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らせんのきおく  作者: よへち
祐樹編
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第021話 『猫耳メイドなメガネっ娘』



「やあユーキにエイ、だったな。もう街を出るのか」


守衛の騎士に声を掛けられる祐樹達。

街に入る時に一度見ただけで2人の事を覚えているようだった。


「覚えているのか?俺達の事」


「当たり前だろ。それが俺の仕事だ」


「そりゃそうか、失礼した。今日はちょっと街道沿いの川まで行くだけだ、日没までには戻るつもりだよ」


「心配するな、ユーキ達の事はもう覚えた。日没後でも街に入れるぜ」


「ありがとう。じゃあちょっと行ってくるよ」


徒歩で10分ほどの所で街道は橋で川を跨いでいた。

祐樹達はその辺りで川辺へ降りる。

川は数十mほど下流で滝となり、その先には徒歩では行けそうにない。

ので、少し上流に向かう。

途中で祐樹は良さげな竹を切り、3mほどの延べ竿に仕立てた。

竿より少し短い長さで糸を切って竿先に結び、反対の先に釣り針を結ぶ。簡単だがこれで完成だ。


と、祐樹がおもむろに川の石をひっくり返す。すると石の裏には何かの幼虫のような川虫が。

彼には確信があった。森を歩いている時に虫の声も聞こえていた。なら川虫もいるのではないか、と。

ビンゴだ。これを針につけてエサにする。


「なんじゃ、そんなもんで魚を捕えられるのか?」


「さぁどうだろ?」


川は結構流れの激しい細い川だが、随所に淀んだところもある。祐樹はそこへ糸を垂らす…


と、いきなり竿が引き込まれるアタリが!


クッと竿を上げると、20cmくらいの川魚が釣れた。


「よっしゃ!」


思わずガッツポーズ。


「おお、見事じゃの!これが『釣り』か」


「だな。こんなにうまく行くとは思ってなかったけどさ」


また石をひっくり返して虫を捕まえて、針に付けて糸を垂らすと、即、釣れる。俗に言う『入れ食い』というヤツだ。

祐樹はそんな事を10回ほど繰り返し、釣れた魚は10匹。

かずらつるをエラに通しておいておく。

もう1匹くらいでとりあえず街へ戻ろうと糸を垂らす祐樹。

今度は小さめな魚が食いついた。が、祐樹はまだ上げない。


「なんじゃユーキ。上げぬのか?」


「まあ見てなって」


しばらく川の中を泳ぎ回る小魚。

すると突然、竿が一気にしなる!


「きたっ!」


祐樹は一気に竿を上げる。だが


ブチッ


音を立てて糸は切れてしまった。

一瞬姿を見せた魚影は大きかった。50cmくらいはあったろうか。


「どうしたのじゃ今のは?」


「釣れた小魚をそのままエサにしたのさ」


「なんと!そんな事も出来るのか!?」


いわゆる『のませ』と言うものだ。糸が耐えられなかったようだが。

しかし祐樹はこの事で何かアイデアが浮かんだようだ。

楽しそうにほくそ笑みながら祐樹は街へ戻った。


---


「おや、美味しそうな川魚じゃない。どうしたのさ。ユーキが獲ったのかい?」


祐樹は釣った川魚をエイダの店に持ち込んだ。


「そこの街道沿いの川で獲ったんだ。けどこれ食べれる魚なのか?」


なにせ見知らぬ世界、フグやカワハギの一種のような毒魚が川にいないとは限らないのだ。

こういうのは食料品店の店主であるエイダに聞くのが間違いないだろう。


「ええ、美味しい魚だよ。この街じゃよく出回ってる魚さ。しかしまた綺麗な身だね。で、これ、どうすんだい。ウチで買い取ろうか?」


そこで祐樹は考える。今夜またガイルの店で行商人のスタンと会う予定だ。その時にいただくのもアリだな、と。


「そうかい。じゃああたしもまたお邪魔しようかしら。どうせギムも来るんでしょ?」


なんだかんだと仲のいい2人だ。

祐樹も思う。エイの言葉ではないがさっさと結婚してしまえばいいのに。


「じゃあこれガイルにお願いしに行ってくるよ」


2人は店を後にした。


---


「いらっしゃいませ〜」


昼下がりという事もあり店内は閑散としている。

若い女性従業員に出迎えられた。昨夜、給仕してくれた娘だ。

耳と目は完全に猫で、獣人の血が濃く出ている女の子だった。

そんな子がメガネに給仕服姿というのもあり、若干如何わしい店に感じなくもない。


「ガイルいない?」


「あっ、彼は今、仕入れに出てます〜。何か御用でしょうか?」


祐樹は彼女に今夜の予定を告げ、魚を預けた。


「ではお待ちしております〜」


語尾が変に伸びる変わった娘だった。

そんな彼女をエイは複雑な表情で見る。

昨夜、祐樹は酔い潰れていたのでエイダの言葉を知らないのだ。

知っていれば祐樹も複雑な表情で見ていたかもしれない。


ガイルを。


---


「エイ。無機物を操作できるって言ってたよな。例えばそのスプーンを糸みたいに細く伸ばせる?」


宿に戻ってきた祐樹達。


「こうかの?」


と言って部屋に置いてあったスプーンを手に取ると一度水玉に変え、細い糸状の金属を床に垂らしていく。

だが、手にとってみると針金のようにクセが付き、元に戻らない。


「もっと細く出来る?」


「儂が思うにユーキはさっき魚を獲った道具の糸のようなモノを所望しておるようじゃが、たぶん細くしても同じじゃぞ」


「そうなのか…」


考え込む祐樹。

現状、今ある糸で釣れる魚で食料的には事足るので、強い糸は不要と言えば不要だ。

だが祐樹も男ということなのか、大きい魚がいればそれを釣りたくなってしまったのだ。

それに、祐樹が思いついた次のアイデアには強くしなやかな糸が不可欠だった。


そして彼は閃いた。


「エイ、さっきのみたいな金属の糸、また作ってもらっていい?」


「あれで良いのか?ならば造作もない」


と、またスルスルと糸を垂らすエイ。

幾許かの金属糸を手にした祐樹、同じく手にしているタコ糸と見比べて何やら頷いている。


「それでどうするんじゃ?」


「編むのさ、三つ編みで」


弾力が足りないなら弾力のあるものと一緒に編めばいい、そうする事で少しは弾力を持つだろうという祐樹の考えだ。


「ユーキよ、それはいいんじゃがそろそろ日が沈む。ガイルの店へ行かなくても良いのか?」


祐樹は窓の外を見て驚く。もう夕方だった。考え事をして気付いてなかった。部屋もランプを灯さなければ暗くて困るところまで陽が落ちている。


「時間経つの早いな」


祐樹はそう呟くと作業を中断し、ガイルの店へ向かった。




ガイルはドワーフなんですが、ドワーフの女性は皆、少女の様な外観をしています。

だからと言ってガイルの彼女がメイド服を着た猫耳少女でも許されるという訳でもなく、やはり大の大人が少女と交際するというのは、エイの表情から察する通り問題がある様です。


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