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らせんのきおく  作者: よへち
祐樹編
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第040話 『港街の風景』



「はぁ〜…生きた心地しなかったぜ…。ユーキ、あんた本当に人なんだよな?」


港へ戻った祐樹達。


「くどいよシド。ほら触ってみろよ、どこをどうとっても普通の人だよ」


祐樹はバンザイをして普通をアピールする。


「いや、すまない。わかった、大丈夫だ」


と言うとシドは例の釣り具に目を落とす。


「しかしすごいなコレは!よかったらこの理屈を教えてもらえないか?」


祐樹はシドに擬似餌の理屈を懇切丁寧に教えた。

さすが漁師だけのことはあるシド、魚の生態にも詳しい。祐樹の説明したことを違わず理解していく。


「そんな訳でシド、これあげるよ」


祐樹は擬似餌[スプーン]をシドに手渡す。


「んなっ!?正気かユーキ?ホントにいいのか?」


まあぶっちゃけてしまえばエイに頼めば一瞬で作ってもらえる。祐樹にしてみればどちらかと言うと糸のほうが入手困難なのだ。


「もちろんコレをそのまま使ってもらって構わないよ。でもシド、君にはコレを参考にして君自身の擬似餌を作ってみてもらいたいんだ」


そう言うと祐樹は海を眺める。


「もっと重たいモノを作れば潮の早い所でも使えるだろうし、小さいモノを作ればそこの桟橋で小魚を獲る事もできるだろ?」


じっと擬似餌を見つめるシド。さっきの祐樹の説明を理解した彼の事だ、頭の中には新たなイメージもあるのだろう。


「わかった。ユーキ。ありがとう。あんたとの出会いに感謝するよ」


シドが手を出してきたので祐樹はそれを握り、握手する。


「ユーキ、あんたは海人様じゃないって自分で言ってたけどな、俺たち漁師からすりゃあ新しい海の知識を授けてくれる者は海人様かその御心の使いみたいなものなんだよ。だから名を、名前を教えてもらってもいいか?」


ん?どういう事だろうか。


真島マジマ、ユーキ・マジマだよ」


「ユーキィマ島!?そんな名前で自分は海人様の使いじゃないって言うのか!?」


後ずさるシドに祐樹は慌てて訂正する。


「違う違う、ユーキが個人名でマジマは家族名だ。ユーキ・マジマだよ」


まあ日本人的に正しくは真島祐樹なのだが。


「そ、そうか。ならユーキ、何か礼をしたいんだけど何かできる事ないか?」


と言われても、祐樹には特に何もなかった。


「礼というなら沖まで舟で連れてってくれた礼がそれだよ。ありがとう、楽しかったよ。連れが来てるからそろそろ行くよ」


そう言うと祐樹は踵を返し、エイの元へ去って行った。


「ユーキ…きっとあんたは海人様の旦那なんだろな。あんたの事は一生忘れないぜ」


祐樹の背を見送ったシドは漁港で独り呟いた。

案外すぐ再会する事になるのだが。


---


「どうじゃった、沖は?」


「うん、面白かったよ。なんか釣れたし」


エイと遅めの昼食をとる祐樹。


「あ、ごめん。例の擬似餌、彼にあげちゃったんだ。また作ってもらってもいいかな?」


「造作もないが…あげてしもうて良かったのか?」


どうやらエイは、インの街ではウィル達にあげなかった擬似餌を、ここであっさりと通りすがりの漁師にあげてしまった事を疑問に思っているようだった。


「あげる意味合いが全然違うよ。それにさっきの漁師、シードゥっていう人なんだけど、彼は頭も柔らかいし理解力もある、きっとあの擬似餌を工夫して発展させてくれるよ」


漁師が生活の糧を得る為の手段の一つとして発展すればとシドに教えた『釣り』だったのだが、いつかレジャーとして皆が楽しめるようになったらいいのにな。という期待も祐樹にはあった。


「そうか。ま、ユーキが良いと言うのなら儂は良い。あんなモノなら作るのも造作もない、後で宿にて幾つか作っておこう」


---


祐樹は港街が好きだった。

独特の潮の香りもさることながら、物流の拠点として人も物も行来が盛んで活気に満ちている。

そこで働く力自慢の男達も、粗にして野だが卑にあらず、好感が持てた。こちらまで元気になる。


「よう、ユーキ」


祐樹がエイと街を散策していると、ルーク達に会った。

ルークとマール、そしてマキとニースの4人組。不思議な組み合わせだ。


「スタンさんは奥様とお茶を飲みに行かれました」


マールは中々にオシャレな格好をしている。

が、よく見ると見たことある黒い服に新しい服を差し色にして組み合わせてアレンジしているようだ。


「こいつらも旅の途中だろ?服なんて増えても仕方ねぇだろ」


どうやらルークのアイデアらしい。


「さすがは田舎町の不良よね。無駄に服のセンスがあるなんて」


お約束の睨み合いをするマキとルーク。


「ははは…。ところでユーキさん。僕たち今からこの街で評判の甘味処へ行くんですが、ご一緒しませんか?」


と、せっかくのマールのお誘いだが、祐樹はついさっき昼食を摂ったばかりだ。

それにいくら若い肉体になったとはいえ、彼らの若さは祐樹には眩しく、とても一緒に歩けそうにない。やはりエイの横が落ち着く。


「ごめん。折角のお誘いだけど今さっき飲食店から出たところなんだ。ちょっと腹ごなしにエイと街を散歩してくるよ」


そう言ってマールの誘いを断り、祐樹はエイとまた街を歩き出した。


しかし甘味処とはまた古風な…と笑いながら。






なんか漁港っていいですよね。護岸のヘリを覗き込むと牡蠣殻の周りに色んな生き物がいて、なんだかワクワクしてしまいます。

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