↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/8

ダンジョン配信者と遭遇

第3未登録ダンジョンの最深部。

ボスを秒速でハッキング処理し、素材の魔石を回収していた俺の背後から、突如として甲高い少女の声とドローンの駆動音が響いてきた。


「――皆様、お待たせしました! 本日は中級の難所、第3ダンジョンにソロで潜入中の『葵(アオイ)』がお送りしております!」


振り返ると、ピンク色の派手な戦闘スーツに身を包んだ美少女が、浮遊式の配信ドローンを引き連れて通路から飛び出してきた。

登録者数五十万人を誇る超人気ダンジョン配信者・白銀(しろがね) 葵(あおい)だ。


「あっ、リスナーの皆さん、見てください! ボスエリアの前に、見たこともない数のモンスターの死体が……えっ、しかも全部、外傷が一切ありません!?」


葵の配信ドローンのカメラが、俺が片付けたラグドール・ウルフやゴーレムの死体を次々と捉えていく。

チャット欄が「え、誰これ?」「死因なに?」「チート?」と一瞬で埋まっていくのが、耳を澄まさなくても容易に想像できた。


「ちょっ、あなた誰ですか!? ここは未登録の危険エリアですよ! 一般のFランクハンターが来ちゃいけない場所です!」


葵は慌てた様子で俺に駆け寄り、カメラから俺の顔を隠そうと腕を広げた。

彼女なりの優しさのつもりなのだろう。Fランクの装備(ただの安物作業着)を着た俺が、うっかり高難度エリアに迷い込んで死にかけている一般人に見えたらしい。


「あ、いや……その、ゴミ拾いというか、掃除の延長で……」


「言い訳してる場合じゃないです! すぐ後ろから中位ボスの『アームド・アント』が来てるんですからね!」


ガシャガシャガシャッ!!


葵の言葉に合わせるように、通路の曲がり角から全身を鋼鉄の外殻で固めた二足歩行の巨大蟻型モンスター――中位ボス『アームド・アント』が姿を現した。

通常のCランクパーティーが総がかりで挑む強敵だ。


「きゃっ! 来ました! 葵の得意魔法、『フレイム・バースト』で行きます!」


葵は華麗なステップで距離を取り、両手を掲げて高火力の炎魔法を練り上げようとする。

だが、相手の硬質な装甲を破るには、詠唱とタメに最低でも三秒はかかる。その間に蟻の巨大な鎌が葵を捉えようと振り下ろされた。


(遅い……このまじゃ直撃する)


「危ない!」


俺は咄嗟に葵の前に飛び出し、右手をアームド・アントに向けて突き出した。


バチッ。


Plaintext

[Signal_Interception: Armed_Ant]

Target: Internal_Hydraulic_Motor & Optical_Sensor

Command: Reverse_Rotation & Visual_Blindness

「『静電気(パルス)』一丁あがり」


ピキィン――!


アームド・アントの複眼センサーに微弱なノイズを送り込んで視覚をブラックアウトさせ、同時に体内の駆動モーターの電気信号を逆回転(リバース)させる。


ゴキッ! ドシャッ!


突進してきたアームド・アントは勢い余って自分の足をもつれさせ、床に盛大に顔面から激突。そのまま自滅するように完全に沈黙した。


「え……?」


魔法を撃つ準備をしたまま固まる葵。

そして、彼女の背後で回る配信ドローンは、俺が「指先をパチッと鳴らした瞬間、最強のボスが勝手に転んで気絶した」という奇妙すぎる光景を、日本中の視聴者に向けて生配信で完全に捉えていたのだ。


(あ……これ、やばい映り方したんじゃ……)


冷や汗を流す俺の眼前で、配信の同時接続者数が爆発的に跳ね上がっていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。