事だ。


何かとステータス関連は秘匿されがちなので、セレーネに強制するつもりもない。


「俺が勝手に見てほしかっただけだから、セレーネは見せないでいいからな」

「ステータスオープン!!」

「聞いてよぉ」


【ステータス セレーネ


最大魔力量1400

攻撃力2100

防御力2000

素早さ1300

器用さ1100


スキル名────『レート4倍みたいなバフで最強目指しちゃう的なスキル』


なんかエルフのスペックイメージの真逆だな。

見る限るA級冒険者までは余裕でやっていけそうなステータスだ。


攻撃防御が高く、魔力素早さ器用さが伸びてない。


「セレーネってもしかして戦士?」

「えーと、何でもできるようにと教わっていますが、最近までは田舎の村でのんびりしていました」


エルフの長い年月なら暮らしの中でA級のステータスになっていても不思議じゃない、のか?

まぁ森では相当動けていたし、ステータスだけって事もないだろう。


しかし最近になって冒険者になったのか。


森で一人、マチョゴブロードに襲われていたり何かと深い事情がありそうだ。


「なんで冒険者になったかって、聞いても良い?」

「ええ、かまいません。1か月ほど前に、突然ゴブリンロードに襲われたんです」


この世界は結構過酷だ。

魔物や魔族、人間に敵対する者がいる。


「どうにか母親と別の街に逃げ出したんですが、それでも何故かゴブリンロードは私たちを追いかける様に現れたんです」


子供が拳銃より威力のある魔法を覚えることがままある。

酔っぱらった先輩曰く、冒険者は悲劇の観測者。


「そしてある日、母親と別れる事になりました」


冒険者ギルドの先輩にも、確かそんな過去があった。

ほとんどの冒険者には暗い過去がある。


セレーネの話を黙って聞く。


「空飛ぶイノシシってご存じですか?」

「えっ、地元でも偶に見たかな」

「凄く不思議で、追いかけていたんです。そしたら横にいた筈の母親の姿はもう、何処にもありませんでした」


可哀想なお母さんだ。


「お前それ、ただの迷子じゃねーか」


死に別れじゃないならまぁ良いか。


「お母さん探すの手伝おうか? 1か月前なら近くいるだろうし」

「いえ、船を何度か乗り換えたので難しいかと」


空飛ぶイノシシのどこにそんな魅力があったんだよ。


「今でも夢に見ます。あの日に見た空駆ける七色のイノシシは」


うん。そうだな、七色なら仕方ないね。

俺だって追いかけるもん。


…………これ全部嘘だったりしてくれないかな。

そういえばあの時の先輩酔ってたな。


「七色に光り輝くボタン鍋は忘れられません」


エルフもう分かんないな。


人間だって分からないのに。

長命種って皆こんなもんなの?


「あぁ、母親は元来旅好きですので、数十年以内にどこかで会えるんじゃないですかね」


このエルフが特殊な気はしているが。

エルフが分かんないのは変わらない。ただ、セレーネの事は一つ察した。


「なぁ。昨日同じ宿屋を、部屋を希望した理由って何?」

「恥ずかしながら迷子防止です」


その前に恥じ入る事があるだろ。

いや、それほどに方向感覚が狂っているのか?


「同部屋がベストだと分かっていただけましたか?」

「分からん分からん。もうエルフの事はサッパリだよ」


方向感覚か?

頭か?

悩ましい題だ。


「まぁまぁそんな事はさておいて! バフの修行に移りましょうかリクト君!」


☆☆☆


剣を持たせられ、セレーネの指示通りに体を動かしていく。

その指示は膝枕よりよっぽど奇妙だった。


「では秘儀だけパッパと教えますね」


剣にスキルで【魔力】バフを4かける。

反応はない。


剣にスキルで【素早さ】バフを12かける。

反応はない。


剣に回復魔法をかける。剣にスキルで【魔力】バフを82かける。

スキルで【防御】バフを9かける。反応はない。


「では次が最後です。好きなだけ剣に【魔力】バフをかけて下さい」


剣に【魔力】バフを100かける。

すると剣が白く輝きを放ちだした。

バフの成功を魔力の薄いつながりで理解させられる。


もう終わった。

これで剣バフ習得成功だと分かってしまう。


「やりましたね!」

「や、やったー」


やったけども、何その…………なに?

ゲームのRTAでしか見ないありえない手順で発動するバグ技?


こんなの、どうやって見つけたんだ。

製作者が黙ってれば誰も気づかないまま世界が終わるタイプの仕様じゃないか。


「お姉さんパワーです」


年の功か。

……ってのは冗談でぇ、長寿を利用したスキルに対するデバックかね。


きっとデバッカーみたいな事を現実でしたのだ。

これを偶然見つける生活とは、どれほど苦しく長い生活だったのか。


「先生、秘儀は誰にも言わないと誓うよ」

「あまり意味ないと思いますが、助かります! しかし、これで遠慮なく対価の命令権が使えますね。ふふふ」


セレーネの笑みに冷や汗が流れる。


これだけの事をして貰った以上、否はない。

これから4年間焼きそばパンを毎日買ってこいと言われれば喜んで買う。


仮に、そんな俺でも絶対に嫌な事なら精霊さんの事前ジャッジで止まるはず。


例えば、仮にだが、死ねと言われれば精霊さんのジャッジで止められ命令権は発動しない。


この焼きそばパンと死の中間。

想像のつかない角度で命令される気がしてならない。


何とか、一時的にで良い。

話を逸らす話題は…………。


あ。

ポケットから折りたたんだ紙とペンを取り出し、セレーネに渡す。


「そういえばパーティー登録の申請書、俺の分は書いといたよ。セレーネが書き方分からない所あったら教えられるから言ってね」

「……………………それって実質プロポーズですよね? 婚姻届でしっかりリテイクして下さい」


────ブブ、と小さく魔力が揺れた。


どうやら精霊さんのジャッジで「それはなし」と判断された様子だ。

俺には選択の自由があった。


相変わらずトンチキな、まだ見ぬエルフ文化。

きっと酔っ払いのオッサンと同じ対応で良いだろう。


「これ書き終わったらギルドに行って提出しようね」

「すみませんすみません、無視は勘弁して下さい!」

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