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らせんのきおく  作者: よへち
静編
61/205

第061話 『夢のアンチエイジング』



永遠トワ』はつくられた存在だ。


ならばつくればいい、私が。

誰かがつくったんだもの、私につくれないはずなどないわ。

静はそう豪語する。

そしてそれが叶わなければ、祐樹は生きて目を覚ます事はない。

出来る出来ないの話ではない、やるしかないのだ。

そのプランと流れを考える静。


と、何かが動く気配を感じ、静は寝台の方へ目を向ける。

そこには身動ぎをしそろそろ起きようかという結月の姿が。

そんな結月の眼を永遠トワが覗き込む。すると結月はまた脱力し、意識を失ったようだ。


「娘に何をっ!」


詰め寄る静。だが永遠トワは極めて冷静に


「暗示をかけました。先ほど貴女あなたにかけたものと同じものです。もうしばらくするとまた目を覚まします」


そう言われると静もたしか最初に目覚めた時、カタツムリの目のようなモノに覗き込まれ、意識を失った覚えがあった。

同じ様に起きかけていた結弦にも暗示をかける永遠トワ


永遠トワにかけさせた暗示は、『時間』と『重力』を常に太古地球標準と同等に感じるようにするものです」


説明するハルカ


「今、この地球上に生息する生物は、人を含めて皆この環境に合わせて生まれ、生きています。ですが貴女達は太古の地球の環境を身体が記憶しています。おそらく今の地球の環境には適応できないでしょう」


そのハルカの言葉に、静は過去に地球に起こったという出来事を思い出す。巨大な天体が衝突したのだ。


「質量の70%を消失でしょ?よくそれで惑星軌道から外れなかったものね。て事は引力も減少しているの?」


だが歩くのにも不自由なく、ぴょんぴょん跳ねても普通だった。


「これは暗示のおかげ?」


そして暗示はもう一つのあった。『時間』に関するものだ。

それの意味する事とは


ハルカ。今の地球の公転周期と自転周期ってどんなもの?」


「天体衝突以前、太古地球の換算で公転周期は3.017、自転周期は73時間07分です」


要するに1日が73時間だ。なのに1年はおよそ360日ある。


「え、ちょっと待って、じゃあ実質的には1年が26000時間以上もあるの?」


普通なら1年は約8760時間。26000時間は長いなんてモノじゃない。


「貴女方にとってはそうなります。ですが現在の地球に住む生物は1日を24時間と体感し、1年を約360日と理解します。ですので貴女方にも同じように感じるよう暗示をかけさせてもらいました。お好みでしたら暗示を解いて1日を73時間に戻しますが?」


それは自分達以外のモノがすべてスローになり、なおかつ一歩あるくと2mくらいは跳んでしまう世界だ。おそらく音もスロー再生の如く低音で会話なんて不可能だろう。


ハルカ、あなたA.I.よね?A.I.もそんな皮肉を言うものなの?」


「冗談ですよ。久々に『人間』と会話したもので楽しんでしまいました。それに所詮暗示は暗示です。貴女方が意識を集中すれば一時的に解けます」


まさかA.I.に冗談を言われるとは。

気を取り直し、静は意識を集中してみる。すると身体からフッと重みが抜ける感覚があった。試しに『ぴょん』と跳ぶと、部屋の天井へ一直線!


「あだっ!?」


頭を天井に打ちつけ、頭を押さえながら緩やかに落ちてきた。


「あいたたた…。でもなるほどね。いつもあんなのじゃあ生活なんてできないわね」


集中を解くと、身体に重みが戻ってきた。


「まあ暗示に関してはお礼を言わせてもらうわ。ありがとう、2人とも。とても助かるわ」


静はハルカ永遠トワに礼を言う。すると永遠トワ


「補足ですが、貴女方から発生する新たな個体に関しては、この環境より発生しますので暗示の必要はないかと思われます」


ん、発生する新たな個体?

…赤ちゃんの事か!


「な、いや、そんな私みたいなオバさんが…」


と、静は祐樹を見る。若い。もしや…


ハルカ、鏡ってどこかにある?」


ハルカ永遠トワは顔を見合わせ、


「これでいかがでしょうか?」


永遠トワはそう言うと、彼自身が1枚の大きな鏡に変化した。

その事にも非常に驚いた静だったが、さらに驚いたのは鏡に映った自分の姿だ。


「…え、なに、これ私?」


雑誌のダイエットサプリの広告のような呟きを発する静。

見た感じ、女子高生…には少し無理があるが、成人前くらいの姿だった。


「ありがたいんだけど…なんでこの年齢に設定したの?」


「結月様を基準とさせていただきました。祐樹様と静様は親だという情報でしたので歳を上に、結弦様は弟という情報でしたので歳を下に設定させていただきましたが」


鏡から人の姿に戻った永遠トワが説明する。

たしかに年齢の上下関係は正しいのだが…まあ10億年以上の単位で存在する彼らにしてみれば2年も20年も微細な誤差に過ぎないのかもしれない。


「そっか〜。これじゃあ親子ってよりも兄弟姉妹だなぁ」


と言う静だが、その顔は満更でもない様子だ。



「もうすぐ目を覚ますのよね、2人とも。ふふふっ。楽しみね」






静。見た目は18歳になりましたが、中身はやはり40歳前のおばさんなんです。しかも説教くさい。その辺は祐樹とよく似ています。似た者夫婦なんですね、真島家。

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