第062話 『母と娘と息子と』
「ん、あ〜…。良く寝た」
と起きた結月。静と遥を見て
「あれ?あんたたち誰よ?私の部屋で何…」
とそこまで言って異変に気付く。
反対側の寝台で起き始めた結弦とその傍にいた永遠を見て
「きゃっ!?あんた誰?男!?」
「…ん、あれ?何言ってんのヅキ姉。寝ぼけてんの?」
そこで一旦落ち着き、結弦をマジマジと見る結月。
「…あんた、結弦なの?なんでそんな大きくなっちゃって?」
「ヅキ姉こそえらく若返って。なんか変な薬でも飲んだ?」
その遣り取りを見て笑う静。
「ごめんごめん。あんた達には何も説明してなかったもんね。あはははは」
2人は同時に静を見て
「「か、母さん!?」」
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静は2人に遥と永遠を紹介し、今までの経緯を説明した。
「そっか〜…。私の中では昨日は成人式だったんだけどなぁ」
約19億年前の記憶に思いを巡らせる結月。
「僕もだよ。昨日が僕の成人式で、ヅキ姉は子供連れて実家に帰って来てたんだよ。でも起きたらヅキ姉そっくりな女の子がいるし、でもヅキ姉のトコはもっと小さな男の子だったよなぁって…」
「なにっ!?あたし結婚したの!?しかも男の子がいるって!?誰!?相手は一体誰なの!?」
結弦を食べてしまわんばかりに食い掛かる結月。
結弦は助けを求めんと静を見る。
「その話には私も興味なくはないわね。でもさしあたっては…」
と祐樹を見る静。
結月は祐樹の右手を取り、語りかける。
「父さん…なんだよね。若いね。けどこうやって見ると若い頃も案外普通の人だったんだね」
結弦は祐樹の左手を取り、語りかける。
「はじめまして、父さん…でも起こせないんだよね、せっかく会えたのに。母さん、どうにかなるの?」
娘と息子の不安な視線を一身に受け、静は自信満々にこう答えた。
「大丈夫よ!あんたたち。私に不可能なんてないわ。知ってるでしょ!」
と高らかに笑うのであった。
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「遥、このあたりってこの子たちが2人でウロウロして危険な所ってある?」
「街は治安も良く人々も安定しております。街から出なければ問題ないでしょう」
「じゃあ結弦、あなたちょっと街まで出てみんなの服とか買ってきてくれない?」
そういう3人の格好は白い作務衣のような服だ。
結弦はそれで外に出られても女性である静と結月は少し問題がありそうだ。
「母さん、でもお金が…」
そうだ。静は失念していた。お金だ。
「遥、お金ってどうなってるの?」
静がそう言うと遥は『しばらくお待ちください』と言い、一瞬停止したかと思うと
「これで大丈夫です。永遠」
「静様。それに結月様に結弦様。こちらをどうぞ」
と永遠に渡される1枚のカード。
それには名前や登録地、現在時刻、健康状態、そして所持金額が表示されている。
「こちらのカードにはあなた方の個体情報が表示されています。所持金額も違和感のない程度に加算しておきました」
遥のその言葉に引っ掛かりを感じた静。
「『個体情報』を表示なのよね?て事はこのカードに入金されているワケじゃないんだ。『私』という個人が持ってる金額が表示されているのよね?どういう理屈なのかしら」
「そちらのカードは『生体スキャナ』です。各個人の持つ情報はDNAに関連付けて登録をしております。商売される方にはリーダーライターを配布し、金銭データのやり取りを出来るようにして管理しております」
遥との会話でたびたび出てくる『管理』。それが静にはいちいち気にかかる。
「ねえ遥、管理って言うけど貴女どれくらいの範疇で把握してるの?」
遥の答えはおそるべきものだった。
「全てです。この地球に住む全ての有機生命体のDNAデータは全てこちらで管理しており、誰がどこで誰の元に生まれ、どこで死んだのか、人や獣、魚や虫に至るまで生体の個々は全てGPSで把握しております」
なんなんだそれは。
だが遥の本分は移民船のホストA.I.だ。何世代にも渡って船内で生活する宇宙移民を管理してきたのだ。それが『船』であるか『地球』であるかはあまり関係ないのかもしれない。
「そっか…もういいわ。わかった」
静は彼女と戦うことを諦めた。もはや彼女は『神』だ。もしくは創造主か。
どちらにせよ現時点では何よりも祐樹の事のほうが最優先だ。
だからと言って娘と息子を放置、というワケにもいかない。だから外出できる『服』も必要なのだ。
「じゃあ結弦、ちょっとお願いね」
結弦は静にそう言われ、永遠の案内で街へ下りて行った。
そこがワンダーランドとも知らずに。
この時点で結月は15歳、結弦は13歳です。
中身年齢は2人とも20歳、前の人生の成人式の日までの記憶を持っています。




