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らせんのきおく  作者: よへち
祐樹編
41/205

第041話 『海人様の旦那』



宿の主人曰く


「ウチのせがれが凄いの獲ってきたんですよ。今夜の食事でお出ししますね。楽しみにしてて下さい」


今回の宿は海鮮料理宿だった。

インの街の魔獣肉料理店といい、スタンは何かしらグルメな店を知っている。

実は行商人でも公儀隠密でもなく、ただのグルメツアー愛好家なんじゃないのか?行商も隠密もそのついでなんじゃないのかと疑いたくなる。


街に出ていた皆が宿に戻ったので連れ立って宿の食堂へ行く。そこで祐樹は驚愕のモノを目にする。

そこにあったモノは、祐樹がこの世界で見ることはないだろうと思っていたモノだった。

それを見た祐樹が驚いて固まっていると


「ユーキは生の魚を食べたことありませんか?でしたら是非とも挑戦してみて下さい。この街か対岸のマイルでしか食べられない物です。初めてでしたら抵抗あるかもしれませんが美味しいですよ。私は何度もいただいてますが体調に異変をきたした事はありません」


とスタンがフォローしてくれたのだが、祐樹が固まっていたのは別にそれを食べるのを恐れた訳ではない。よく見知っている料理だったのだ。


なんと刺身の舟盛り!


と祐樹はすぐさま皿のまわりを探す。が、見つからない、醤油が。ワサビも。

替わりに小皿に盛られた塩がそこにあった。

まあそれは仕方ないし問題ないだろう。土佐高知の鰹のタタキだって塩で食べる所もあるのだ。


皆がテーブルにつき食事を始める。

祐樹も刺身に舌鼓を打つ。美味い!そして懐かしい。懐かしさに涙が出そうになる。


「はいよっ!追加の料理お待ち!」


とまた料理が運ばれて来る。

が、料理を持ってきた若者が祐樹を見て叫ぶ。


「あ〜!『海人様の旦那』さん!」


その言葉で祐樹は皆の視線を一斉に浴びる。


「あっ、シド!ってなんだよ『海人様の旦那さん』って?」


「あ、ごめん、ユーキだったよな。しかしあんた達だったのか、今夜の羽振りの良い客って」


いや、羽振り良くしていたつもりはなかったのだが 。

だがスタンの事だ、『金に糸目はつけないから美味いモノをお願いします』とか言ったのだろう。


「親父、この人だよ。俺が言ってた『海人様の旦那』さんって」


とユーキを宿の主人に紹介するシド。


「貴方が…ウチのせがれがお世話になりました。その上あんなものまでいただいて。ユーキさん、食事が終わりましたらお時間をいただいても宜しいですか?キチンとお礼をさせて下さい」


「う〜ん…わかりました。ではまた後ほど」


たぶん『いや、いいですよ』とか言っても『いやいやそれは』とかの応酬になりそうだったので、とりあえず受けておくことに。


「ユーキ。食事足りなかったいくらでも言ってくれ。何でも持って来るよ。ああちなみに次はさっきのアレだ。楽しみに待っててくれよな!」


そう言ってシドは厨房へ戻っていった。


視線をテーブルに戻す祐樹。すると何故かマキから突き刺さるような視線が飛んで来る。


「ユーキ…あんた『海人様』って知ってんの?」


怒気を孕んでいる訳ではないが、マキの有無を言わさぬ詰問のような問いかけ。


「海人様?そこの沖に浮かぶシードゥマじまに住んでるってヤツだろ?ってそれくらいしか知らないけどな」


その祐樹の言葉を聞いて、マキの視線はより一層険しさを増す。


「どうしてあんたが『海人様の旦那』なの?」


マキの視線は祐樹を貫かんばかりの鋭さだ。

どうしたのだ?海人様とやらに個人的に恨みでもあるのだろうか。


「いやちょっとまて!彼が、シドが勝手にそう言ってるだけだよ。俺は何も知らないし関係もない。何だよ、海人様に恨みでもあるのか?」


その意味のわからない状況に慌てて否定する祐樹だが、依然、マキの視線は鋭いままだ。


「マキ姉…たぶんだけどユーキさんは何も知らないよ」


マールの言葉でやっとマキは視線を緩めた。


「ふんっ!そのようね。ならいいわ、食事を続けましょ」


マキの視線から解放された祐樹はぐったり脱力する。そんな祐樹にルークが横から耳打ちする。


「なあユーキ。一体何やらかしたんだ?」


「知らないよ。俺がききたいよ」


コソコソ話す2人に


「そこっ、男2人!コソコソしない!せっかくの料理が台無しよ。冷めないうちにいただきましょう」


そう言うマキに、さっきまでの険しさはもう無かった。






実はマキもマールも『海人様』とは面識があります。

ではなぜ『海人様の旦那』という言葉に反応したかというのは、かなり後の方で書く予定にしています。

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