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らせんのきおく  作者: よへち
祐樹編
43/205

第043話 『同行3人』



「じゃあなユーキ。また街を通る時は絶対に寄ってくれよなっ!」


シドをはじめ宿の面々に見送られ、船は出航した。


たった1日の船旅だが、船旅というだけで祐樹は興奮していた。

高いマストが5本に大きな帆がたくさん、こんな巨大な木造船が風の力だけで動くなんて。しかもかなり速い!

大航海時代を彷彿とさせるその船は祐樹の心を鷲掴みにし、とりこにした。

デッキへ出たり客室をウロウロしたり、せわしなく落ち着きのない祐樹にマキが


「ユーキ、あんた船は初めてなの?子供じゃないんだからちょっとは落ち着きなさいよ」


一方、ルークとマールは仲良く青い顔をしている。


「俺…船ダメかも…」


「僕も…実は苦手なんです…」


どうやら二人とも船酔いのようだ。

そしてまだまだ船への興味が尽きない祐樹。


「帆船はな、男のロマンなんだよ」


「ロマンでも何でもいいから早く着いてくれよ…」


到着は翌朝予定。ルーク、御愁傷様。


---


「あ〜!やっぱ人は陸の上を歩くもんだぜ!」


到着し、上陸するや否や元気を取り戻すルーク。

だがまだルークの頭はユラユラと揺れている。

祐樹もなんだかまだ地面が揺れている感覚に陥る。


「私達はこれから『教会都市・イミグラ』へ向かいます。ユーキさん達はたしか『迷宮都市・カブール』へ向かうのですよね。方角は近いですが…」


「うむ、街道が違うの。ならばここでお別れじゃな」


そうなのだ。ナワから長らくスタン達と旅を続けてきたが、彼らとはここで別れる。ここからは3人だ。


「その猿ともお別れね。次に会う時にはゴリラくらいに進化しているかしら?」


「テメーこそメスゴリラからオスゴリラに進化してそうだな」


ルークとマキは、あいかわらずの毒の吐き合い。


「ユーキさん。貴方の望みが叶う事、祈ってます」


「ありがとう、マール」


スタン一家と護衛姉弟に別れを告げ、踵を返し歩き出す祐樹達。


「エイ、また案内頼んでもいい?」


「うむ、だが馬車はどうするのじゃ。借りるか?」


金には困っていない祐樹は借りていいとも考えた。だがその場合、返却しに来なければいけない。当然だ。

買ったら買ったでそれは大変だ。馬だし、生き物だ。


「ならば乗り合い馬車かの」


「あ!その手があったか」


早速、乗り合い馬車の状況を確認しに行く。


---


祐樹達の向かう方面へは午後に出発するものがあるようだ。

まだ時間があるので近くの商店で旅の備品を補充し、昼食を摂る。


「なあエイ。ここからカブールまでどんなもんだ?」


「うむ。乗り合い馬車を乗り継いでおよそ50日くらいあれば着くかの」


結構ある。が、祐樹が思っていたほどでもなかった。


「50日かぁ…その日数で俺は魔王の元へ辿り着けるくれぇ強くなれんのかなぁ」


ルークはやる気マンマンだが


「エイ。もしかして戦わなくちゃいけない所とかあるのか?」


「えっ?ユーキあんた魔王に会うのに戦わねぇつもりか?第一、番人に勝たなきゃ魔王には会えねぇだろ」


そうだ。ギム達強豪パーティを軽くあしらった番人が魔王を護っているのだ。


「いや、ルークにはすまぬが戦う必要はないぞ。部屋を護る番人もあの迷宮も、儂らには関係ない」


エイの言葉にあきらかに肩を落とすルーク。


「ルークよ。戦いたいと言うのじゃったら戦えるよう儂が頼んでやろう。じゃが先に言っておくが番人は儂と同等の強さじゃ。魔王様に至っては儂なんぞ手も足も出んぞ」


ルーク、器用に半笑いで青い顔に燃える瞳。

が、ちょっと気付く。


「『魔王様』?エイ先生って魔王の関係者なんですか?」


「儂はあのお方の側近じゃ」


そういえば祐樹もエイも、ルークにそんな話はしていなかった。


「じゃあ祐樹は?あんたもそうなのか?」


祐樹は全力で否定する。


「関係ないし興味もないし何でもない。ただ彼には聞きたい事があるだけだ。それだけだよ」


ともあれ準備は整った。エイに聞いたところ、こっちが『大陸』でカンドやナワがあったあちらが東の果ての『島』になるそうだ。

大陸の中央には教会都市イミグラがあり、目指すカブールはそのやや北に位置する。

案外近いのだ、中央教会と魔王居城。

まあ元々はご近所さんで、ケンカして相手が眠っている間に教会が『魔王』認定して討伐依頼なんて出したから『あのお方』が『魔王』と呼ばれるようになった、それが魔王誕生の経緯だ。


「さてそろそろ参ろうかの」


先はまだある。旅は始まったばかりだ。


「次の街は何が美味ぇんだろなぁ」


「…ルーク、グルメ旅気分なら置いてくぞ」


行楽気分のルークに祐樹は釘をさす。だが実は祐樹もそう思っていたのは内緒だ。


「冗談だよ、ユーキ。んじゃ行こうぜ」


祐樹達は馬車に乗り、次の街を目指す。

そうやって街から街へと流れて行き、目指すはカブールの地下迷宮の最奥、魔王の元だ。



だが、そんな素直に真っ直ぐ目的地へ向かえるほど現実は甘くはないようだった。






あ、ちなみにアフガニスタンの首都とは何の関係もありません。

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