10,5話。sideセレーネ、死語はエルフの宿命。
☆☆☆sideセレーネ☆☆☆
「セレーネってテレパシーで心読めたりする?」
「そんな訳ないじゃないですか」
スキルは一人一つ、そして私のスキルはバフですし。
理屈は別にある。
私は魔力を感じ取る能力が人より高いんです。
母親いわく『魔力感知』の才能があるとか。
感情が色で見える。
少しだけ心を読める事すらある。
でもそれだけです。
「魔力感知が人より数倍敏感なもので。でもぼんやり考えが分かる程度ですよ?」
「実質的な読心力じゃん」
リクトの思考が喋りながらブレたのを感知する。
最初に見えた感情は恐怖でも気持ち悪さでもなく、気遣いと優しさの色。
ずっとそう。出会った時からずっと優しい色だった。
「…………人より数倍敏感ねぇ」
呟きに合わせてリクトの断片的な思考を試しに読み取って見る。どうやら森での件を心配している様子だ。
すごい。この短期間で魔力感知の欠点に気づいたらしい。
思考の早いリクトみたいな人は良く読み取れないが、ゴブリンロードを前にして私が動けなかった理由は既に察している様子だった。
私は誰よりも人の感情を感じやすい。
そこから思考まで読み取れるほどに。
だからこそ、魔物の殺意をダイレクトに感じてしまう。
あの時。
ゴブリンロードに背後から襲われて、ありったけの殺意を全身に受けて腰が抜けてしまった。
死んだ、と思った。
でも、振り向いてゴブリンロードを視認した時そこには背を向けたリクトがいた。
善意を身に纏っている彼。
でも心の奥底では確かに死を恐れていた。
死ぬ恐怖を、知っている人だった。
恐れ知らずではなかったんだ。
腰の抜けた私の前に、死の恐怖を踏みつけて彼は立っている。そう理解して、気づけば反射的にありったけのバフをかけていた。
前に踏み出せた気がした。
「セレーネはバッファーだろ? 後衛なら今日みたいな事はまず起きないだろうけど…………」
「いいえ、剣を使います。なので前衛でお願いします!」
今まで見た誰よりも優しい色だった。狂気じみた底抜けの善意が私を照らした。
この人の近くに居たいと、そう思った。
それに放っておけば見えない所で死んでいそうですし。
「前衛は無理せず少しずつ、かな」
「確かに後衛でしたが、私はこれでも旅の途中でソロA 級冒険者になったんですよ?」
「普通に凄いな。俺は昔取ったソロcランクのままだった気がするわ」
「それに、これでも剣の修行は100年ほど続けているのでバッチグーです!」
────!!
今リクトが私の年齢について考えた気配がしました。
賞賛する気配です!
しかし直ぐに切り替わり…………これは、憐れみ?
「なぁセレーネ、人間の言葉を覚えたのっていつ?」
「最近ですよ? 40年くらい前です」
「そうか…………長命種の宿命か」
なにがでしょう?
リクトの優しさに憐憫が混じる。
「そうかぁ頑張って人間の言葉を覚えてくれたのに少ししたら死語なんてあんまりだなぁ」
「しご、って何です?」
「バッチグーなんて使ってる人間を見た事がないよ、俺は」
まさかもう古代語に分類されたんですか!?
勉強したのに、そんなぁ。
「意味は伝わるよ?」
リクト……………………その優しさはノーセンキューです。




