11話。1826字。パンを食う、未契約。
何事もなく街につき、門番と挨拶を交わす。
そのまま大通りを抜けると遠目にギルドが表れた。
パーティー追放から数時間。
新しい仲間とパーティー組むぜと、かつての仲間に言えるのだろうか?
気まずい。
うん、明日にしよう。
「セレーネ、少し疲れないか? いったん今日は宿にいって、明日ギルド前集合でどうだ?」
「そうですね、ご一緒します」
ごいっしょしますぅ?
「ギルド前にご一緒してくれるの?」
「宿にですよ、明日ちゃんと合流するためにです」
…………なるほど。
きっと俺がギルド前に現れない可能性を潰したいのだろう。
馴染みの安宿だが、セレーネも実力者だ。安全性は大丈夫。
ギルドから少し遠いが、どうせ部屋も余ってるだろうし。
「分かったよ、宿屋の紹介は任されよう。ついてきてくれ」
「ふふふ、同じ部屋でもいいですよ?」
「狂ってるの? それとも…………やっぱり狂ってるの?」
エルフの文化は分からん。
10分ほど歩くと宿屋につく。
受付で女将に確認すると、あっさり追加の部屋を取れた。
偶然か気遣いか、部屋は隣だった。
新しい部屋の鍵を受け取りセレーネに渡す。
部屋は二階だ。部屋に案内するため階段を上がっていく。
「203号室が君の部屋。俺は204号室ね」
「わざわざありがとうございます。こちら代金です」
「どーも。明日は一階に集合でいいか?」
宿屋の一階は食堂になっている。
朝食は良くここで食べるが中々美味しいのだ。
「はい、朝に会いましょう」
「ああ、せっかくだし飯でも奢るよ、情報交換もしたいし」
部屋前についたので話を切り上げる。
今日は色々あったし、お互いにさっさと寝た方が良いだろう。
「それじゃ、おやすみ」
「はい。おやすみなさい、リクト」
204号室へ入ると気が抜けたのかドッと疲れが押し寄せる。
ベットに身を任せ、泥のように眠った。
☆☆☆
「朝食がパンとは、この宿屋は分かっていますね」
情報交換の時間だ。
宿屋の一階。顔を突き合わせて朝飯を食べる。
「それじゃ、作戦会議を始めるぜ?」
セレーネはパンを両手に持ち香っていた。
本当にパンが好きらしい。
「先日のゴブリンロードの一件で、最後に放った一撃。あれって何か分かる?」
異常な高威力で森を切り開いた一撃。
どこに起因した力か。
再現性があるとすれば、間違いなくパーティーの切り札になる。
「そうですね。予測はありますが、私としても異常なバフの規模でした。後で調べましょう」
……………………あ。本当に予期せぬ威力だったのかアレ。
じゃなきゃ助け呼ぶ必要ないしな。
あれぇ? 俺たちなんで生きてるの。もしかしなくても偶然?
「クエストで少し遠出したら威力を抑えつつ実験かな」
また大規模な痕跡を残せば確実に俺たちはバレる。
森での件がバレただけでもギルド長にメチャクチャ怒られるだろうし、あれは一種の刑罰だ。
…………流石に刑務所には行かないだろうが、実験ではいくらか警戒するに越したことはないだろう。
「それから、もしよければ、なんだが。剣へのバフについて教えてもらえないか?」
言葉から僅かに緊張が漏れる。
剣へのバフが出来るようになれば劇的に強くなれる確信があった。
もしかしたら、s級にすら届きうる可能性だ。
しかし、スキルや技術は生命線。
中には家族にすら秘匿する一族もいるという話。
「うーん。私のレアスキルのコツを話す事になるので、応用が利きようないというか、参考になるとは思えませんけど…………」
「お互いバフのスキルなら参考になる部分もあるかもしれないと思ってさ」
頭の中で交渉材料を巡らせる。
そのうえで無理なら無理、潔く引き下がろう。
「無理にとは言わない。対価が必要な事なら、なんでも言ってくれ」
「全然全部喋りますよ!」
────マジで?
ありがたいが随分簡単に教えてくれるな。
応用の有無が話の肝か?
「今なんでもって言いました?」
「言った言った」
肝はこっちだったかぁ。
俺への命令権を渡したら何をさせられるんだろう。
奴隷としての小間使いとか長期間だったらまずいな。
流石にしないか。でも一応保険で言っておこう。
「俺の一生を使うような長期の願いは勘弁してもらえると」
「くっ!?」
「言う気だったのか……」
やっぱり先に契約内容を詰めてからにしよう。
思えば習得できるとも限らないし。
でも、出来る可能性に大きな価値があるんだよなぁ。
「剣へのバフは一旦保留で」
「そんな~」
後はそうだな。
当初の予定通り。
「食べ終わったらギルドでパーティー登録をしよう」
「はい……。あ、このパン美味しい」
スープも美味でした。




